“年金制度の健康診断”ともいわれ、公的年金の向こう100年間の見通しを示す、5年に一度の「財政検証」の結果が公表されました。これを受けて厚生労働省は納付期間の5年間延長について、今回の制度改正では見送ることを明らかにしました。
現在、サラリーマンの夫と専業主婦の妻という「モデル世帯」が受け取っている年金額は月額22万6000円で、現役世代の平均手取り収入に対する給付水準は61.2%です。
きょう公表された年金制度の「財政検証」では、4つのケースでの試算が示されました。
経済成長が過去30年と同程度のケースでは、2057年度に給付水準は50.4%まで下がり、その後は下げ止まると試算されました。政府が約束している現役世代の平均手取り収入と比較して、50%を下回らないという給付水準を辛うじて維持しています。
一方、経済成長率がマイナス0.7%、実質賃金が0.1%しか上昇しないという最も悲観的なケースでは、2059年度には給付水準は50.1%となり、国民年金の積立金を使いきってしまいます。
|
|
厚生労働省は、女性と高齢者の労働参加が進んだことや積立金の運用が非常に好調だったことから、「前回の検証と比べて大きく改善している」としています。
また、財政検証では、今後どのような制度改正が必要か検討するための「オプション試算」も行われ、国民年金の納付期間を40年から5年間延長した場合の試算も示されました。
それによりますと、5年間の延長により経済成長が過去30年と同程度のケースで、2057年度以降の給付水準は6.9%上昇するということです。
厚生労働省は、これらの結果を踏まえて納付期間の延長について、保険料の負担が増加することへの反発もあることから、今回の制度改正では見送ることを明言しました。