「DJ村上春樹」再び登場。TOKYO FM『村上RADIO』第2弾が放送間近

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2018年10月22日 12:41  CINRA.NET

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『村上RADIO』ロゴ
村上春樹がDJを務めるラジオ番組の第2弾『村上RADIO〜秋の夜長は村上ソングズで〜』が、10月21日にTOKYO FMほかJFN系列全国38局ネットで放送される。

8月5日に放送された『村上RADIO〜RUN&SONGS〜』に続く第2弾となる『村上RADIO』。第1回放送時には、めったに日本のメディアに登場しない村上春樹が、初めてラジオのDJとなり、リスナーに直接語りかけた。「直接」と書いたものの、実際のところ電波に乗った音声がなんらかのオーディオ機器を通して放送されているのに過ぎないのだが、ラジオというメディアでは発信者とリスナーの距離が非常に近く感じる。それぞれがひとりの個人と個人として共存できるような感覚。不思議なものだ。

前回のコラムでは村上春樹のエッセイ集『村上ラヂオ』などを例に挙げ、村上春樹はこれまでも「ラジオ的」とも言える活動を活字の上で展開してきたのではないか、といったことを書いたが、第1回の放送では想像以上の親密さがあった。第2弾はどんな放送になるのだろう。

■今回もプレ番組を放送。坂本美雨の『1Q84』朗読も
10月19日には『村上RADIOプレスペシャル』が放送。第1弾放送時のプレ放送と同じく、坂本美雨と作家・小川哲が出演した。村上春樹と対面したことのある坂本美雨と、村上作品から多大な影響を受けてきたにもかかわらず、実際に顔を合わせたことはなく、どちらかというとファン目線の小川哲、というコントラストが面白い。謎が多いようでいて読者と活字を通して密接な関係を築いている「村上春樹」という存在の魅力を、立体的に表した番組だった。

プレ放送では第1弾放送では放送しきれなかったリスナーから村上春樹への音楽に関する質問と回答を初オンエア。坂本美雨が村上春樹に促されて『1Q84』の一節を朗読する場面もあった。

■『ハナレイ・ベイ』監督の松永大司も登場。村上春樹の「世界を見るまなざしの優しさ」とは
プレ番組では10月19日から全国で公開されている、村上春樹原作の映画『ハナレイ・ベイ』を手がけた松永大司監督のインタビューも放送。『ハナレイ・ベイ』は村上春樹の短編集『東京奇譚集』に所収されている同名作品を実写映画化したもの。サーフィン中の事故で亡くなった1人息子・タカシの命日の頃に毎年ハワイのハレナイ湾を訪れるサチの姿を描く。主人公のサチ役を吉田羊、サチの息子のタカシ役を佐野玲於(GENERATIONS from EXILE TRIBE)、サーファーの高橋役を村上虹郎が演じている。

野田洋次郎の主演作『トイレのピエタ』などで知られる松永監督。インタビューでは、村上春樹が地下鉄サリン事件の関係者62人にインタビューしたノンフィクション『アンダーグラウンド』について、「すごい熱量の作品。ああいう出来事に1人の作家として向き合うというのは本当にすごいこと」とコメントした。また『ハナレイ・ベイ』を監督した際に、村上春樹の「世界を見るまなざしの優しさ」を実感したと明かした。それを受けて、小川哲は以下のようにコメント。

<『アンダーグラウンド』までデタッチメント、時事的な内容を扱わなかった村上さんが、コミットメントの時代になったというか。オウム真理教の事件に対して正面から書いたという意味で、その後の作品への転機になった作品ともされていますよね。個人的には、そういう大きいものを描くためには「個人」というものをしっかり書かないと、その「事」の大きさに向き合えないと思っていて、そういう意味では『アンダーグラウンド』ではオウム事件というものがどうやって生み出されたのかが、「悲惨な事件」というだけではなく、関わった人がどういう人か、という個人の細部の側面から描かれている。松永監督がおっしゃった「世界を見るまなざし」もそういう村上春樹のものの見方なのかもしれない。>

■村上春樹のニューヨーク滞在近況も。「小説家にして紳士であること」の条件は?
そのほか、村上春樹が自らのニューヨークでの近況を語った音声も放送。雑誌『The New Yorker』によるイベント『ザ・ニューヨーカー・フェスティバル』に登壇した村上が、「小説家にして紳士であること」の条件として、「所得税の話はしないこと、昔のガールフレンドの話はしないこと、それからノーベル文学賞の話はしないこと」と冗談めかして語ったというエピソードや、自身と同い年であるブルース・スプリングスティーン(両者ともに1949年生まれ、69歳)のライブを間近で目撃し、「すごい元気と活力をもらった」というエピソード、ニューヨークでトークイベントの聴衆からラジオのプレイリストを求められたという話など。

プレ番組はradiko.jpで2本に分けてタイムフリー視聴が可能。前編は10月21日20:54まで、後編は同日21:02まで視聴できる。

■第2弾は「とくにこれというテーマはありません」。意味深な予告も
『村上RADIO』の特設サイトでは、第2回に向けた村上春樹のコメントが掲載中。第1回の『村上RADIO〜RUN&SONGS〜』では村上がランニングするときに聴く音楽を放送したが、今回は「とくにこれというテーマはありません」という。

<1回目の放送が思いのほか好評で、是非もっと続けてほしいという要望がたくさん寄せられました。ありがとうございます。僕もなかなか楽しかったので、とりあえず2回目をやろうということになりました。
今回はとくにこれというテーマはありません。秋の夜長を、村上の選んだ曲で楽しく過ごしてください……というのがテーマです。
うちから持ってきたレコードやCDをかけます。他の番組ではなかなか(ほとんど)かからない素敵な曲をどんどんかけちゃおうというのが、僕の選曲の基本的ポリシーであります。>

さらに「いろいろとお話ししなくてはならないこともあります。といっても、なにも深刻な話じゃありません。どちらかといえば、どうでもいいような話です」と意味ありげな予告も。こちらも気になるところだ。

番組の特設サイトでは前回放送の振り返りに加えて、番組スタッフの後記も掲載中。「村上春樹のラジオ番組を作る」ということに向けた現場の熱気が伝わってくる文章なので、あわせて読んでもらいたい。
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