11月22日、23時30分。3時間52分に及ぶベネズエラとの熱戦から40分近く経った頃、ミックスゾーンに現れた侍ジャパンの捕手・坂倉将吾(広島)はまず逆転勝利について聞かれると、「牧(秀悟/DeNA)さんに感謝です」と言って安堵の表情を見せた。
9対6。13安打を放った侍ジャパンは6回に6番・牧の逆転満塁弾など集中打で勝ち越せば、ベネズエラは試合序盤から粘り強い攻撃を仕掛けて11安打で6得点。第3回プレミア12のスーパーラウンド初戦をともに勝利して激突した日本とベネズエラは、得点の奪い合いを演じた。
【才木浩人が粘りの投球で5回2失点】
初回に3番・辰己涼介(楽天)、4番・森下翔太(阪神)の連打などで3点を先制した日本だが、2回にアンヘル・レイエスの2ランで1点差に迫られる。捕手の坂倉はこう振り返った。
「(2回の2失点は)フォアボールからでしたし、避けたい一発でした。打たれちゃったのは返ってこないのでしょうがないんですけど......防げたかなって思います」
初回に3奪三振を記録した日本の先発・才木浩人(阪神)だったが、2回は先頭打者に10球粘られて四球。つづくバッターはストレートを6球続けてフェンス際のレフトフライに打ち取ったものの、7番レイエスにストレートをバックスクリーン左へ運ばれた。
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試合序盤からベネズエラ打線がしぶとい攻撃を見せるのに対し、才木は決して本調子ではなかった。坂倉が続ける。
「前回(11月16日のチャイニーズタイペイ戦)より真っすぐが(指に)かかったり、かからなかったり、その差が激しいと思いました。本人にもそういう話をして、途中から変化球もしっかり入れながらやっていったら、徐々に真っすぐも良くなっていったかなっていう感じです」
才木は不安定な状態ながらも、3回からカーブ、スライダーをうまく織り交ぜて5回2失点にまとめる。そして6回から2番手の井上温大(巨人)につないだが、前日のアメリカ戦に続いて第二先発が捕まった。4番カルロス・ペレスに許した2ランを含め、この回に打たれた4安打のうち3本は甘く入ったスライダーを捉えられたものだった。再び坂倉が振り返る。
「(相手は)スライダーを待ってはないと思いますけど、うまく対応してきたなっていう感じです。もうちょっと伏線を張ったり、インサイドに真っすぐを使ってから(スライダーを)いけばよかったかなと。いろんな反省はあります」
甘い変化球を見逃さずに仕掛け、きっちり仕留めるあたりは、さすがオープニングラウンドでグループAを首位突破したベネズエラだった。
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【反撃のきっかけとなった坂倉将吾の一発】
6回表を終えて3対5。今大会で日本が6連勝を飾る原動力となってきた投手陣が捕まり、東京ドームに嫌な雰囲気が立ち込めるなか、反撃の狼煙(のろし)を上げたのは一死から打席に入った坂倉だった。
ベネズエラの3番手リアビス・ベレトが2ボールとしたあとの3球目、真ん中高めに来た149キロのツーシームをライトスタンドに運んだ。
「ボール先行だったんで、『ここで変化球はないだろう』っていう感じでいきました。たまたま、球に当たってくれてよかったです」
点を取られた直後、すぐに取り返せるのが今大会で見せている侍ジャパンの強さだ。バッティングカウントで、見事な坂倉の読みと思い切りだった。
つづく1番・桑原将志(DeNA)が倒れたあと、2番・小園海斗(広島)が四球、3番・辰己がレフト前安打、4番・森下が四球で満塁とし、5番・栗原陵矢(ソフトバンク)が押し出し四球を選んで1点差に。6番の牧は2球目、甘く入ったスライダーを振り抜くと、打球はレフトスタンドに飛び込む逆転満塁弾となった。
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試合後、井端弘和監督が称えたのは、この攻撃だった。
「坂倉選手のあとに2アウトから6人がつながったのは、このチームの特徴と言うか(※牧の本塁打のあと、7番・源田壮亮もレフト前安打)。今大会の戦い方のうえで、どんどん後ろにつないでいくのを2アウトからできました。明日以降もそうなってくれればいいなと思います」
連打が続くのは、データの少ない相手に対してファーストストライクから積極的に振りにいく姿勢に加え、際どいボール球に手を出さない「プレート・ディシプリン」の優秀さを備えるからこそだった。
日本は集中打でリードすると、7回のマウンドから鈴木昭汰(ロッテ)、清水達也(中日)、藤平尚真(楽天)とつなぎ、最終回には大勢(巨人)が1点奪われたものの逃げ切り。打ち合いを制し、決勝進出に向けて大きな勝利を飾った。
【指揮官が語るベネズエラの強さ】
だが、それでも印象づけられたのがベネズエラの手強さだった。井端監督が振り返る。
「予想していたとおりだったなと思います。なかなかアウトにならない、三振しないなというバッターがたくさんいました。ファウルを打つなかで才木投手のフォークボールをきっちり見逃していましたので、そのあたりはさすがだなと思いました。あとは特有の間。タイムをとったり......というのもありました。次にもし戦うことがあれば、そういうところも踏まえて気をつけていかなければと思っています」
ベネズエラ打線は追い込まれても粘り、才木は5回88球と球数を投げさせられた。今度は坂倉の印象だ。
「いい打線だなと思いますし、やっぱり東京ドームなのでね。一発もやっぱり警戒しなきゃいけないっていうところで、怖さはあるなっていう印象を受けました」
この日は、相手先発のリカルド・ピントが不調で1回もたずに降板。序盤から細かい継投になったが、ピントの状態がよければ違う展開になっていたかもしれない。
侍ジャパンは11月24日の決勝進出に向けて大きく前進したが、スーパーラウンドの最終順位は23日の2試合で決定される。連覇をかけてファイナルに臨むためにも、23日のチャイニーズタイペイ戦が重要な一戦になる。