【コラム】 大作の裏でこっそり実写化。しょこたんも賞賛の名作「赤んぼ少女」。

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2008年07月23日 09:45  よりミク

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 「花より男子」に「ゲゲゲの鬼太郎」、「20世紀少年」や「火垂るの墓」など、豪華ラインアップとなった今夏の実写映画。これらの作品の影に隠れるようにしながら、独特の存在感を醸し出している実写映画があります。原作は、かつて子どもたちにトラウマを与えた、恐ろしくも切ない物語。タイトルを「赤んぼ少女(※注1)」と言います。  原作者は、「まことちゃん」「漂流教室」「おろち」など、多くの人気作品を世に送り出してきた、恐怖マンガの巨匠・楳図かずお。昭和42年(1967年)から「週刊少女フレンド」にて連載されていました。前述の代表作と比べれば知名度は低いものの、根強いファンが存在する作品です。たとえば、楳図かずお好きで知られる中川翔子は5歳の時、亡き父・中川勝彦から「赤んぼ少女」などのマンガを買い与えられたことにより、彼を「神」と崇めるようになったというエピソードを告白。他にも、大槻ケンヂ率いる筋肉少女帯が「マタンゴ」という曲で、「タマミ! タマミ!」と叫びリスペクトしていたことでも知られています。
現在発売中の角川ホラー文庫版。モンスター風のイラストは、あくまで「イメージ」です。
右:サンデーコミックス版の単行本。背景に描かれているのは、血のついた生々しいギロチン……。
左:現在発売中の角川ホラー文庫版。モンスター風のイラストは、あくまで「イメージ」です。右:サンデーコミックス版の単行本。背景に描かれているのは、血のついた生々しいギロチン……。
 ところで、大槻ケンヂが叫ぶ「タマミ」とは、一体何なのでしょうか。それは、この物語のキモとなる人物のことで、赤ん坊の姿のまま成長できない、怪物のような少女の名前なのです。醜悪なルックス、ただれた皮膚、獣のように鋭い爪……そんな「タマミ」の住む館に、主人公である美少女・葉子が引き取られる場面から物語は始まります。生まれながらにして美しい葉子に、「タマミ」は激しく嫉妬。残虐な嫌がらせを繰り返し、精神的にも肉体的にも追い詰めていきます。執拗に、殺さない程度に……。そのインパクトは強烈で、当時の子供たちは震え上がったと言います。  とはいえ、原作は少女マンガ誌で連載されていたこともあり、多少はコミカルな要素が含まれていました。しかし、映画は違います。音と光のみで巧みに描かれた、見えないものに対する恐怖。そして、次々と襲いかかる「タマミ」の攻撃は、目をそらしてしまいたくなるほど凶悪で、冒頭からラストまで息つく暇もありません。けれども、この作品の神髄は、そのような残虐な行為にではなく、醜い姿に生まれてしまったが故の「タマミ」の悲しみにあります。たとえモンスターであっても、お姫様に憧れ、王子様に恋い焦がれ、オシャレにも興味津々な15歳の女の子なのです。
美少女・葉子におそいかかる「タマミ」。手だけが異常に発達しているのが特徴。
美少女・葉子におそいかかる「タマミ」。手だけが異常に発達しているのが特徴。
 実写版「赤んぼ少女」のメガホンを握ったのは、「地獄甲子園(原作:漫☆画太郎)」や「魁!!クロマティ高校THE★MOVIE(原作:野中英次)」など、同じく実写化が難しいだろう作品を世に送り出してきた個性派・山口雄大監督。2009年春に公開予定の「エリートヤンキー三郎」でも監督を務めています。また、2005年には「楳図かずお恐怖劇場『プレゼント』」で、すでに楳図作品の実写化を経験しており、評判も上々でした。その山口雄大監督が、実写化にあたっての最大の難関「タマミ」をどう描くのか。赤ん坊サイズで著しく醜悪、という要素はもちろんのこと、それが宙を舞い、高らかに笑い、高速で動き回るのです。監督の力量が問われるシーンの数々を、どのように表現しているのか注目したいところですね。  主人公の葉子役には、本作が初主演となる注目の新人・水沢奈子を起用。両親役には、9年ぶり映画出演となる野口五郎と、楳図ワールドにしっくりハマる(?)と評判の浅野温子を。他にも板尾創路、堀部圭亮といったクセのある役者が脇を固めています。  ホラーの季節にこっそりとやってきた、楳図ワールドの実写映画。今夏の暑気払いにいかがですか?(水流/mixiニューススタッフ)
夫婦役の野口五郎と浅野温子。腕に抱いているのは、我が子と思いこんでいる汚れたぬいぐるみ。
夫婦役の野口五郎と浅野温子。腕に抱いているのは、我が子と思いこんでいる汚れたぬいぐるみ。
物語の鍵を握る青年役には、「ミュージカル テニスの王子様」などに出演、若い女性を中心に人気を集める俳優・斎藤工を起用。
物語の鍵を握る青年役には、「ミュージカル テニスの王子様」などに出演、若い女性を中心に人気を集める俳優・斎藤工を起用。
■関連サイト 映画「赤ん坊少女」オフィシャルサイト:http://akanbo-movie.com/index.html ■映画詳細 「赤んぼ少女」(R-15) 監督:山口雄大 原作:楳図かずお「赤んぼ少女」 出演:水沢奈子、野口五郎、斎藤工、堀部圭亮、亜沙美、生田悦子、浅野温子、板尾創路 上映時間: 104分 制作:「赤んぼ少女」フィルムパートナーズ 配給:日活 2008年8月2日(土)より、シアターN渋谷、シネ・リーブル池袋ほか、全国順次公開 (※注1) 「週刊少女フレンド」連載時と、初の単行本のタイトルは「赤んぼ少女」。 次の単行本で、「のろいの館 『赤んぼう少女』 より」に改題される。 その後「楳図かずお恐怖劇場」や「恐怖劇場」シリーズ、角川ホラー文庫に収録する際に「赤んぼう少女」と表記されるようになり、現在に至る。 なお、映画は「赤んぼ少女」。
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