【シリコンバレー時事】人工知能(AI)が、人間の代わりに仕事をする「AIエージェント」の時代が到来した。米オープンAIが公開した生成AI「チャットGPT」が、人間の意図に沿って文章を作る能力で世界に衝撃を与えてから2年弱。米顧客管理ソフトウエア大手セールスフォースや米マイクロソフト(MS)がこの領域に踏み込み、働き方に地殻変動を起こそうとしている。
◇AI、第3の波
「これがAIの第3の波、エージェントだ」。セールスフォースのベニオフ最高経営責任者(CEO)は9月に米カリフォルニア州で開いた年次開発者会議で語った。大量の過去データを基に需要や品質などを予測するAIは第1波、生成AIは第2波で、AIエージェントを次の潮流と位置付ける。
生成AIの開発が進み、文字、画像、音声とさまざまなデータを一括処理できるモデルが増えた。音声による応答速度も人間並みに向上し、これらの技術を結集したエージェントは、回答を示すだけでなく要望を実行する能力も備える。
セールスフォースやMSが提供するのは、エージェントの開発支援サービスだ。顧客企業が自ら収集してきたデータを取り込み、権限範囲を指定することで、事業内容に沿ったエージェントを短期間で開発できるようにする。
セールスフォースは開発者会議で、この製品を使った米高級百貨店チェーンのデモを披露した。エージェントが電話をとり、商品の配送状況を尋ねる質問に対し、配達日数を回答。店舗受け取りの選択肢も提示した。顧客役が店舗受け取りを選ぶと、従業員に伝えるとともに受け渡し可能となるまでの時間も示した。
◇反復作業を解消
従来の電話による自動応答システムでは、機械音声が選択肢を示し、利用者が該当する番号入力などをすることで、問い合わせ内容に応じて担当部署につなぐケースが多く見られた。生成AIを使えば、口頭で伝えるだけで済み、必要な手続きも進められるようになる。
AI半導体で圧倒的なシェアを握る米エヌビディアのフアンCEOは「エージェント同士が協力し、問題解決に当たるようになるだろう」と述べた。セールスフォースでAI開発を統括する「セールスフォースAI」のシャイCEOは「企業側のエージェントが、消費者側のエージェントと対話するようになる」と予想する。
セールスフォースの推計では、従業員の労働時間の4割が反復作業に充てられている。エージェントがこれを代替することで、従業員は複雑な注文や問い合わせに専念でき、顧客満足度の向上などサービスの価値を高めやすくなる。