物価高時代に、なぜ競合より「ちょい高」なコメダ・星乃が伸び続けているのか

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2024年06月22日 06:40  ITmedia ビジネスオンライン

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コメダと星乃、それぞれの強さを探る(出所:コメダ珈琲店公式Webサイト)

 コメダ珈琲店や星乃珈琲店など、高単価なカフェチェーンが勢いを増している。中京地域で伸びたコメダは近年、関東で店舗数を増やし、1000店舗超を展開。星乃も大都市圏の商業施設内や駅近辺の市街地に出店し、全国で約280店舗を展開している。


【画像】コメダの「シロノワール」「コメダブレンド」、星乃珈琲店の3つの看板コーヒー(全3枚)


 両者は昔ながらのフルサービス型喫茶店であり、店舗数でいえばそれぞれ業界3位と6位の規模だ。喫茶店市場が縮小し続ける中、なぜ拡大できたのか。その理由を探っていく。


●フルサービスながら成長を続けている


 席に着くと店員が注文を取り、コーヒーを運んでくれる――そんな昔ながらの喫茶店は年々減少し続けている。全日本コーヒー協会によると、喫茶店の数は1981年の15.4万店をピークとして減少に転じ、2001年は8.8万店、2021年は5.8万店である。ドトールコーヒーショップ(ドトール)やスターバックス コーヒー(スターバックス)などセルフ式チェーン店の台頭が主な理由だが、もともと食事の場としても機能していたため、ファミレスやファストフードなどの台頭も影響しているとされる。


 そんな厳しい市場環境において、フルサービス型喫茶店のコメダ・星乃の両者は店舗数を増やしてきた。1968年に開業した名古屋地盤のコメダ珈琲店は、ロードサイドで店舗を出店し続け、2003年に関東、2006年には関西に進出した。2013年に国内500店舗を達成し、コロナ禍でも拡大を続け、2024年2月末時点で1004店舗を展開する。


 一方の星乃珈琲店は比較的新しく、2007年の合併で誕生したドトール・日レスホールディングスが2011年に初出店した業態である。2014年度に100店舗を達成し、わずか3年後の2017年度に200店舗を超え、コロナ前の2020年2月期末時点で253店舗を展開していた。直近2年で拡大は落ち着いたが、2024年2月末時点で277店舗を展開している。主に関東や近畿、愛知の都市圏に出店し、都市部では施設内や駅チカの店舗が多い。冒頭の通りコメダは業界3位で星乃は6位、1位は約1900店舗のスターバックスで2位は約1000店舗のドトールである。


●店内の雰囲気に違いあり


 メニューの特徴を見てみよう。両者ともコーヒー1杯の価格はおよそ600円だ。なお、店舗によって価格帯が異なるためコメダは上野広小路店、星乃は同様に上野店を参照した。コメダでは「コメダブレンド」「アイスコーヒー」ともに600円であり、看板商品の「シロノワール」は790円。700円台のサンドイッチ類を提供するほか、ハンバーガーやスパゲッティなどの食事類も充実している。


 対する星乃では「星乃ブレンド」「彦星ブレンド」「織姫ブレンド」と看板商品のコーヒーが3種類あり、いずれも580円だ。スイーツやサンドイッチなど軽食も提供する。星乃は特に食事メニューに力を入れており、オムライスやドリア、カレーなどの飯類を単品800〜1000円で提供している。なお推定の客単価はコメダが800円、星乃は950円程度とされており、ドトールの客単価とされる400円弱と比較すると高い。


 店内の様子は両者とも広々としている。席同士の距離はセルフ型チェーンより離れており、椅子はソファーのようにやわらかい。違いを挙げるとすれば、星乃の方が店内が暗く、高級感のある印象だ。黒や濃い褐色を基調とし、昔ながらの喫茶店のような雰囲気がある。


 対するコメダは赤い椅子に木目のテーブル席がセットとなっており、全体的に明るい印象を受ける。また、コメダには電源やWi-Fiのサービスがあるのに対し、星乃にはこうしたサービスはない。星乃ではPCを操作する客をほとんど見かけず、勉強や作業をしている客もコメダより少ない印象だ。


●空間そのものへの評価が高い


 それぞれ、人気の秘訣はどこにあるのだろうか。口コミやSNSの投稿、各種アンケートの結果を参照すると「落ち着く」「雰囲気が良い」「リラックスできる」といった空間に対する高評価が多いことが分かる。


 コメダについて、スパコロ(東京都港区)が過去に実施した調査では、利用目的として「リラックス/息抜きの場として利用するため」(50.0%)が1位となっている。2位は「休憩時間に利用するため」(41.5%)であり、空間の雰囲気が評価されている結果である。同アンケートでは集団利用目的でも、他チェーンより選ばれていることが分かった。SNSでたびたび話題となるが、シロノワールのように“逆詐欺”のボリューム感もコメダの魅力とされる。


 星乃に関しても、落ち着く雰囲気や店内の快適さなど、空間の良さに関する口コミや評価が多い。やや暗い雰囲気が醸し出しているのか、高級感や全体的な品質の高さを評価する意見も見かける。店内もコメダより星乃の方が全体的に静かな印象だ。くつろいでいる一人客も多い。その他にも、口コミではコーヒーの味や香りに対する高評価も見かける。前述の通り星乃・彦星・織姫と3種類のブレンドを看板商品とし、ハンドドリップを訴求していることから、コーヒーに対するこだわりが消費者に評価されているのだろう。


 また、コメダ・星乃の両者は他のコーヒーチェーンよりシニア層の客が目立つ。広々として落ち着いた空間がシニア層に受けていると思われる。雑誌や新聞を置くコメダでは、これらのサービスを楽しむ男性のシニア層も多いという。ねとらぼ調査隊が60代女性を対象に実施した調査では「サービスが良いと思うコーヒーチェーン」として1位にコメダ、2位に星乃が選ばれ、3位のスターバックスを抑える結果となった。昔ながらのフルサービス方式も、シニア人気の一因かもしれない。


●そもそも決して「高い」わけではない


 コメダ・星乃の両者は空間に関して高評価を受けている。一方で業界1位のスターバックスもリラックスできる「サードプレイス」を提唱し、空間づくりに努めてきた。都市部を押さえ、コロナ禍ではロードサイドで攻勢をかけるなど、商業的には大きく成功している。一方で近年、スターバックスは満足度や顧客ロイヤリティの低下がしばしば話題となっている。店内の騒がしさや値上げに伴うコスパの低下などが要因のようだ。


 確かにスターバックスなどのセルフ式チェーンは、店舗によってBGMやPCの作業音、客の会話が騒がしいこともある。市街地やエキナカの店舗では席同士が近くて狭く、座り心地の悪い椅子が置いてある場合も多い。回転率を高めるためにあえてそうしているのだろうが、くつろげる空間とはほど遠い。


 既に述べたがコメダの推定客単価は800円、星乃は950円だ。対するスターバックスはドリンク1杯(トールサイズ)で概ね420〜700円、スナック類は300〜400円であり、ドリンクにスナック1品を付ければ1000円を超えることもある。また、ドトールの客単価は400円程度である。


 そう考えると、コメダ・星乃は極端に高いわけではない。普通のカフェに300〜500円追加すれば、雰囲気の良いサードプレイスでくつろげる。そのコスパの良さが人気につながったのではないだろうか。飲食業界で低価格チェーンの値上げが相次ぐ中、コメダ・星乃のような中価格帯業態が再び注目されている。土日の午後には30分以上の行列ができることもある両者だが、人気度はさらに高まっていくのかもしれない。


●著者プロフィール:山口伸


経済・テクノロジー・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。趣味は経済関係の本や決算書を読むこと。


このニュースに関するつぶやき

  • 両親はコメダを選ばない。聞いたらモーニングが高いし新聞や雑誌が少ないからみたい。愛知県の人間は意外とコメダに行かない人を(親を含めて)結構いる
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