読み解くカギは"ちぐはぐインフレ対策"と"化石燃料への回帰"! トランプ復活で結局、日本経済はどーなるの!?

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2024年11月22日 06:10  週プレNEWS

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円安は続く? 日経平均は上がる? 景気や物価への影響は? 資産防衛策は?

まさかのトランプ返り咲き! 前回以上に好き放題やりそうだけど、知りたいのは日本の経済にとってトクなのか、ソンなのかだ。当選後の株価や為替の動きを踏まえて専門家に予測してもらった!

* * *

■インフレを加速させる政策ばかり

トランプが掲げる経済政策をおさらいすると、「インフレの退治」「減税」「関税の引き上げ」「金利の引き下げ」などが挙げられる。

これらの政策を「ちぐはぐだ」と評するのは、ストラテジストのカツキタロウ氏だ。

「アメリカは9月の消費者物価指数が前年同月比で2.4%上昇し、国民の生活を苦しめています。

ところが彼の政策は、いずれもインフレを加速させます。減税すれば消費が旺盛になりますから物価が上がる。また、追加関税を導入すれば、これまで安価で買えた輸入品が割高になります。

さらにトランプは不法移民の取り締まりを強化しようとしていますが、移民の数が減れば安価な労働力が減りますから人手不足が深刻化しますよね。いずれも物価を押し上げる方向に働くわけです」

一般に、米国がインフレになるとドル高につながりやすいといわれる。メカニズムはこうだ。アメリカの中央銀行であるFRBはインフレ率を抑えるために金利を上げる。金利を上げると人々はお金を借りなくなるから、景気を冷やし物価を下げる効果があるのだ。

そして金利が高くなったドルは金利の低い他国通貨より魅力的なため、ドルが買われる。よってインフレがドル高につながるわけだ。

ところがトランプが目指すのはドル安である。

「これまでもトランプは、自国通貨が高いことで貿易赤字を抱えていることに不満を表明していました」

つまり、トランプが目指していることとやっていることは噛み合っていないのだ。このあたりが先を見通す上で難しい点で、トランプ当選前の専門家の為替予想は「ドル高円安」と「ドル安円高」、真っぷたつに割れていた。

■米中対立は悪化しない

では、今後注目すべきポイントは何か。重要なのは、公約がどの順番で実現するかだ。カツキ氏は対中関税の引き上げが最も現実的だとみる。

「ほかの政策は実現までに議会を通すなど、さまざまな障壁が存在するのに対し、関税の引き上げは大統領令を出すだけで簡単に実現できてしまうんですね。中国への経済制裁はすぐに手をつける可能性が高そうです」

となると、対中関係は冷え込むのだろうか。経済学者の飯田泰之氏はこう解説する。

「民主党はウイグル、台湾、チベットなどの人権、領土問題を中国との争点にしていましたが、これは交渉の余地がほとんどありません。一方、トランプの対中要求は経済問題が中心です。

経済ならば中国も譲る余地があります。経済交渉で譲歩して支持率が落ちることを気にする必要はないですから。結局、トランプは中国に対して言葉がただ強いだけで、態度は強硬ではない。米中対立は改善も悪化もしないでしょう。

とはいえ、中国を安全保障上の脅威ととらえることには変わりない。西側諸国で閉じたサプライチェーンの構築は加速するはずです」

飯田氏は、エネルギー政策が今後のカギを握るとみる。

「トランプは化石燃料への回帰を主張しています。バイデン政権で導入された石油・ガスの開発規制を撤廃すればエネルギー価格は下がりますから、物価高を抑えられます。これがインフレ抑制とほかの政策を同時に達成する唯一の道でしょう。

ただし、エネルギー価格が落ち着くにはタイムラグがありますから間に合わない可能性が高いです」

では、日本経済への影響を見ていこう。

■円安基調で物価高が続く

よほどうまくやらない限り、アメリカはこれからインフレに見舞われるはずだ。すると先ほど説明したとおり、為替はドル高円安に動くことになる。

「実際、トランプの優勢が伝えられた段階で、ドル高円安に振れました。この傾向はしばらく持続すると思います」(カツキ氏)

でも、トランプはドル安にしたいのでは?

「それはそうなのですが、ドル高を食い止めるための具体策は特に打ち出せていないんです。ほかに優先すべき政治課題もありますから、しばらくは円安が放置されると思います」

ということは、日本にとっては輸入物価が高止まりすることになる。

「日本の物価については、トランプ復活は負の影響が大きいのではないでしょうか。となれば日銀は12月での利上げを真剣に検討せざるをえなくなる。そうなると穏やかに回復基調をたどっている国内景気を腰折れさせかねないため、非常に心配です」

カツキ氏のシナリオに同意した上で、飯田氏はチャンスを見いだしている。

「米国が化石燃料に回帰するタイミングで、世界的に再エネシフトが少し減速すると思います。その波に日本も乗れれば、物価上昇は抑えられるはず。現状、日本にとって再エネのコストはバカにならないですからね。

ただ、石破首相は脱原発を掲げてきた。そのあたりがトランプと噛み合っていないように思えます」

ところで、西側諸国で完結したサプライチェーンを築くということは、熊本のTSMCの例のように、日本に製造拠点を移す企業が現れるということだ。となれば、国内の雇用も増えないだろうか?

「可能性はありますが、ハードルは思いのほか高いです。まず、就労人数の確保。製造業は地方に生産拠点をつくることになりますが、日本は人口が東京一極集中となって久しい。さらに、電力の安定供給の問題もある。問題は山積しています。

唯一の救いは、石破首相は目玉政策として地方創生を掲げていること。ぜひともチャンスに変えてほしいですね」

■株より米国債や金を買え!

続いては企業業績について。円安は製造業をはじめとする輸出企業に追い風となるが、今後はどうなる?

「トランプはすべての国に対して10〜20%の関税引き上げを公約として掲げています。アメリカ人にとっては日本企業の商品が最低でも10%高くなるようなものですから、売り上げは落ち、利幅も圧迫されます。そのため、これまでのような恩恵を得るのは難しいと思います」(カツキ氏)

株価は?

「日本の株価は米国の株価に連動しているので、まずは米国株を見てみましょう。

2016年の大統領選では、トランプが当選したら株価が下がるといわれていました。ところがふたを開けてみると、株価は上がった。こうした背景もあって、今回は再選が決まる前からすでに上昇が織り込まれています」

トランプの当選確実が報じられた11月6日には、米国の代表的な株価指数であるS&P500が急騰。それにつられる形で、日経平均株価も一時1100円上昇した。

「この傾向はしばらく続くでしょうから、これに連動して日本株も上昇するはずです。ただ、先に説明したとおり、関税が引き上げられれば円安の恩恵が従来に比べて薄れる点には注意が必要ですね。

また、米国株は現状、かなり割高な水準です。S&P500の予想PER(株価収益率。数値が大きければ大きいほど割高)は過去平均で15倍前後ですが、足元は20倍を超えており、ITバブル前後に近い水準です。どこかで一度大きく下落し、そのあおりを受けて日本株も下落する局面が来るでしょう」 

株はダメ。景気もこれから悪化する可能性がある。そんな中、自分の資産を守るにはどうすればいい?

「大きなリターンを狙えるわけではないですが、一番オススメなのは米国債です。例えば10年債券の利回りは約4.4%にも上ります。低リスクでお金を増やすなら、これが一番無難でしょう。

あとは金。今年に入ってからのパフォーマンスは目覚ましく、40%強のプラスと米国株を上回っています。インフレになれば金は買われますし、インフレを抑え込むためにFRBが利下げをしても、実は金にとってプラスになります。

利下げをすればドル安になりますから、相対的に金の魅力が増すわけですね。どっちのシナリオになっても勝率が高いという意味で、今後も手堅い資産であり続けるでしょう。

最後に、ビットコインも有力候補です。債券や金に比べると値動きが激しいのが難点ですが、トランプが推進派なこともあって、これからの上昇に期待が集まっています」

全体的に暗〜い予想となったが、その起点となったのは米国のインフレ。今後の動きにぜひ注目してほしい。

取材協力/日野秀規 写真/共同通信社

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