米大統領選が11月5日に迫る中、政治に対する関心が特に高いとされる10〜20代の「Z世代」の票の掘り起こしが結果を左右するとの見方が出ている。全米有数の学術都市圏を抱える激戦州の南部ノースカロライナ州では、民主、共和両陣営の若者票の争奪戦が激化している。
◇学生狙いてこ入れ
「『政治に興味がない』という友達にも声を掛けて。次の4年だけでなく、40年を決める選挙だ」。民主党の副大統領候補ウォルズ・ミネソタ州知事は10月24日、ノースカロライナ州ダーラムの名門デューク大で選挙集会を開き、こう呼び掛けた。会場は前夜に大学生が飾り付け、集会の様子はインスタグラムなどのSNSで瞬く間に拡散された。
選挙戦終盤で伸び悩みを指摘されている民主党のハリス副大統領は、10月半ばから激戦州の大学生に焦点を絞り、てこ入れを図っている。巨額の広告費をSNSに投じ、大学構内でパーティーなどを開催。ウォルズ氏の集会もその一環だ。
大学に通うアドビカ・アナンドさん(20)は集会後、大学構内にある期日前投票所でハリス氏に票を入れた。「大学では政治に関する会話が活発に行われている。集会は、誰になぜ投票するか積極的に考えるきっかけになった」と話す。
◇ポッドキャスト出演3時間
共和党のトランプ前大統領もこの世代への目配りを忘れていない。25日には若い男性に人気のポッドキャスト番組に出演。他の惑星に生命体が存在する可能性に言及するなど、政治にとどまらない幅広い話題を取り上げ、約3時間にわたり熱弁を振るった。
デューク大にも、10月に入り共和党の学生団体が発足した。立ち上げを主導したザンダー・ピトラスさん(20)は「若い有権者の多くは大学にいる。若者がトランプ氏の主張に触れ、理解できるようにする必要があった」と説明した。
ピトラスさんがインスタグラムで団体設立を発表すると、州や郡の共和党組織が相次いで支持と歓迎を伝えてきた。選挙戦最終盤に向けて活動を活発化させていくつもりだという。
◇際立つ高投票率
Z世代は1997年〜2012年に生まれた世代を指す。今年の大統領選のZ世代有権者は約4100万人に上る。
これまでの選挙では、戦後のどの世代よりも高い投票率を記録しており、NBCテレビの9月の世論調査によると、今回もZ世代有権者の88%が投票する意向を示した。ノースカロライナ州中央部では、デューク大などの主要大学が集積して学術都市圏を形成しており、Z世代の存在感はひときわ大きい。
若者世代は伝統的にリベラル寄りの民主党の支持層と目されてきた。しかし、ニューヨーク・タイムズ紙の9月の世論調査では、同州の18〜29歳のハリス氏に対する支持率は53%にとどまり、トランプ氏は45%と健闘を見せた。全年齢を対象にした支持率では、両氏はほぼ互角の接戦となっている。
デューク大のジョン・グリーン准教授(政治学)は「若い男性は以前ほどリベラルではなくなった一方、若い女性はよりリベラルになっている」と分析。トランプ氏は男性を中心にZ世代の切り崩しを図っている。
米デューク大構内で期日前投票を済ませたアドビカ・アナンドさん=24日、ノースカロライナ州ダーラム
米デューク大で共和党の学生団体を立ち上げたザンダー・ピトラスさん=25日、ノースカロライナ州ダーラム