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「紀州のドン・ファン」と呼ばれた和歌山県田辺市の資産家、野崎幸助さん(当時77歳)が急性覚醒剤中毒で死亡した事件で、殺人などの罪に問われた元妻の須藤早貴被告(28)は8日、和歌山地裁で始まった被告人質問で「覚醒剤は社長(野崎さん)から買ってきてくれないかと頼まれた」と述べた。
被告は9月の初公判で無罪を主張。弁護側は「そもそも野崎さんの死は事件なのか」と反論し、野崎さんが自ら覚醒剤を飲んだ可能性にも言及している。
被告人質問は計3日間予定され、この日は弁護側の質問に答える形で被告が一連の経緯を説明した。
被告によると、野崎さんとの結婚から2カ月後の2018年4月初旬ごろ、覚醒剤の購入を頼まれ、現金20万円を渡された。最初は冗談だと思って真に受けなかったが、野崎さんから「あれどうなったか」と催促されたため、インターネットの密売サイトで注文したという。
覚醒剤を巡っては、検察側は冒頭陳述で、被告が4月7日にネットで「覚醒剤 過剰摂取」と検索し、密売人から致死量の覚醒剤を入手したと指摘している。
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被告は覚醒剤入りとされる封筒を野崎さんに手渡したと法廷で説明したうえで、「社長には『あれは使い物にならん。偽物や。もうお前には頼まん』と言われた」と語った。これ以降、覚醒剤についてやり取りしたことはなかったという。
また、被告は野崎さんと結婚したいきさつについても明らかにした。知人から「お金持ちの男性を紹介してあげる」と声を掛けられ、野崎さんと知り合った。 野崎さん宅で初めて会った際に帯付きの100万円を渡され、「結婚してくださいと言われた。お金をくれるならラッキーだと思った」と説明。野崎さんから何度も結婚を求められたため、同居しないことなどを条件に結婚したという。
起訴状などによると、被告は18年5月24日、野崎さんに何らかの方法で致死量を超える覚醒剤を口から摂取させて殺害したとしている。被告の生活態度に不満を募らせていた野崎は離婚を切り出していた。
検察側は冒頭陳述で、被告が「莫大(ばくだい)な遺産を得るため、証拠を残さない完全犯罪を企てた」と強調。事件当時も自宅で2人きりだったとして「被告以外の犯行は考え難い」と主張する。
目撃証言を含め被告の関与を裏付ける直接的な証拠がない中、検察側はこれまで計18回の公判で28人に及ぶ関係者の証人尋問を実施し、複数の状況証拠から立証を進めている。
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証人尋問では、野崎さんの複数の知人らが「野崎さんは死んだ愛犬のお別れ会を開く予定で自殺の兆候はなかった」などと証言している。【藤木俊治、安西李姫、駒木智一】
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