【コラム】　童貞脱ぐか守るか 「パンツの下」の性春ムービー

童貞（どうてい）：（1）男性が、まだ女性と肉体的交渉の経験をもっていないこと。また、その男性。（2）別名「D.T.」伝道師にみうらじゅんら。（3）30歳まで守ると、魔法使いになれる。

マンガ「鈴木先生」の武富健治が描いた「童貞。をプロデュース」ポスター

　童貞・ビフォア・アフター。性に目覚めた男子にとって、これほどの重大事もありますまい。寝ても覚めても考えるのはそのことばかり。そんなリビドー溢れる童貞に密着した、異色のドキュメンタリー映画があるのをご存じですか？　タイトルはズバリ「童貞。をプロデュース」（監督：松江哲明　2007年）。実在する2人の童貞の「非・童貞」への道程を追った、切なくも笑える性春ムービーです。 　生粋の童貞であり、「純愛を経ないエッチはしない」が信条の「童貞1号」こと加賀謙三（23歳）。そしてゴミ処理場で働きながら、80年代アイドルに時空を超えた愛を注ぐ「童貞2号」こと梅澤嘉朗（24歳）。カメラは、彼らのしょっぱい日常を追いながら、ありのままの童貞の姿（つまり、しばしば正視できない）を記録していきます。

自慢のグラビア・スクラップを見せびらかす童貞2号と、それを見つめる童貞1号

一度フラれた女子とデート。緊張のあまり、ハンドルを握ったまま嘔吐

　童貞を切り口に、「心のパンツ」を脱ぐキモチよさを描いた本作。2007年の公開当初は、都内でたった1館、レイトショーだったにも関わらず、異例のヒットを記録しました。残念ながらDVD化はされていませんが、今も時折劇場公開されているので、公式サイトをまめにチェックしてみて下さいね（現在は大阪で公開中）。 　■起立・礼・着席！　学校では教えてくれない童貞の授業 　上映を待てない、という人には、同じく松江監督が執筆した童貞本がオススメ。「童貞。をプロファイル」（二見書房）では、童貞界のカリスマ・峯田和伸（銀杏BOYZ）や大槻ケンヂらが、チェリー時代をセキララに語ります。定規で鍛えてみたり、皿に出した精子に食べ物を与えてみたり……珍なエピソードが満載です。

童貞マンガの傑作「チェリーボーイズ」の作者・古泉智浩が巻頭マンガを担当

　また、新作「童貞の教室」（理論社）では、23歳まで童貞だったという松江監督が、自身の暗黒時代を活字でドキュメント。「童貞とは『矛盾』という名の生き物である」「童貞の前途に『ふつう』という道はない」などの名言とともに、人生の課外授業がスタートします。 　早く捨てれば勝ち組なのか？　コンプレックスをもって語られることの多い童貞問題に、身を挺して踏み込んだこれらの作品。「結局映画だろ」「喪失できた奴に何がわかる」のひと言で片付けるなかれ。目を通せばわかるはずです。勘違い、嘘、失敗、後悔……誰もがその痛みを通過し、大人になったということが。穴があったら入れ、いや入りたい、そんな恥を積み重ねてこそ、達成できた時の「快感」も大きい、と松江監督は言います。限りある童貞を大切に……ビバ性春。（キキ／mixiニューススタッフ） 松江哲明：1977年生まれ、東京都立川市出身。1999年、日本映画学校の卒業制作で撮った「あんにょんキムチ」が国内外で高い評価を受ける。作品に「セキ☆ララ」、また映画「デトロイト・メタル・シティ」の現場に密着した「ドキュメント・メタル・シティ」など（撮影助手で、童貞2号こと梅澤嘉朗も参加）。公開待機作に「あんにょん由美香」「ライブテープ」がある。 ■画像提供：SPOTTED PRODUCTIONS、理論社 ■関連サイト 松江哲明ブログ：http://d.hatena.ne.jp/matsue/ 童貞。をプロデュース　公式サイト：http://www.spopro.net/virgin_wildsides/ 理論社「よりみちパン！セ」：http://www.rironsha.co.jp/special/series/main.html

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