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オウムを追い続けた江川紹子が今感じる「カルト化する現代の空気」

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2018年10月12日 07:02  AERA dot.

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写真江川紹子(えがわ・しょうこ)/ジャーナリスト。1958年、東京都生まれ。神奈川新聞記者を経て、フリーのジャーナリストに。オウム問題や冤罪事件、災害など、国内外のさまざまな問題に取り組む。95年、一連のオウム報道で菊池寛賞を受賞。大のオペラ・クラシック愛好家としても知られる。著書に『特捜検察は必要か』(岩波書店、編著)など多数。自身のツイッター(@amneris84)やヤフーニュース「江川紹子のあれやこれや」で旺盛な論評も展開している。(撮影/大野洋介・写真部)
江川紹子(えがわ・しょうこ)/ジャーナリスト。1958年、東京都生まれ。神奈川新聞記者を経て、フリーのジャーナリストに。オウム問題や冤罪事件、災害など、国内外のさまざまな問題に取り組む。95年、一連のオウム報道で菊池寛賞を受賞。大のオペラ・クラシック愛好家としても知られる。著書に『特捜検察は必要か』(岩波書店、編著)など多数。自身のツイッター(@amneris84)やヤフーニュース「江川紹子のあれやこれや」で旺盛な論評も展開している。(撮影/大野洋介・写真部)
 長きにわたってオウム真理教の取材を続けてきたジャーナリストの江川紹子さん。事件から何を教訓とすべきなのか、そして江川さんの目に現代社会はどう映るのか、作家の林真理子さんが聞きました。

*  *  *
林:地下鉄サリン事件から23年ですが、あのころよりも生きづらい感じがしますか。自民党総裁選で、安倍(晋三)さんが3選されましたけど、世の中ちょっと違うほうに行ってるんじゃないか、とか。

江川:そうですね。世の中全体が“カルト化”しているように思うんです。オウムなどのカルトの特徴だと思っていた現象が、今は社会のあちこちで見られるようになった。オウムって本当は、“時代のカナリア”だったのかなと思うことがあります。

林:なるほど。カナリアといえば、有毒ガスに敏感だということで、警察がカナリアが入った鳥かごをさげて、サティアンに入っていきましたよね。オウムというのは、実は時代のカナリアだったんじゃないかと。

江川:たとえば、「正義はわれにあり。それに敵対するものは悪である。悪はたたきのめさなければならない」というふうな、“全否定・全肯定”の傾向が、今あちこちに見られていますよね。

林:はい、それはすごくありますね。

江川:「これが正しい」となったら、違う情報を提供しても耳を貸さないし、心に入らない。とにかく「これだ!」となって、それに合うエビデンスだけしか受け入れない。そういうカルト的な特徴が、オウムほど濃くはないにしても、社会全体に薄く広く見られる感じがするんです。

林:よくわかります。先日の「新潮45」問題(注:8月号でLGBTについて「生産性がない」と否定した自民党の杉田水脈衆院議員の論考を掲載したのに続き、10月号で論考を擁護する特集を組み、批判が噴出した問題。発行元の新潮社は9月25日、同誌の休刊を発表)なんかもそうですよね。杉田さんの発言が批判されると、「あの発言のどこが悪い」と雑誌全体が彼女を応援して、反対意見をたたきましたけど、やるなら賛否両論を載せるべきです。どちらかの意見だけに偏るのは、違うんじゃないかと思います。

江川:カルトって批判されると「自分たちは真理であり正義である。今その真理や正義が迫害されている」という被害者意識がすごく強いんですが、そういう現象も今よく見ますよね。それから、迷いとか曖昧さを許さず、ある考えを受け入れるか受け入れないかで人の善悪の評価も決まってしまう。まさに宗教の世界に近いと思うんですね。

林:これってすごく恐ろしい流れですよね。私がこの世界に入ったときには見られない現象です。私なんて何か言われたら「キャンキャン」って尻尾丸めて逃げてますが、江川さんはもうコワいものなんてないんじゃないですか。

江川:今、多くの人は民衆からのリアクションを恐れていると思うんです。ちょっと前ですけど、野球の清原(和博)さんが覚醒剤で捕まったときに、甲子園歴史館に展示してあった清原さんのバットなどを撤去したという報道があったんです。

林:それって、覚醒剤と全く関係ないじゃないですか。

江川:ええ。だけど館長さんは「教育上の配慮から」とおっしゃっている。釈然としないので、歴史館に「どういうことですか?」って電話してみたんです。そしたら、「親子連れで来られる方が多いので、親が子どもに聞かれて困るから」だという。でも、若いときにすごい活躍をしたけれども、ちょっと気をゆるめるとこうなっちゃうんだという教育効果があるんじゃないですか?と言うと、「そう受け止める人もいるが、そうじゃない人もいる」とおっしゃった上で、「“過剰反応だ”と言われるほうが“後手に回った”と言われるよりもいいんです」と言ったんです。

林:ほぉー。

江川:そのとき、今の時代の空気は、「これだ!」と思いました。殺傷事件なんかがあると「刃物が出てくるアニメは今日は控えます」とか、いろんな自粛があるじゃないですか。それもこれも、「過剰反応だ」と言われるほうが「後手に回った」と言われるよりもいいという空気が、日本全体に蔓延してる証しだと思うんです。

林:なるほどねえ。確かに、それってすごく当てはまる気がしますね。最近の事件の中では、何か気になるものはありますか。

江川:弁護士に対する大量の懲戒請求事件を見たとき、あっと思いました。何人かの弁護士さんに何百何千と懲戒請求が来るんです。

林:それは何でですか。

江川:行政が朝鮮学校に補助金を出すのをやめたことに対して、いくつかの弁護士会が「再開するように」という声明を出したらしくて、そういう弁護士会の役員や弁護士に対して懲戒請求が来てるんです。あるブログに「これは日本を破壊しようとする弁護士たちの企みだ」みたいな陰謀論が展開されていて、懲戒請求を呼びかけているわけです。この動きを見てると、非常にカルト的だなと思うんですね。しかも、そこに引き寄せられていく人たちは中高年、特に高齢者が多いんですよ。

林:まあ、そうなんですか。

江川:真面目に働いて社会に貢献してきた人が退職したけれどまだまだ元気で、趣味の活動なんかしてるときにそのブログを見て「マスコミも知らない真実がここにある。自分が知らないところで日本が破壊されようとしている。何とかしなきゃいけない」と目覚めてしまう。社会の役に立てる場があると使命感を抱いて参加していくんでしょうね。そして、家族がいくら止めても聞き入れない。これはカルトに入れ込んでいく状態と非常に似てると思うんです。

林:オウムもそうでしたよね。

江川:はい。オウムも「人類救済」という言葉で使命感を掻き立てていました。オウムは若い人たちをターゲットにしましたけど、これからは高齢者をターゲットにしたカルト的なものが出てくるんじゃないかと思いますね。

林:お話を聞いてるうちに、うちの夫のことを思い出してゾクゾクッとしちゃいました。団塊の世代だから理屈も立つし、学生運動もちょっとやってる分、はやる気持ちもあるし。

江川:きっと自分も社会の役に立ちたいと思うんでしょうね。

林:「ボランティアでもやったら?」って言うんですけど、「おばさんたちに指示されるのはイヤだ」って。

江川:プライドもあるんでしょうし。そういう人たちをうまく取り込んでいったのが今回の懲戒請求事件ではないか、と。この種のものが、これからもっと出てくるかもしれません。

(構成/本誌・松岡かすみ)

※週刊朝日  2018年10月19日号より抜粋

【おすすめ記事】江川紹子が見つめ続けた「オウム真理教事件とは何だったのか」


このニュースに関するつぶやき

  • 言っているソバから、他人批判の書き込みが上位に入る。カルト教徒の自白にしか見えない(苦笑)精神科受診を強く勧める。
    • イイネ!2
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  • …批判されると「自分たちは真理であり正義である。今その真理や正義が迫害されている」という被害者意識がすごく強いんですが、そういう現象も今よく見ます…←一部のLGBT擁護者そのものだ���ä���
    • イイネ!92
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