odolがまた新たな始まりを告げるーー世武裕子ゲストに招いた自主企画『O/g-7』を見て

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2018年08月15日 18:02  リアルサウンド

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 odolが自主企画『O/g』の東京公演『odol LIVE 2018 “O/g-7”』を、8月3日に表参道 WALL&WALLで開催した。6月には宮城、愛知、福岡、大阪の4公演が行われていたが、東京での開催は今回が初。7月29日には結成間もない2014年の“ROOKIE A GO-GO”以来となるフジロック出演も果たし、3日目の“RED MARQUEE”でトップバッターを堂々務め上げたが、この日はそんな一連の流れの集大成でありつつ、また新たな始まりを告げる一夜になったとも言える。


(関連:odol ミゾベ&森山が語る、“美学とらしさ”「ポップスを一人ひとりのものとして捉えている」


 打ち込みを駆使したエキセントリックなダンストラックから、凛とした歌声を聴かせる弾き語りまで、ふり幅は大きくも、確かに一本筋の通った音楽への向き合い方がodolとの好相性を感じさせたゲストの世武裕子のライブに続いて、odolのメンバー6人がステージに登場。前方下手から、森山公稀(Pf/Syn)、ミゾベリョウ(Vo/Gt)、井上拓哉(Gt)、後方下手から、Shaikh Sofian(Ba)、早川知輝(Gt)、垣守翔真(Dr)がそれぞれの位置に着くと、アンビエントな音を奏で、そのまま「夜を抜ければ」へ。かつてはラストの定番だったこの曲で始まるというのが、夜から朝を迎えた今のodolのモードを示していると言える。


 そんな彼らの現在地を示す一曲が、「夜を抜ければ」からシームレスに繋がって始まった「大人になって」。5月に配信で発表されたこの曲は、バンド全体で一定のリズムを刻みながら、それぞれのフレーズが細かく変化していくというミニマルなアンサンブルの曲で、バンドのインテリジェンスを感じさせる一曲でもある。そして、さらなる明確な新境地を示したのが、7月に発表された最新曲「four eyes」。ダンスミュージックのエッセンスを持ち込んだこの曲では、井上がシンセを演奏。スネアのロールとともに、ミゾベが〈僕は普通じゃない/今も信じていたい/僕は普通じゃない/まだ信じていたい〉と何度も繰り返し、ロングブレイクを迎える中盤は間違いなくこの日最初のハイライトだった。


 odolというバンドはこれまで作品を発表するごとに変化を繰り返し、たとえば、くるりやRadioheadのような資質を持ったバンドだと思っていたが、その変化のスピードがますます速くなって、今年は一曲リリースするごとに大きな変化を見せている。この得体の知れなさこそが、現状のodolの大きな魅力になっていると言えよう。最近何度か対バンイベントでもodolのライブを見ているが、そこでも彼らは常に異物感を醸し出している。いわゆる歌もののギターロックと一緒にやることもあれば、海外のクラブミュージックと共振するようなバンドと一緒にもなり、それぞれの要素を持ち合わせてはいるのだが、何にしろ一定のカテゴライズにはハマらない(いや、「ハマれない」と言うべきか)。


 たとえば、「four eyes」にしても、少し前から披露されてはいるが、この曲を演奏することですぐにダンスフロアが生まれているかというと、現状ではそうではない。むしろ、音楽的探求の中で生まれ落ちたこの曲を、まだメンバー自身ライブでどう鳴らすかを模索しているようにも見える。「大人になって」も「four eyes」も、歌詞のテーマは成長に伴って純真さが失われて行くというアンビバレンスについてであり、まさに今の彼らが自分でも追いつけないほどの時間の流れの中を生きていることを示しているように思う。


 Shaikhがシンセベースを弾く「またあした」は、音源では一分ほどの小品だったが、この日は後半でボーカルにディレイをかけ、空間を広げるダブ的な展開に突入。今年の3月にリリースされ、こちらも“時間の経過”について歌う「時間と距離と僕らの旅」を経て、ライブは後半へ。そこで印象的だったのは、ミゾベの歌心である。各楽器が折り重なってリズムが走り出す、ドラマチックな間奏に心を揺さぶられる名曲「years」をはじめ、この日のミゾベは身振り手振りを交えながら、声を振り絞るように歌い続けていた。


 かつて森山が担当していたMCがミゾベに代わり、ややぎこちないながら、オーディエンスに真摯に語りかける姿からは「届けよう」という姿勢が確かに感じられるのだが、その一方で、彼は今も自分と向き合いながら、歌を紡いでいるようにも見える。トレードマークのSGを持って、本編ラストで歌われた「生活」、そして、アンコールで演奏された「飾りすぎていた」という初期曲での青い叫びもまた、やはり彼らの大きな魅力だ。


 MCでは10月にフルアルバムをリリースするという発表も。加速度的な変化の中を生きる6人がどんな音を届けてくれるのか、今から非常に楽しみだ。


■金子厚武
1979年生まれ。埼玉県熊谷市出身。インディーズのバンド活動、音楽出版社への勤務を経て、現在はフリーランスのライター。音楽を中心に、インタヴューやライティングを手がける。主な執筆媒体は『CINRA』『ナタリー』『Real Sound』『MUSICA』『ミュージック・マガジン』『bounce』など。『ポストロック・ディスク・ガイド』(シンコーミュージック)監修。


■セットリスト
『odol LIVE 2018 “O/g-7”』
2018年8月3日(金)東京・表参道 WALL&WALL


1.夜を抜ければ
2.大人になって
3.four eyes
4.狭い部屋
5.GREEN
6.またあした
7.時間と距離と僕らの旅
8.years
9.逃げてしまおう
10.生活
En.飾りすぎていた


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