将来「蚊」に血を吸われなくなる!?『吸血をやめる物質』を発見した研究者に聞く【ひるおび】

38

2024年06月25日 12:16  TBS NEWS DIG

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

TBS NEWS DIG

TBS NEWS DIG

この季節の厄介者、「蚊」に血を吸われなくなる未来がやってくるかもしれません。
6月20日、理化学研究所などの研究チームが、蚊がある成分に反応して吸血をやめることを発表しました。
約7年にわたる研究を発表した佐久間知佐子氏に詳しく聞きます。

【写真を見る】将来「蚊」に血を吸われなくなる!?『吸血をやめる物質』を発見した研究者に聞く【ひるおび】

蚊は吸う血を選んでいる!?

蚊は、ヒトやサルなどの体温や呼気(吐き出す息)などを感知して近づきます。しかし皮膚にとまったからといって全てを吸血するわけではありません。
皮膚の中に針(口吻)を出し入れし血管を探りあてて血液の味を吟味し、血を吸うかどうか決定しているのです。

血液には蚊の吸血を促進する物質「アデノシン三リン酸(ATP)」が含まれています。
蚊が血を吸い始めると、この吸血を促進するシグナルを受け取り続けることになります。
しかし蚊の立場からすると、「おいしい!」と思って長時間吸い続けていると、人間などに気づかれやすくなり、攻撃を受けるリスクが高くなります。

恵俊彰:
そうか。すばやく吸ってすばやく退散したほうが良いんだね。

理化学研究所 佐久間知佐子氏:
「アデノシン三リン酸(ATP)」が「おいしい」と思わせる物質なんですが、そのおいしさを変えるようなものが他にあると考えました。

蚊が吸血を終えるタイミングには、なにかあるのではないか。
佐久間氏らは、約7年の研究でそれを解明したのです。

蚊が“吸血をやめる”物質があった

蚊が血を吸う刺激で血液凝固が始まりますが、その過程で「フィブリノペプチドA(FPA)」という物質が作られます。
この「FPA」を蚊が体内に取り込むことによって、吸血をやめることが佐久間氏らの研究によって明らかになりました。
蚊は血液中の「FPA」の量をもとに吸血開始からのおおよその時間を測っている可能性があります。
すなわちこの仕組みがあることで、蚊はある程度時間が経てば“腹八分目”でも吸血をやめ、血を吸う相手に気付かれないようにしているというのです。

ーー「FPA」は人間の体の中にあるんですか?
理化学研究所 佐久間知佐子氏:
元々血液の中に含まれるものから、吸血が始まると作られるものです。
怪我をしたときなど、血管が傷つくと作られます。

ーー血を止めるので有名なのは血小板ですけど、それとは違うんですか?
理化学研究所 佐久間知佐子氏:
蚊は、針を刺したときに唾液も差し込みます。血液がサラサラでないと吸えませんので、血小板が集まることを防ぐ物質を入れています。
それとは別に、傷ついたときに血液が流れないようにする物質で、フィブリノーゲンというものがあり、そこからできるものです。

ーーそれがわかったとして、「吸われなくなる」ようになるんですか?
理化学研究所 佐久間知佐子氏:
FPAがあると食欲が減退する状態になりますので、この物質を無理やり蚊の中で作らせたら、吸血をやめてしまうと考えています。

ーー蚊の中で作らせる?
理化学研究所 佐久間知佐子氏:
まだ実現するかどうかわかりませんが考えている方法は二つありまして、外側から取り込ませる・食べさせる方法と、もしくは腸内細菌などを腸において、腸内細菌が常にこの物質を作るようにできればと考えています。

蚊が媒介する感染症対策にも

今回の研究は、「ネッタイシマカ」という蚊で行われています。
東南アジアに多く日本には生息していない蚊で、「デング熱」や「マラリア」などの危険な感染症も媒介する蚊です。

今後、研究により吸血を抑える手法を開発できれば、感染症対策になると期待されています。
また、蚊の体内で「FPA」を捉える分子などが詳しくわかれば蚊の吸血行動を止める物質の開発にも繋がっていくと考えられます。

理化学研究所 佐久間知佐子氏:
すぐにというわけにはいかないかもしれませんが、蚊が吸うことをやめることができましたら、病原体は蚊の針が私達の血管に入った瞬間に移されるものですので、それを防ぐことができると思っております。

ーー今回の研究はネッタイシマカで行われているということですが、全ての蚊でいえるんですか?
理化学研究所 佐久間知佐子氏:
試してみないとわからないところがありますが、ATP(吸血促進物質)に関しては全ての蚊が同じように使っています。ATPを感じて吸血を始める。
また、マラリアを媒介する「ハマダラカ」でも「FPA」が入っている血清を加えたときにATPによる吸血が抑制されたので、おそらく「ハマダラカ」でも同じようなことがあるのではないかと思います。

コメンテーター 山之内すず:
こんなに蚊がいろいろなことをしながら血を吸っているのも初めて知りましたし、かゆいのも嫌ですけど、それよりも伝染病がまず抑えられるのが何よりだと思うので、この研究は本当に今後が楽しみですね。

恵俊彰:
人間の最大の敵は「蚊」と言われてますからね。この研究は人類を救うことに直結しますもんね。

(ひるおび 2024年6月24日放送より)
==========
<プロフィール>
佐久間知佐子さん
理化学研究所上級研究員
分子生物学の観点から血の吸血や味覚の機能を研究
6月20日「蚊が吸血をやめる仕組み」を発表

このニュースに関するつぶやき

  • 恐ろしく目的が実現するまで道のりが遠い研究のような。 吸血回避できるまでのステップが少なからず三段論法的だし。
    • イイネ!2
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(26件)

前日のランキングへ

ニュース設定