SNS上で注目を集めた投稿について、その背景をあらためて取材する「バズ投稿のウラ話」。今回は、2023年12月にX(Twitter)で話題になった、「自動返信だと思って企業の公式LINEアカウントにすごい文章を送ったら手動返信が来てしまった」話について、投稿者であるハチさんに話を伺いました。
●「返信が遅くなり申し訳ないです〜!!」
ハチさんが長文を送った相手は、日本のアパレルブランド「ha | za | ma(ハザマ)」の公式LINEアカウント。2023年末〜2024年初頭に行われた同ブランドのWeb即売会で販売される「美来永光のドレスローファー」のカラーで迷っていたハチさんは、自分用のメモのような形で“独り言”として長文を送信しました。
「聞いてアロエリーナ、ちょっと言いにくいんだけど 聞いてアロエリーナ 鉱石ローファーめっちゃ迷ってる。まず色。水色×白だったらハチワレとアナ雪の二大推し概念できるし、普段からホワイトのアイテム多いから馴染みやすいと思う でも、モノクロコーデもよくするから、白黒も合うと思う。クールな顔だから、ホントは可愛い系よりかっこいい系が似合うし。次にサイズ――(中略)――聞いてくれてありがとうアロエリーナ」
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質問というより、書きながら悩んでいる部分を自分の中で整理するようにつづられた文章で、「聞いてアロエリーナ」(※20年ほど前にマンナンライフから販売されていたこんにゃくゼリー「アロエリーナ」の有名なCMの歌)ネタからも、独り言のつもりだったことが分かります。
すると翌日、「折り返しが遅くなり申し訳ないです〜!!」と公式アカウントから返信が……! ハチさんが気になっているローファーの在庫状況や、独り言のなかで心配されていた値上がりなどについて、“中の人”が回答してくれたのでした。「聞いてアロエリーナ」には一切触れられていませんが、少しだけフランクに教えてくれているところから気遣いを感じて、じわじわくると同時に涙が出てきます。聞いてくれてありがとうアロエリーナ……。
返信が届いた直後、恥ずかしすぎて「マジで1分くらい動悸がしていた」というハチさん。この出来事にXでは「中の人やったことあるけど自動返事も手動返信もできるんだよね…」と注意を呼びかける声も寄せられています。なお、LINEヤフー for Businessの公式コラムによると、公式アカウントのLINEチャットは「まずは自動応答で返信しておき、手が空いたタイミングで手動返信するなどの対応が可能」とのことで、自動応答の場合でも切り替えて手動返信が行えるようです。
しかし同ポストが拡散された結果、ハザマのデザイナーである松井諒祐さんもX上で反応。LINEでのあたたかい返信が話題になったことで「おかげさまで公式LINEの登録が増え始めました」「鉱石ローファーのお問い合わせがかなり増えているので競争率が上がっている説があります…」とブランドにとってプラスな反響があったことを伝えています。
また後日談として、上記投稿から4日後、ハチさんは「hazamaからお靴が送られてきた。めちゃくちゃ欲しかった鉱石ローファー。今回のお礼に、とのこと。人生ってこんなことあるん??アロエリーナ歌ってただけなのに???」と、大好きなブランドからプレゼントが届いてびっくりしたことをポストしました。すごい展開……!
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このまさかの展開はどのようにして起こったのでしょうか。話を伺いました。
●「聞いてアロエリーナ」はこうして送信された
―― 「聞いてアロエリーナ」という懐かしのCMの出だしと、ものすごく悩んでいることが伝わる文章にほっこりしてしまいました……! あの文章を書いたきっかけを教えてください。
ハチさん: フォロワーさんにものすごくhazamaが好きな方がいて、以前から「すてきなブランドだな」と興味がありました。その方きっかけで2023年の年末にhazamaのWeb即売会で「美来永光のドレスローファー」(以下「鉱石ローファー」)が販売されることを知りました。踵が鉱石をイメージしたデザインになっていて、オーロラがキラキラ輝いていてとても惹かれたんです。
気がついたら、Xで毎日鉱石ローファーの着画を検索していました。他のことが手につかない日々が続いたので、そろそろ買うかどうか決めようと思ったのですが、どの色を買うか、サイズは合うのか、予算的に買えるかで頭を悩ませることに……。
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そんな折、hazamaが公式XでLINE登録のお知らせをしていました。hazama熱も上がっており、これから情報収集するのにちょうどいいと思い登録しました。そこで、モヤモヤする気持ちを整理しようと思い、公式LINEに文章を打ちました。Xに書くのは長過ぎるし、メールの下書きに書くと埋もれてしまいそうだし、何をどこにメモしたかすぐ忘れる私にとっては、hazamaの商品の悩みをhazamaのLINEに書くことがメモ代わりにちょうど良かったんです。
なぜ「聞いてアロエリーナ」の書き出しになったのかは自分でも分かりません(笑)。CM当時私は小学生で、よくテレビで流れていたのは覚えています。あと、昔「聞いてアロエリーナ。ちょっと言いにくいんだけど、聞いてアロエリーナ」の後に自分で好きな文章を打ってオリジナルを作れるFlash、というのがあって、たまにそれで遊んでいました。多分、それに無意識に影響されて書いたのかなと思います。
―― 手動で返信が届いたときの心境はいかがでしたか?
ハチさん: 時が止まりました(笑)何が起こったのか一瞬分からず、間違えて友達にLINEを送ってしまったのかと焦りました。
公式LINEの仕組みがよく分かっておらず、アロエリーナの文章を打ったときは、「このLINEは返信に対応してません」みたいな定型文が即リプで来るんだろうなと思っていたんですが、何も返信がありませんでした。
そこで、このLINEは特定のワードに反応する仕組みなのかなと思い、次の日「hazama 展示会 時期」と打ったら、3分後にまさかの「折り返しが遅れて申し訳ないです〜!」と明らかに定型文ではない返信が来てひっくり返りました。同時に、前の日打ったアロエリーナの文章も既読になっていたので「え……この一人遊びも見られてた……ってコト!?」と焦るやら恥ずかしいやらで……。
ただ、hazamaの社長でLINEの中の人をされている松井さんが、アロエリーナ構文で打った悩みにも真摯(しんし)にお答えくださったのが救いでした。「自動返信だと思い変な文章(アロエリーナ)を送ってしまいすみません!」と書いたら「あ、全然良いよw」とフランクに返してくださったのでほっとしました。
―― 投稿がバズった際の心境について教えてください。リプライで寄せられた反応で、印象に残っているものはありますか?
ハチさん: まさかあんなにバズるなんて思っておらず……。当時は、この恥ずかしい気持ちを昇華したくて、「仲の良いフォロワーさんたちに、笑い飛ばしてもらおう」くらいの軽い気持ちでスクショを投稿しました。すると、前述の松井さんがリポストして下さったのを皮切りに、瞬く間に拡散されていきました。
毎秒通知が鳴りやまず、「バスるってこういうことなんだ……」と初めての経験をしました。丸2日間は10秒に1度は通知が来る状態が続き、その後1週間ほども断続的に通知が鳴っていました。スマホの電池がすぐに無くなっていました。
リプライや引用RTなどでは、いろいろと勉強になる投稿が寄せられていました。特に印象に残っているのは「基本的にグレーバッジの公式LINEは手動返信であること」「グリーンバッジの公式LINEも、手動返信はしないがこちらが投稿したものは全て見られていること」という内容です。
昔、化粧品会社の公式LINEに彼氏との楽しかったデートの思い出を日記的に投稿したことを思い出し青ざめましたが、後の祭りです(笑)。
―― 投稿がバズった後にプレゼントとしてローファーが届いたことにも驚きました。その際の心境はいかがでしたか? また、もし現在購入を検討している同ブランドのアイテムがあれば教えてください。
ハチさん: 投稿があまりにバズったので、投稿の翌日hazama公式にLINEをしました。自分の投稿がバズったことを松井さんが喜んでくださったことのお礼、ご迷惑が掛かっていないかのお伺い、今後も応援させてほしい旨を書きました。
すると、松井さんから「今回の投稿がとても宣伝になっていて有難いので、よかったら鉱石ローファーをプレゼントさせてほしい」と返信が来ました。そんなことある!?!?!?!?!?とまたひっくり返りました。私にとっては、アロエリーナのバズよりもこちらの方が大事件でした。
「広告費としても、正直この規模になると安すぎるくらいなので、ささやかにはなるがよかったら検討してほしい」とこちらを気遣う文章まであり、松井さんのお人柄を感じました。くしくも12月24日。大人にもサンタさんって来るんだ……と思いました。
翌日には発送通知が来て、松井さんからプレゼントの申し出があった3日後には鉱石ローファーが我が家に届く運びとなりました。
欲しすぎて知恵熱出しそうになった憧れのローファーが来て、もうわあわあ言いながら写真を撮りました。特にヒールの鉱石部分がオーロラになっているんですが、見る角度によって色が変わるんです。すごく奇麗で、動画にも撮りました。写真で見るより、実物の方が何倍もすてきでした。普段、私が着るきっちりした系統のファッションにも、たまに着る甘めの服装にもどちらにも合っていました。ヒールが低くて歩きやすいので、近くのお出かけから遠出まで幅広く履いています。またエナメル製なので、多少の雨でも怖くないところがいいです。
hazamaは基本的に受注生産で、今は販売期間外なので買えるアイテムはないのですが、やはり一度はお手手ドレシュ(ヒールの部分が手になったドレスシューズのこと)を履いてみたいです……!
あと、前シーズンが魔女をテーマにしたコレクションだったのですが、そこで出ていた「咲く手あまたのマーメイドスカート」「咲く手あまたのブルゾンジャケット」がとってもすてきで……。受注期間には諦めてしまったのですが、今後Web即売会で在庫販売があれば挑戦したいです。
あと、11月28日からhazamaの2025SSの新作発表があるので、そこでどんなアイテムが出るのか今からワクワクしています。
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