Adobe、YouTuberを意識した「Premiere Rush CC」を含む多数の新製品を発表

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2018年10月21日 09:52  リアルサウンド

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 クリエイティブソフトの老舗Adobeは、15日、クリエイティブカンファレンス「Adobe MAX 2018」をアメリカ・ロサンゼルスで開催した。このイベントでは既存のソフトの大型アップデートのほか、新たなクリエイティブ分野を意識した新製品も披露された。そうした新製品には、あの新興クリエイターたちご用達になりそうなものもある。


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革新し続けるAdobe
 Adobeが提供するクリエイティブソフトは多数あるが、もっとも有名なのは画像編集ソフト「Photoshop」だろう。同アプリのアップデートでは多数の新機能が実装されたのだが、そうした新機能もiPad向けPhotoshopの発表の前ではかすんでしまう。Photoshopの一部の機能を使用できるモバイルアプリはすでにリリースされていたのだが、iPad向けPhotoshopはデスクトップ版の機能をほぼ全て使えるそうだ。なお、同アプリの正式リリースは「今後」となっている。


 Webデザインソフト「Adobe XD」にも新機能が追加された。注目すべき新機能は、「音声プロタイピング」だ。この機能を使えば、Webデザインに音声による入出力を追加できる。例えば、従来のキーボード入力に変わり音声入力をデザインに組み込んだり、スピーチ再生を設定できるようになった。


 以上のほかに写真編集管理ソフト「Lightroom」や動画編集ソフト「Premiere Pro CC」等のアップデートが発表されたのだが、多くのソフトでAdobeが開発するAI「Adobe Sensei」を活用した新機能が実装された。クリエイティブ分野においても、AIによる支援が拡大しているのだ。


新たなクリエイティブ分野の開拓
 新たなクリエイティブ分野を切り開くAdobe製品として筆頭に挙げられるのは、動画制作ソフト「Adobe Premiere Rush CC」だろう。同ソフトは、YouTubeをはじめとしたSNSに動画を投稿するユーザを対象としたものであり、スマホで動画を撮影してSNSに投稿するまでの作業をひとつのソフトで実行できるようになっている。同ソフトは、YouTuber御用達のものになる可能性を秘めている。現在はiOS版、Mac版、windows版があり、後日Android版もリリースされる。


 また、iOS専用ドローイングアプリ「Project Gemini」が発表された。iOSに対応したドローイングアプリにはすでにPhotoshop Sketch等がリリースされており、ユーザにはプロのイラストレーターもいる。しかし、さらにプロのユーザのニーズに応えるためには新機能の追加を含めたアプリの刷新が必要となり、新規のアプリを開発するのが望ましい、と同社は考えた。こうして誕生したのが Project Geminiである。同アプリは、イラストレーターのコミュニティと協力して開発された、とのこと。正式ローンチは後日であるが、現在、英語のアンケートに答えればプレリリースプログラムに参加できる。


 さらに「Project Aero」も発表された。このプロジェクトは、ARコンテンツの制作から配信にいたるまでのプロセスを実行できるプラットフォームの構築を目標としている。この目標のためにAdobeの各種ソフトをAR対応とし、ARに注力しているAppleと協力してARコンテンツを配信できる仕組みを作っていくことを計画している。


市場はAdobeに好感
 Adobe MAX 2018では、Adobeの業績予測も発表された。この予測を報じたBloombergによると、同社のクリエイティブ関連ソフトの販売本数は2019年度には約20%増加すると見られている。こうした業績予測と新製品の発表が市場に評価され、16日の同社の株価は8.2%上昇し257.84ドル(約29,000円)となった。同社の株価は今年に入ってから46%上昇しており、アメリカ株価市場における代表的な指数S&P500の今年の上昇率4.3%を大きく上回っている。


 総合ニュースメディアCNBCの記事は、同社の株価上昇には今年に入ってECサイト構築ソフトを提供するMagentoを買収したことが影響している、と指摘した。意外に感じられるかも知れないが、Adobeはマーケティング関連ソフトも手がけているのだ。Magentoの買収を含めたマーケティング関連ソフトに関する舵取りも評価された結果、株価上昇につながった、というわけなのである。


 以上のように既存のソフトを革新しつつ新規分野も切り拓くAdobeの未来は、非常に明るいと言える。そして、同社はとくにAR市場においてAppleとともに台風の目になるかも知れない。


(吉本幸記 )


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