<幼いときの口内と腸内の細菌群を調べることで肥満になるリスクが分かる?>
肥満は悩ましい問題。けれども、子供が大きくなってから肥満になるかどうかが幼いうちに分かるとしたら? 科学者たちは、幼児の口腔内にいる細菌群(口内フローラ)からそのヒントが得られると考えている。
これはペンシルベニア州立大学による研究だ。科学者のチームは、2歳児とその母親226組の口内と便から口内・腸内細菌を採取して調査を行った。
その結果、乳児のときの体重増加(将来肥満になるかどうかの重要な指標となる)が急激な子供は口内細菌の種類が少なく、脂肪の燃焼につながるバクテロイデス門の菌より脂肪の蓄積につながるフィルミクテス門の菌が多かった。
一方で、腸内細菌群(腸内フローラ)と急激な体重増加の関連性は確認されなかった。これは乳児の腸内フローラが、まだ発達途上の段階にあることを示している。
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この結果は、成人と10代の若者それぞれの肥満者を対象とした過去の腸内フローラの研究結果に合致している。「一般的な2つの細菌群であるフィルミクテス門とバクテロイデス門には一定のバランスがあり、それが崩れると消化に異常を来す可能性がある」と、論文の筆者の1人であるペンシルベニア州立大学のサラ・クレイグは言う。
彼女は、今回の研究は腸内フローラの検査が一時点だけだった点で限界があると認めた。次の研究では、ペンシルベニア州外のより多様性のある対象に調査を行い、同様の結果が出るよう期待しているという。
消毒剤に意外な影響力
肥満とは何の関係もなさそうな家庭環境も、子供の将来的な肥満リスクを高める要因になる可能性がある。
カナディアン・メディカル・アソシエーション・ジャーナル誌に発表された別の論文によれば、家庭用消毒剤を週に1回以上使用している家に住む子供はそうでない子供に比べて、肥満度を示すBMI値が3歳までに高くなっていた。
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この研究では生後3〜4カ月の乳児757人の腸内フローラを確認。各家庭で抗菌洗剤を使う頻度を尋ね、確認のため自宅訪問も行った。子供たちが1歳と3歳になったときに再び腸内フローラを調べ、体重も測った。
その結果、家庭で使用される洗剤や消毒剤によって腸内フローラが変化することが分かった。例えば、頻繁に消毒剤にさらされる子供は、脂肪を蓄積しやすいラクノスピラ科の細菌が多かった。
3歳時の体重測定では、消毒剤との接触が最も多い子供のBMI値が高く、環境に優しい洗剤類との接触が多い子供はBMI値が低かった。環境に優しい洗剤や消毒剤を使用している家で育った子供には、腸内フローラの変化と肥満の関連は確認されなかった。
生体機能全般に影響を与えることで注目される口内フローラと腸内フローラ。これを幼少期に検査することで将来の肥満の可能性が分かれば、回避することもできるかもしれない。
<本誌2018年10月16日号掲載>
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カシュミラ・ガンダー
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