アルゼンチン人ジャーナリストのフアン・バルスキー氏のインターネット番組『Clank!』は10日、ドーピング違反で2年間の出場停止処分を科されたアルゼンチン代表FW“パプ・ゴメス”ことアレハンドロ・ゴメスのインタビューを配信した。
現在36歳の“パプ・ゴメス”は、母国のアルセナルでデビューを飾り、複数のクラブでのプレーを経て2014年夏にアタランタに完全移籍し、クラブ史上初のチャンピオンズリーグ出場でベスト8入りなどクラブの躍進に大きく貢献。その後2021年1月にセビージャへと加入すると、2022−23シーズンのヨーロッパリーグ(EL)優勝を経験した。そして、2023−24シーズンにはモンツァに加わりセリエA復帰を果たしていた。
アルゼンチン代表の一員として、FIFAワールドカップカタール2022の優勝メンバーにもなった“パプ・ゴメス”だが、2022年10月に行われたドーピング検査で不合格だったことが判明。その結果、同選手は2023年10月20日にFIFA(国際サッカー連盟)から2年間のスポーツ活動の資格剥奪処分を通告され、モンツァとの契約が終了した現在は無所属の状態となっている。
そんな“パプ・ゴメス”は、ネット番組に出演し、「セビージャの選手として(2022−23シーズンのラ・リーガ第11節)レアル・マドリードとの試合を終えた夜、咳が止まらなくなり、息子が使っていた咳止めの薬を飲んだ。そして後日、練習で抜き打ちのドーピング検査の対象になった。そのとき、咳止めの薬を飲んだことを忘れていて、薬について申告しなかった。申告していれば、こんな問題にはならなかったと思う。そして、咳止めの薬に禁止されている成分が含まれていた」と、ドーピング検査で不合格となった経緯を説明した。
つづけて、「(同年12月に行われた)FIFAワールドカップカタール2022決勝2日前に、ドーピング検査で陽性だったことを知らせるEメールが届いた。冷水を浴びせられた気分だった。そして、そのEメールを受信してから決勝までの間で体調が悪くなり熱が出た。ドーピング検査の知らせが影響したのか分からないけど、免疫力が落ち、後ろ向きになっていた。表面的には決勝進出を祝っていながら、頭の中では『これから何が起こるのだろうか』と心配していたんだ」と、ワールドカップ決勝直前に悪い知らせを受けたことで、心身のコンディションを落としたことを明かした。
そして、「ドーピング検査について、アルゼンチン代表の仲間に言いたくなかった。なぜなら、彼らにはワールドカップ決勝以外のことを考えて欲しくなかったから。自分のことを伝えるのはエゴイストだと思った。そして決勝の後、ドーピング検査についてチームメイトたちに話したら、彼らは自分が孤立したいような雰囲気だったと言った。それは自分が病気だったので、仲間に感染して欲しくなかったからでもあるんだ」と、代表のチームメイトに結果を伝えた際のやり取りを振り返った。
その上で、「自分は“パプ・ゴメス”というキャラクターが終了し、存在しなくなったこと。そして、普通の人間、家族を持つ人間であることを受け入れようと試みている。自分のエゴをオフにできるように取り組み、(本名の)アレハンドロとして生きようとしている。自分は世界チャンピオンだったのに、今では誰も自分に電話をかけてくれなくなり、メディアから姿を消し、プレーできなくなった。そんな状態で生きる術を学ばないといけない」と、ドーピング違反を境に自身が置かれた状況が変わったと話した。
なお、“パプ・ゴメス”は今月、イタリア・セリエC(3部リーグ)のチームに合流。出場停止処分のため2025年10月まで公式戦には出場できないが、「プロのキャリアを開始した頃のような気持ちでトレーニングしている」とサッカーがプレーできる喜びを語った。
【ゴール動画】アタランタ在籍時に決めたパプ・ゴメスのスーパーゴール