なぜ“TRIGGER”のアニメは国境を越えて愛される力があるのか? 設立7年の歩みと展望を聞く

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2018年10月19日 19:23  アニメ!アニメ!

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アニメ!アニメ!

なぜ“TRIGGER”のアニメは国境を越えて愛される力があるのか? 設立7年の歩みと展望を聞く
アニメサイト連合企画
「世界が注目するアニメ制作スタジオが切り開く未来」
Vol.3 TRIGGER

世界からの注目が今まで以上に高まっている日本アニメ。実際に制作しているアニメスタジオに、制作へ懸ける想いや制作の裏話を含めたインタビューを敢行しました。アニメ情報サイト「アニメ!アニメ!」、Facebook2,000万人登録「Tokyo Otaku Mode」、中国語圏大手の「Bahamut」など、世界中のアニメニュースサイトが連携した大型企画になります。


TRIGGER 代表作:『キルラキル』、『リトルウィッチアカデミア』、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』(A-1Picturesと共同制作)、『SSSS.GRIDMAN』、他多数。


杉並区荻窪にあるTRIGGERのエントランス
『ダーリン・イン・ザ・フランキス』をはじめとした作品ポスター
『キルラキル』の手書きイラスト
TRIGGERスタジオ内部

パワフルな作画と魅惑の作品世界。TRIGGERの作品には、国境を飛び越えて愛される力がある。そして10月からはいよいよ新作『SSSS.GRIDMAN』が放送開始に。

監督は雨宮哲。『キルラキル』で助監督を、『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』でシリーズディレクターを務めた雨宮が本格的にTVシリーズを手がける。それは『キルラキル』の今石洋之、『リトルウィッチアカデミア』の吉成曜に続く、TRIGGER第3の監督の登場ということでもある。

TRIGGERのこれまでとこれからについて、社長の大塚雅彦氏(写真左)と『SSSS.GRIDMAN』のラインプロデューサー竹内雅人氏(写真右)に話を聞いた。
[取材・構成=藤津亮太]


■きっかけは、新しい試みへの興味

――大塚さんは2011年にトリガーを設立されました。その時、こんなスタジオにしたいというイメージはあったのでしょうか?

大塚
TRIGGERを創業してから結構経ってしまいましたが、やっていることは、以前所属していたガイナックス(代表作:『トップをねらえ!』、『ふしぎの海のナディア』、『天元突破グレンラガン』)のころとあまり変わってはいないんですよ。
それまでも、やりたいことができなかったわけではなくて、むしろ好き勝手にやっていたところがありましたから。だから、作品の方向性というよりは、スタッフの育成やファンとの接し方をどうしようかという点で、新しい試みをしたいなとは考えていました。

一方で、僕らがアニメーションを作り始めたころはセルの時代でしたが、それがデジタルに変わって、TRIGGERを設立するころはネット配信もそろそろ本格化していくというタイミングでした。アニメーションの在り方が変わってきているそういう時期に新しいことをやりたいなと。そのためには新しい場所の方がいいのではないかと考えたのです。

――トリガーはファンに対してオープンな会社だというイメージがあります。

大塚
それはガイナックスにいたときから変わらないところですね。基本的にスタッフは裏方であって、作品を見てもらえることが一番です。
とはいえ、お客さんの中には、裏側をもっと知りたいというファンもいますし、作品をどうやって作っているのかを知ってもらえればアニメの楽しみ方も変わってくるのではないかと。だから「もうちょっとスタッフも前に出ていいんじゃないか」と当時から考えていました。

もちろんお客さんと喋りたいスタッフもいれば、人前に出るのが苦手なスタッフもいますから、全員が全員前に出るわけにはいきません。
ただ「(イベントや取材に)出てもいいよ」というスタッフがいて、話を聞きたいというファンがいて、2つのニーズが合うのならば、そういうことをやっていってもいいんじゃないかと。
TRIGGER設立当時は、ファンとの交流を積極的にやっているスタジオも少なかったので、ちょっと面白いかなと思って、やっていきたいなと考えたんです。

ファンの反応がエネルギーになる

――海外のコンベンションでもTRIGGERの作品は人気がありますし、TRIGGERというスタジオ自体にもファンは熱狂しています。

大塚
配信メディアが普及することで、海外のファンも日本とリアルタイムで同じものを見てもらえる時代になりました。だから我々は国内だけではなく海外のイベントにも積極的に参加したいと思っています。
「日本だけじゃなくて、世界中で見られているんだ」と知ることは、また新しいモチベーションに繋がります。

海外のイベントで実感するのは、日本のファンより向こうのファンの方が声が行動的と言いますか(笑)、お国柄の違いと言いますか、楽しみ方が受動的ではないんですよ。自分たちも積極的に楽しもうという姿勢を強く感じます。
スタッフである我々としても、すごく楽しそうにしているファンの姿を見るのは嬉しいですし、本当にありがたいなという気持ちになれますね。

スタッフの中には「海外に行くのは億劫だよ」と言う人もいるのですが、実際に参加すると「行ってよかった」と心変わりする人が多いですね。

もちろん作品を作ることがメインではありますが、国内外の活動を通じてファンの反応を見て、我々もエネルギーをもらうことがあります。そのために今後もやっていきたいなと思っています。

アニメーター育成に向き合う

――トリガーの設立理由のひとつに人材育成を挙げられました。人を育てていくことの大事さについて教えてください。

大塚
昔は、技術というものは先輩から盗むものであって、教えてもらうものではなかったんです。我々の世代は自分で見聞きして奪い取るんだと考えていました。
でも今の世代はあまりそういう感じではないんですよね。がっついていないと言いますか……。

時代がそういう風に変わっているのであれば、我々がそれに合わせて、教えることにきちんと向き合っていかないと、アニメーション自体がなくなりかねない。ガイナックスから出ようと思った前後の時期に、そういう危機感を抱き始めたことが今に繋がっています。
教育については進めている今も難しいなと感じています。でも、だからこそやっていかなければいけない部分ですね。

アニメーターは基本的には個人作業だから、机に向き合っていれば、人と接しなくてもできてしまうんです。そういう意味では、みんなで作っていることを感じないままでも、できてしまう仕事なんです。
そういう環境にある人は、自分だけの世界に入ってしまって、技術的なことも「我流でいいんだ」という考えに陥りやすい。

だから先輩と後輩がいて一緒に仕事をしていく場は、きちんと持たないといけません。それに先輩は先輩、後輩は後輩とで固まるのではなく、もっとぐちゃぐちゃになって一緒にやっていくことも必要ですね。
それが今どのぐらい上手くいっているのかは分かりませんが、そういう場所は必ず必要なんだと強く思っています。

アニメ作りのすべてが楽しい

――ここでTokyo Otaku Modeで募った海外のファンからの質問を聞かせてください。「アニメを制作するときは、どこを楽しみにしていますか?」。

大塚
もちろん人によって違うとは思いますが、僕は全部が楽しいんですよ。アニメを作っていると体力的にキツイことはありますし、悩んだりもするのですが、それも含めて全部楽しいんです。
僕は最初はスタジオジブリの演出助手でアニメ業界に入りましたが、演出助手の時もツライと思ったことはないんです。なんなら「ずっと演出助手をやっていてもいい」と思うぐらいでした。
役職にかかわらず、自分がやれること、作品にプラスになることは、どんなポジションでも見つけられると考えているんですよ。そういう自信さえあれば、役職はなんでも構わないです。

ガイナックスも「演出だから、作品に関わるのはここまで」といった垣根がない会社だったので、役職にかかわらず何をやってもいいところがあったんです。
庵野(秀明)さん(『新世紀エヴァンゲリオン』監督)たち先輩がそうやって仕事をやっている姿を見て、「何をやってもいいんだな」と。
実際、自分がやりたいことを最後までちゃんとやり遂げるという意志があれば、何でもやらせてもらえました。ただし「やったからには責任を取れよ」というところはありますが。

アニメーションはTVの1話だけでもおよそ30分の尺がありますから、どうやったってひとりで作ることは難しい。それでいろいろなスタッフと一緒にやるのですが、人が変わればできあがる作品もガラッと変わります。
一緒に作るこの人たちと何をやるのかが大事なことであって、だから楽しいんだということが多分にあると思います。

――TRIGGERが5年後、10年後に目指すスタジオ像はどんなものでしょうか?

大塚
僕がTRIGGERを立ち上げたときには「5年保たせたい」と言っていました。5年目が来たときは、次の目標に「10年まで保たせることです」と言いました。
今石監督と吉成監督からスタートしたTRIGGERですが、そうやって続けてきた結果、秋の作品では雨宮(哲)監督という次の世代の、もっと若い監督が出てきてくれました。作品的にも、我々が作っていたものとは、少し違った感覚のある面白いものになっています。
それは作品について我々がどうこう言ったからではなく、そういうものが出てくる土壌を作った結果なんですね。だから、ここから先はそういう人たちが、もっと出てこれるような土壌をしっかり作るようにしたいです。

度肝を抜くアニメ『SSSS.GRIDMAN』

――今、雨宮監督の新作『SSSS.GRIDMAN』の話がでました。ラインプロデューサーの竹内雅人さんに、現場の様子をうかがいたいと思います。制作が進んでいると思いますが、手応えはどうでしょうか。

竹内
もし自分がアニメファンとして『SSSS.GRIDMAN』を見たら、確実に度肝を抜かれるでしょうね。映像にビックリして、久しぶりに鳥肌が立つような、ゾワるアニメーションになっています。
アニメらしい伝統芸能の部分があって懐かしさもありますが、懐かしさだけでなくそれをうまく今のアニメに落とし込んでいること、そして「これはアニメでは見たことがない」と思えるような新しさもすごくあって、驚きの連続です。

『SSSS.GRIDMAN』
竹内
最初はもとの『電光超人グリッドマン』(円谷プロダクション製作。1993年放映)をベースに、雨宮監督のオリジナル要素を加えた作品にするという方向性で進んでいました。
でも、企画が進むにつれて、原作は25年ほど前のタイトルなので、今のアニメファンに向けて作らないと見てもらえないだろうという意見が出たんです。
それを踏まえて、タイトルは借りながらも、まったく新しい作品にしようとシフトチェンジをしました。

僕も含めて現場は若いスタッフが多いです。若いチームでやっているのでお互いに気心も知れていて、ディスカッションがしやすい環境だなと思っています。
そして大事なポイント、外せないポイントではもちろんベテランの方からアドバイスをいただく、お力をお借りする、『SSSS.GRIDMAN』はそんな現場です。だから僕自身すごく楽しいですし、スタッフみんなも作品にすごく協力的な印象があります。

切磋琢磨していけるような環境を作る

――竹内さんにもファンからの質問を。「素晴らしいアイディアはどのように生まれるのでしょうか?」です。

竹内
仕事をお願いする相手に「こういうことをやりたいんです」「こういう感じが好きなんです」「こういう風にしたいんです」とまず夢を伝えるんです。その上で「あなたならどうやりますか?」と一度考えてもらうんです。
そういうふうに発注をすると、発注を受けたスタッフも前のめりになって、良いアイディアをいただけることが多いと思います。
デザインやコンテ、演出や作監、3D、撮影や美術、色彩、制作に関してもみんな同じですね。発注する時にいかに熱意が伝わるか、それが素晴らしいアイディアに結びつくと思っています。

大事なのは、そういう会話ができるような雰囲気を作ることで、そこが良いアイディアが生まれてくるために必要なことだと思っています。
「アイツを笑わせたら勝ち」「アイツを唸らせたら勝ち」というと少し大げさですが、みんなが互いに相手を意識して、その空気を肌で感じたとき、「楽しい!」「自分が作品を作っている!」と実感できるのかなと思います。

僕の場合、自分が周囲に「こういうことをやりたいんだ」と夢を伝えることだけでなく、ほかの人が思っていることを誰かに伝えることも多いです。
アニメーターさんは机に向かいがちになってしまうことが多いので、「あの人はこういうのやりたいと言っていましたよ」とか「あんなことをやっていましたよ」という話を雨宮監督やほかのスタッフへと繋げていくんです。
そういう橋渡しをすると、「アイツがそんなこと言っていたんだ」とお互いに意識しあって、化学反応が起きるんです。そんな恋のキューピッド的なこともこっそりしてたりします(笑)。


――放送を楽しみに待っているファンに向けてのメッセージをお願いします。

竹内
25年前のタイトルを引き継いでいるので、原作を知らないから敬遠している方もいらっしゃるかもしれません。でも僕たちは『グリッドマン』を知らない人にこそ届けたくて新しいキャラクターや、ストーリーを考えました。
もちろん原作へのリスペクトもありますから、原作をお好きな人であれば、必ずご満足いただける、そしてまた原作が観たくなる作品になっていると思います。

すごく良いものを届けられると思っていますので、『グリッドマン』を知らない人であっても食わず嫌いをせずに一度見ていただければうれしいです。

お客さんが楽しんでくれる作品を

――では最後に、大塚さんから、トリガーを応援している国内・海外のファンにメッセージをお願いします。

大塚
TRIGGERは、監督中心に面白いものを作りたいといつも思っています。我々は作るだけであって、お客さんに見てもらって初めて作品は体を成します。
お客さんがいないと始まらないと思っています。お客さんが楽しんでくれることで、我々も次の作品を頑張って作ろうという気持ちになれます。

作品を見て楽しんで――ダメだったらダメだと言ってもらって構いませんが――もし良いところがあれば、素直に「良かったよ」と言ってくれることが本当に力になるんです。
頑張って良いものを作りますので、それを面白いと感じてもらえたら一言「良かったよ」と言っていただければうれしいです。

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『SSSS.GRIDMAN』作品情報

放送情報
TOKYO MX:2018年10月6日(土)より、毎週土曜25:00〜
MBS:2018年10月6日(土)より、毎週土曜26:08〜
BS11:2018年10月6日(土)より、毎週土曜25:00〜
WOWOW:2018年10月6日(土)より、毎週土曜24:00〜
(C)円谷プロ
(C)2018 TRIGGER・雨宮哲/「GRIDMAN」製作委員会

このニュースに関するつぶやき

  • SSSS.GRIDMANの最大の武器は特撮的演出を取り込んでいる部分。重量感ある戦闘やカメラアングルが正に特撮ならでは。
    • イイネ!4
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