※この記事は、菅原由一氏の著書『タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ』(KADOKAWA、2024年)に、編集を加えて転載したものです(無断転載禁止)。なお、文中の内容・肩書などは全て出版当時のものです。
集客や収益が安定したサステナブルな経営がしたい。そう考える人にはスナック経営が参考になるかもしれません。
スナックはお酒を提供する店ですから、その点では居酒屋と同じです。また、ママやチーママと呼ばれる女性スタッフが接客しますから、キャバクラやガールズバーとの共通項もあります。
ただし、いくつかの特徴があり、その特徴を生かすことで市場内での差別化を図っています。
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規模の点から見ると、スナックは居酒屋やキャバクラなどと比べて小規模で省スペースです。また居酒屋やキャバクラが繁華街に多く出店しているのに対し、スナックは少し離れた場所にあることが多く、住宅街の端に店を構えているケースもあります。
このような違いから、スナックは開店コストも、家賃など運営にかかるコストも安く収まります。店の運営コストはほぼ固定で出ていくお金ですから、安くすることがサステナブルな経営に結び付きます。
●1対nだから人件費が安い
業態の点からみても、コストの強みがあります。居酒屋と比較すると、居酒屋は料理メニューが豊富で、その分だけコストが発生します。
一方のスナックは、スナック(軽食)を提供するスナックバーが語源で、料理のメニューが限定的であるためコストが低くなります。
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キャバクラは高コストです。キャバクラは女性スタッフがお客さんの隣に座って1対1に近い形で接客をするため、きれいな女性を何人も雇う必要があります。また、店内をきらびやかに装飾する必要もあり、これらがコストを押し上げます。
一方のスナックは、ママやチーママがカウンター越しに会話する1対n(複数)形態の店が多く、人件費が低くなります。運営コストが低ければ価格設定も低くできます。また、小規模な店は落ち着いて飲めますし、ママなどとの距離も近くなります。
お客さん側から見ると、スナックは安く、落ち着いて飲めることが長所で、それが他の飲食店との差別化要因になっています。
細かな話ですが、キャバクラやクラブなどのような接待を行う店は風俗営業、接待を行わずにカウンター越しに話すだけの店は深夜酒類提供飲食店営業となり、それぞれ必要な許可が異なります。
スナックの場合も、お客さんと一緒のテーブルについたり、デュエットしたりする場合は風俗営業の扱いになります。
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●ストレスフリーの場が必要
お客さん側のニーズをもう少し深く掘り下げると、スナックはお客さんたちの「サードプレース」になっているといえます。サードプレースは、居心地がよく、ストレス、重圧、責任感などから解放される「第3の場所」を意味する言葉です。
第1の場所であるファーストプレースは家です。第2の場所であるセカンドプレースは職場や学校です。
多くの人は日常的にこの2カ所を行き来していますが、それだけでは息が詰まります。
サードプレースという概念を提唱したレイ・オルデンバーグという米国の社会学者によれば、現代社会においてはサードプレースを持つことが人生の満足度を高めることにつながります。
会社帰りにふらっと寄ることができ、財布に負担をかけずに息抜きできるスナックは、まさにサードプレースの条件を満たしている店といえるでしょう。
サードプレースのポイントは「ゆるくて良い」ことです。自宅や職場はきれいにしておきたいですが、サードプレースは雑多で構いません。
緊張感から解放されるという点では、むしろ雑多であることが大事です。多少、汚くても問題なく、狭くても構いません。美人ぞろいで料金が高いキャバクラは緊張感が生まれますが、スナックはリラックスして飲むことができます。
その点でもスナックはサードプレースにピッタリで、そのゆるい雰囲気がリピーターを引き付ける重要なポイントになっています。
●著者プロフィール:菅原由一(すがわら・ゆういち)
SMG税理士事務所・代表税理士。現在は、東京・名古屋・大阪・三重に拠点を置き、中小企業の財務コンサルタントとして活躍。YouTubeチャンネル『脱・税理士スガワラくん』は登録者数80万人を突破し、TV、専門誌、新聞、各メディアで取り上げられ注目を集めている。
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