今期、もっとも観るべきドラマは? ドラマ評論家が選ぶ、平成最後の夏ドラマ注目作ベスト5

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2018年08月16日 06:02  リアルサウンド

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 2018年、今シーズンのテレビドラマは、ほとんどが中盤に差し掛かった。現在は、TVerやFOD、Huluをはじめとするサービスが充実しており、話題作はどんなタイミングからでも1話から観始めることができる。各局、力の入った作品が並ぶが、本当に観るべきはどのドラマだろうか。ドラマ評論家の成馬零一氏に、夏ドラマから注目すべきタイトルのベスト5を選んでもらった。


1.透明なゆりかご(NHK)


 金曜夜22時から放送されている産婦人科を舞台としたドラマ。1997年の産婦人科の実情を描いた本作は、看護実習生の青田アオイ(清原果耶)が院内で起きる妊婦の姿を真摯に見つめる姿が印象に残る。ここでは、出産も中絶も日常的なこととしてニュートラルに描かれている。原作漫画が絵柄のユーモラスさで緩和できていた残酷な真実を、本作は美しい映像で容赦なく描いている。重々しい緊張感が続くが、アオイの子供っぽい抜けたところがときどき出てくるのが、救いになっている。脚本は『リッチマン、プアウーマン』などのフジテレビ系の月9ドラマで知られる安達奈緒子。NHK地上波での連ドラ執筆は初だが、生真面目に対象をみつめる彼女のスタンスとNHKの相性は良く、今後の展開(例えば朝ドラ執筆)が期待できる。


2.恋のツキ(テレビ東京系)


 木曜深夜に放送されているテレビ東京のドラマ。とにかくエロくて生々しい。名脇役として評価が確立されつつある徳永えりが主演を務める本作は、31歳の普通の女性が付き合っている彼氏に対して抱えている打算的な感情が、性欲とともに、しっかりと描かれている。同棲する恋人との性生活はもちろん、彼女が働く映画館で知り合った男子高校生への欲望もしっかりと描かれており、脱いではいないものの、テレビ東京の深夜ドラマとはいえ、ここまで描くのかと毎回、驚かされる。


3.dele(テレビ朝日系)


 テレビ朝日系の金曜夜23時15分から放送されている探偵ドラマ。亡くなった人間のスマホやパソコンの中にある「デジタル遺品」を消去する会社で働く男たちを主人公にした異色のバディもの。見どころはなんと言っても主演の山田孝之と菅田将暉の掛け合い。物語がわからなくても二人の会話を見ているだけで、いつまでも楽しめる。キャラクターこそ違うが伝説のドラマ『傷だらけの天使』(日本テレビ系)の萩原健一と水谷豊の軽妙なやりとりを彷彿とさせる。


4.この世界の片隅に(TBS系)


 TBS系の日曜劇場(日曜夜21時)で放送されている戦時下の呉を舞台としたドラマ。2016年に上映されたアニメ映画がロングランとなっている中でドラマ化された本作は「special thanks to 映画『この世界の片隅に』制作委員会」というクレジットに対して製作委員会サイドが「一切関知しておりません」というコメントを出したり、原作者のこうの史代が「『六神合体ゴッドマーズ』よりは原作に近いんじゃないかな!?」とコメントを出したことが場外で話題となっているが、作品自体は、朝ドラ的なホームドラマに特化したことで、完成度の高い仕上がりになっている。役者陣も尾野真千子や二階堂ふみといった力のある女優を揃えているので、演技の応酬だけでも楽しめる。もちろん主演の松本穂香も北條すずを的確に演じており、内面描写も原作とは違う踏み込み方をしている。ただ、良くも悪くも日曜劇場という枠に特化しており、わかりやすくしすぎているところは評価が割れるところだろう。正直、説明過多に感じるところはあるのだが、それは今期のドラマ全般に感じることで、民放のプライムタイムで連ドラを放送すると、今はこうならざるを得ないのかもしれない。


5.高嶺の花(日本テレビ系)


 『101回目のプロポーズ』(フジテレビ系)や『高校教師』(TBS系)などで知られる脚本家・野島伸司が久々に民放地上波に登板。石原さとみと峯田和伸という組み合わせと『高嶺の花』というタイトルから『101回目のプロポーズ』のような作品になるかと思われたが、峯田の方が石原に求められる側に見えるのは、時代の変化と言うべきか。華道を題材としたストーリーは若干迷走気味だが、役者のポテンシャルを引き出す力は流石、野島伸司。優等生的なイメージが強かった千葉雄大と芳根京子も、複雑な感情を抱えた大人の男女を好演している。


次点 『放課後ソーダ日和』、『#アスアブ鈴木』


【動画】放課後ソーダ日和(第1話:特別な時間のはじまり)


 この2作はYouTubeで配信されているショートドラマだが、新しい流れとして見逃せないので最後に言及したい。『放課後ソーダ日和』は映画『少女邂逅』から派生したドラマで、女子高生3人がタイトルのとおり、放課後、クリームソーダを飲むために喫茶店に行く姿を描いたもので、思春期の女の子の多感な気持ちが繊細に描かれている。『#アスアブ鈴木』は『この世界の片隅に』でおっとりした役を演じる松本穂香が、自意識をこじらせているユーチューバーの女性を激しく演じている。あらすじが説明しにくい話だが、地方で暮らす女性の鬱屈した感情が描かれていて好感が持てる。ここ数年、WEBドラマは試行錯誤されてきたが、いよいよ起動に乗ってきたという感じ。Netflixのような有料動画配信メディアでは明石家さんまが企画・プロデュースするドラマ『Jimmy〜アホみたいなホンマの話〜』も作られており、テレビ以外の場所から新しいドラマの流れが生まれつつある。視聴者数では、テレビの方が上だが、クオリティに関しては差が縮まっており、この夏は、大きな分岐点になるかもしれない。


(成馬零一)


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