くら寿司は11月16日から、回転レーンでホールケーキなどを運ぶ新サービス「プレゼントシステム」を順次導入(一部の超大型店舗のみ)する。新サービス導入の背景には、物価高による節約意識から、外食を控える傾向が強まっていることが挙げられる。外食控えにより、特に地方店舗で客数が伸び悩んでいるという。
プレゼントシステムは、パレードのような音楽とともに、輝く装飾と中身が見えない抗菌寿司カバーに入った特別メニューが、回転レーンを流れるもの。特別メニューの隣にはパネルを設置し、注文者のテーブルに近づくと「おめでとう」「ありがとう」のいずれかのメッセージが表示される。注文者のテーブルに到着すると「注目!」という音声とともに、カバーのフタが自動で開く仕組みだ。
プレゼントシステム専用の特別メニューは、「季節のフルーツケーキ」「特撰ばらちらし」(各1000円)、「季節のフルーツプリンアラモード」(800円)の3種類。季節のフルーツケーキには、いちご、バナナ、オレンジ、キウイ、シロップ漬けマンゴーをトッピングし、北海道産加糖練乳入りのホイップクリームでデコレーションした。
季節のフルーツプリンアラモードは店内手作りで、プリンは卵黄のみを使用している。いちご、バナナ、オレンジ、キウイ、シロップ漬けマンゴーとともに、丸みのある透明のグラスに盛り付けた。
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特撰ばらちらしは、まぐろ、かに身、こはだ、アナゴ、車エビ、ホタテ、生サーモン、うに、味付きイクラといった海鮮を使用している。岡本浩之氏(取締役広報宣伝・IR本部長)は「寿司屋らしい本格的なちらし寿司に仕上げた」と説明する。
いずれの特別メニューも事前予約は不要で、テーブルのタッチパネルかスマートフォンからその場で注文可能。スマートフォンで注文すれば相手に知られず、サプライズな演出もできるという。「記念日や誕生日に加え、普段のちょっとしたお祝いなど、さまざまな場面に対応できるラインアップをそろえ、価格も800〜1000円に抑えた」(岡本氏)
●リアルに回る回転寿司は“絶滅の危機”
物価上昇からくる節約志向で、外食産業は苦戦を強いられている。リクルートの調査によると、物価上昇の影響で約50%が節約を意識。そのうち、77.3%が「外食の回数を減らす」と回答した。
くら寿司の業績は、主に都心部でのインバウンド特需もあり、売り上げ、客単価ともに年間決算では昨年越えの見通しだ。しかし、インバウンドの恩恵を受けにくい地方の店舗は客数が伸び悩んでおり、顧客を取り込める新施策を必要としていた。そこでくら寿司が着目したのが、お客が「どういう場面で寿司を食べるか」だった。
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ぐるなびの調査によると、ハレの日のお祝いで外食したいメニュー1位に寿司がランクイン。また回答者の約半数が3カ月に1回は、ハレの日のための外食をしていることが分かった。「そこで、弊社の強みである『回転レーンで“リアルに回す”』ことと、ハレの日需要を組み合わせた新サービスとして、プレゼントシステムを導入することにしました」(岡本氏)
くら寿司は、寿司を新鮮かつ安全に回転させるため、抗菌寿司カバー「鮮度くん」を2011年から設置。2023年にはレーンを回る寿司皿の不審な動きをAIカメラで検知する「AIカメラシステム」も導入し、安心・安全をアピールしてきた。
岡本氏は「リアルに回すことは回転寿司の存在意義」と力説。「コロナ禍や不適切動画の影響から、今やリアルに回る回転寿司は絶滅の危機にある」としたものの、リアルに回す点を強化することで差別化を図り、さらなる顧客獲得を狙う。
プレゼントシステムはまず、土日祝の限定メニューとして開始。東京は7店舗、大阪は3店舗の計10店舗に導入し、2025年春には全国展開を目指す。くら寿司のパレードのような新サービスは、お客を店舗に呼び込む起爆剤になるか。
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