新幹線を使いこなす 第15回 新幹線車内のコンセント、どう使う?

3

2018年10月22日 06:02  マイナビニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
○最新型の新幹線車両は全席に設置

20年ほど前とは比べものにならないくらい、いまは充電して使う機器類を持ち歩くことが多くなった。スマートフォン、ノートパソコン、カメラ、あるいはゲーム類など、じつに多種多彩になったものである。それゆえに、電気機器類の「充電切れ」という不安をつねに抱える時代になったともいえる。

国鉄時代に製造された寝台車では、洗面台にコンセントがあったが、わざわざ「電気カミソリ用」と表示されていた。言い換えれば、その程度しか車内で使う電気機器類はなかったのだ。2000年代に入った頃、廃止される直前の寝台特急では、そのコンセントに携帯電話の充電器がタコ足配線で突っ込まれている場面がよく見られた。

こうした時代の流れに、もちろんJR各社も対応している。新幹線の客室内にコンセントが設置されるようになったのも21世紀に入ってから。新幹線の車両でいうと、東海道・山陽新幹線は700系(2001年以降の増備車)、東北・上越新幹線系統はE2系(2010年以降の増備車)の世代からだ。

それでも当初は車端部の席に、パソコン用の大型デスクとともに、壁にコンセントが設けられている程度。それ以外の席では使用できなかった。

現在、車端部の座席はもちろん、N700系・N700Aではグリーン車の全席と、普通車も窓側の席すべてにコンセントが設置されている。最新型ではもっと発達して、東北・北海道新幹線ではE5系の2015年以降の製造車とH5系、北陸新幹線ではE7系・W7系のすべての座席にコンセントが設置されるようになった。東海道・山陽新幹線でも、試験運転中の新型車両N700Sから全席設置になる予定である。
○窓側は壁、通路側は前席の下を利用

今回はH5系を例に、新幹線車両の最新の充電設備について説明しよう。コンセントを全席に設置している他の形式でも、仕様はほとんど同じだ。

まず、窓側席のコンセントは、足下の低い位置にある。充電器などを差し込もうとすると、かがまなければならないのが難点といえる。

これに対し、通路側席(3人掛けの真ん中のB席も含む)では、前席の台の部分にあるコンセントを使うことになる。こちらは比較的差し込みやすいので、充電を行う必要があると事前にわかっている場合は、最初から通路側に席を取ることを考えても良いだろう。

いずれの場合も、ランプが点灯している場合のみコンセントを使用できる。もっとも、筆者はかなり頻繁に新幹線を利用するほうだが、これまでランプが消えていて、コンセントを使用できないという場面に遭遇したことはない。
○コードの取り回しにも気をつけたい

ノートパソコンの使用イメージとして掲載した写真では、窓側A席用のテーブルにパソコンを置いているが、電源アダプターはB席用のコンセントに差し込んでいる。筆者のパソコンは左側に電源があるため、こちらのほうがコードをすっきり収められるからだ。

用心深い人なら、自分が持ち歩く電気機器(とくにノートパソコン)の電源がどちらにあるかを考え、電源アダプターを差し込みやすいほうに席を取るのも良いだろう。筆者の場合、窓側なら進行方向左側の席となる。空いている場合は窓側の席であっても通路側用のコンセントを使っても差し支えないが、利用者の多い区間などでは後から隣席に乗客が来ることも考えられるため、配慮が必要になるだろう。

コードの取り回しは意外に気をつけなければならない点でもある。とくに窓側席用のコンセントを使う場合、足下からテーブルへとコードが這うことになるので、自分の足やテーブルのアームなどに引っかけないよう注意が必要になる。コードを取りまとめるためのクリップなど、小道具を用意しておくと良いかもしれない。

一方、スマートフォンを充電する場合、コンセントからテーブルまで思ったより距離があるため、旅によく出る人は長めの電源コードが必要になる。スマートフォンまたは携帯電話程度なら、テーブルではなく前席の小物入れの網袋に入れて充電するのも手だろう。

いずれにしても、下車駅では充電した電気機器類を忘れて降りないように気をつけたい。スマートフォンや携帯電話の忘れ物は非常に多いそうである。
○USB充電はいまのところ未対応

ところで、飛行機や高速バスでは充電設備としてUSBポートが設置されるケースが増えてきたが、新幹線ではいまのところUSB充電に対応する設備はない。したがって電源アダプターを持参する必要がある。

北陸新幹線のE7系・W7系で全席にコンセントを設置できたのは、最高運転速度が260km/hと今日では比較的低く、列車全体で使用する電気の容量に余裕があったからといわれる。すべてのコンセントが一斉に使われることを考えなければならないため、おいそれとはコンセントを増設できなかったのだ。

なお、容量はH5系の場合、コンセント1口あたり2A(100V)。他の形式も大きく変わらないので、電源として使用できるのはせいぜいノートパソコンかスマートフォンくらいである。充電も「できることはできる」という程度だから、数時間乗車していても、さほど回復はしない。あくまで「充電切れ」を起こさないための緊急避難と考えたほうが良いだろう。新幹線車内のコンセントは「必要以上にバッテリーを消耗しないように、電源につないだ状態で電気機器類を使う」ためにあると思ったほうが無難である。

※写真はイメージ。本文とは関係ありません。

○筆者プロフィール: 土屋武之
1965年、大阪府豊中市生まれ。鉄道員だった祖父、伯父の影響や、阪急電鉄の線路近くに住んだ経験などから、幼少時より鉄道に興味を抱く。大阪大学では演劇学を専攻し劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。芸術や評論を学ぶ。出版社勤務を経て1997年にフリーライターとして独立。2004年頃から鉄道を専門とするようになり、社会派鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事を毎号担当するなど、社会の公器としての鉄道を幅広く見つめ続けている。著書は「鉄道員になるには」(ぺりかん社)、「まるまる大阪環状線めぐり」(交通新聞社)、「新きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科」(JTBパブリッシング)など。(土屋武之)
ニュース設定