ソーシャルメディアのX(旧Twitter)の“治安悪化”が、問題になっている。
今年10月に発表された、「ブロック機能」の仕様変更にも不満の声が集まった。これまでは誰かをブロックすれば、自分の投稿を見られずに済んだ。ところがこの変更により、公開ポストの場合はブロックした相手からも投稿を閲覧されるようになってしまったのだ。
イーロン・マスク氏が2022年に米ツイッター社を買収、翌年7月に名称をXに変更して以降、“治安悪化”とも言える状況が目立つX。バズった投稿をそのままパクっての再投稿や、文脈を無視してトレンドワードを入れまくるなどの投稿をして、インプレッション(表示回数)を稼いで収益を得ようとする“インプゾンビ”の大量発生にも、ユーザーから様々な不満が寄せられている。
そんな中、最近ではXの「広告」に関する不満が相次いでいる。
◆見るに耐えない、いかがわしい広告が表示されまくる
とりわけ、目撃情報が多く寄せられているのはポルノ関連の広告だ。動画などのポルノコンテンツの販売を促すもので、投稿内容には「授乳」「ハメ撮り」といった露骨なワードが記されている。さらには、モザイクが一面にかかっているものの“いかにも性行為中”であることがわかる動画が添付されているものも珍しくない。
中には「普段は大人しいけど……実はドスケベです」といった趣旨の文言と一緒に、清楚風な写真と“行為中”の顔のアップ写真の2枚を添付し、ギャップを演出して購買欲を駆り立てる“工夫”がされたものも散見される。
Xの「禁止されるコンテンツに関するポリシー」内の「成人向けの性的なコンテンツ」の項目を見ると、「わいせつな画像またはポルノ画像」「完全または部分的な裸体」などが禁止コンテンツとして挙げられている。
◆Xで禁止されている性的コンテンツの内容は
【禁止されている成人向けの性的なコンテンツの例】(「X ビジネス」より抜粋)
わいせつな画像またはポルノ画像(ウェブサイト、雑誌、ゲームなどが含まれますが、これらに限定されません)websites, magazines
完全または部分的な裸体
男性器増大関連の商品とサービスおよび豊胸サービス
性的なモデル着用の衣服
性的な玩具
ホストクラブやホステスクラブ(キャバクラ)
性的な出会いや不倫を斡旋している出会い系サービスおよびマッチングサービス
デートの見返りに金銭、商品またはサービスのやり取りが発生する出会い系サービスおよびマッチングサービス
カタログスタイルの出会い系サービスおよび/または結婚仲介サービス
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先述した投稿内には卑語がずらりと並んでいるが、裸体がハッキリと確認できるわけではない。動画も一面にモザイクがかかっているため、一応“配慮”がされているとみなされるのだろうか。それでも、ワンクリックでポルノに触れる現状はどう考えても適切とは言い難い。
◆明らかな規約違反の広告たち。未成年者にも悪影響
また、豊胸手術に関する広告も見られた。同じく禁止されている成人向けの性的なコンテンツ中には、「男性器増大関連の商品とサービスおよび豊胸サービス」と書かれており、こちらはグレーゾーンではなくハッキリ規約に違反していると言える。
こうした規約違反の広告は枚挙にいとまがない。「18歳未満または未成年者に禁止されているコンテンツ」内に「電子タバコを含むタバコ商品とタバコ用品」と書かれており、それらには「X全体で広告が禁じられていますのでご注意ください」とも追記もされていた。だが、X上では電子タバコの広告をよく目にするのはなぜだろう。
当然こういった広告には多くの批判が寄せられており、現状を放置しているX、ひいてはイーロン・マスク氏の“怠慢”を指摘する人も少なくない。とりわけ、Xを開くだけで常に“エロ広告”と隣り合わせの状況は、未成年者の健全な成長を著しく妨げる恐れがあるため、エロ広告の早急な規制を望む声が目立つ。
◆エロ広告の放置は「課金してほしいから」なのか
X上の不適切な広告に対しては「広告を報告」という“通報機能”が存在する。ただ、どこが不適切だったのかを入力して報告を終えても、それで終了ではない。通報したユーザーへ、「プレミアムプラスですべての広告をなくす」という文言と一緒に、有料会員へのアップグレードを促してくるのだ。
これでは「不快な広告を見たくないのなら課金しろ」と言っているに等しい。不適切な広告を掲載していることはプラットフォーム側の問題であるにもかかわらず、その原因を無課金であるユーザー側に責任転嫁しているようにも感じる。
また、冒頭でインプゾンビについて触れたが、Xはインプゾンビ対策には後ろ向きな印象だ。収益を得るためには有料会員になる必要があるため、言ってしまえばインプゾンビそれ自体が増えるほうがXとしては喜ばしいことを意味する。だからなのか、インプゾンビに不満を持つユーザーが後が絶たないものの、適切な対応には踏み切っていない。
インプゾンビの件から察するに、Xは有料会員を増やすことしか考えていないのだろう。不適切な広告を放置することは、有料会員を増やすための“営業努力”なのかもしれない。収益増加のために活動することは企業としては当然ではあるが、それでも誰もが不快な広告を目に入ってしまう現環境は看過できない。
◆Xの見解は? Xに疑問点を問い合わせてみると……
Xのポリシーに違反していると思われる広告が多数掲載されているが、X社の広告に関する掲載基準はどうなっているのか。X社に「ポリシーに違反している広告が掲載されている現状は把握しているのか」「ポルノ広告についてはポリシー違反ではないという考えなのか」「今後は不適切な広告に対してどのように対応していく予定なのか」など複数の疑問点について問い合わせたが、期日までに回答はなかった。
「禁止されるコンテンツに関するポリシー」を堂々と掲げていながらも、その通りに運営できていないX。インプゾンビ対策やブロックの仕様変更などでも、ユーザーが求める対応にはことごとく消極的な姿勢を見せており、不適切な広告に対してもふさわしいアクションを見せる可能性は低い。
とはいえ、Xは多くの人が日常的に使用するいわばインフラだ。そのインフラが適切な運用をされていないのであれば、ユーザーが声を上げ続ける以外に選択肢はないのかもしれない。
<文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki