こんにちは。これまで1000人以上の男女の相談に乗ってきた、恋愛・婚活コンサルタントの菊乃です。髪もボサボサで化粧もしない“完全なる非モテ”から脱出した経験を活かし、多くの方々の「もったいない」をご指摘してきました。誰も言ってくれない「恋愛に役立つリアルな情報」をお伝えします。
皆さんは“婚活に苦戦する女性”というとどんな人を思い浮かべるでしょうか。「高望みする女性」「年齢が高く条件面で不利な女性」――こういった人を想像されるのではないでしょうか。
近年、マッチングアプリなどの敷居が低く間口の広い婚活・恋活サービスが一般化し、マッチングサービス利用の年齢が低下しています。その結果、年齢が若く、過度な高望みもしていないのに、婚活で躓(つまづ)いて何年も婚活してしまう方が増えています。
◆清楚なワンピースを着て婚活していたクリエイター
24歳という若さで婚活を開始した女性、美咲さん(仮名・現在30歳)もそのひとりです。
以前私のところへご相談にきた美咲さんから最近、「結婚しました」というご連絡をいただきました。美咲さんは24歳で婚活を開始し、様々な婚活サービスを利用するもうまくいかず、6年間も婚活をしていたのです。
都内某所で久々に美咲さんに再会しましたが、一瞬誰だか分かりませんでした。最初に相談に来た去年の美咲さんは、結婚相談所を休会中でした。当時はウエストリボンのパステルカラーワンピースを着て、パールアクセサリーを身につけた、大人しそうな女性でした。
ところが今回やってきたのは、デザイナーというお仕事を聞いて納得しかないような鮮やかなグリーンのシャツを着て、シルバーのドロップ型ピアスがお似合いのかっこいい系の女性だったのです。
◆自分を曲げて“婚活女子の型”にはまろうとしていた
美咲さんには相談当時まで、一度も男性とお付き合いの経験がありませんでした。結婚相談所から推奨された服を「婚活だからそういうものだろう」と思って着ていたそうです。婚活業界で推奨されるコーディネイトを取り入れ、“推奨される婚活女子の型”にはまろうとしていたのです。
美咲さんは、取材のために丁寧にメモをしてきてくれました。このように、非常に真面目で勤勉な女性なのです。そんな彼女が、6年間も婚活に費やすことになったのはなぜなのでしょうか。
場の空気を読み、周りの期待に応えようとする美咲さん。婚活でも“型”に当てはまるよう擬態をしていたのですが、頑張れば頑張るほど自分を見失って迷走してしまいます。
そもそもなぜ、彼女にはお付き合い経験がなかったのでしょうか。
◆女性ばかりで出会いがない環境、そして母親は過干渉
実は、美咲さんは中学時代にクラスの男子からいじめられる経験をして男性が苦手になりました。部活は吹奏楽部で、男子部員も少なく男性と会話することはあまりありませんでした。
女子高に進学して、男性との接点はさらになくなります。絵を描くことが得意だった美咲さんは美術に打ち込み、美大に進学します。大学は共学でしたが美咲さんの学部は圧倒的に女性が多く、男子学生はすでに彼女がいるか、女性が恋愛対象でない男性や恋愛に一切興味がない男性、または尖りすぎている癖が強い人、のいずれかに分類されたそうです。
他大学とのコンパもなく、周りでも彼氏がいる女性はごく少数派でした。彼氏が欲しいとは思ったものの、具体的に何か行動をすることはありませんでした。
美咲さんには別の事情もありました。お母さんが過干渉気味で、大学生になっても友達との外泊を禁止するような方なのです。彼氏どころか、男友達を作るのも難しい学生時代を過ごしました。
◆男性は多いけど……職場恋愛が「まったく望めなかった」理由
大学卒業後に、アプリの企画運営をしているIT企業にデザイナーとして就職します。美咲さんは秋採用でした。同期は男性も多かったのですが、美咲さんが内定した時にはすでに夏採用組内でグループやカップルが生まれていてその輪に入りにくかったそうです。
職場はエンジニアが多く約7割が男性ですが、美咲さんの部署は女性率が高く未婚率も高かったとか。美咲さんによると男性社員はチェックのシャツやジャストサイズのパーカーを着たオタク系タイプと、毛先がツンツンしていてドクロや十字架モチーフを好み、腰にウォレットチェーンを付けているタイプに二分されるそうです。
「外見はそこまで重要ではないんです。ただ、内面的なところで、合う人がいません。
職場にはオタク男性が多いのですが、例えば私が『刀剣乱舞が好き』と言ったら、『知らない』『何が面白いか分からない』と言われて、そこで会話が終了してしまいます。自分が好きなもの以外、会話を受け付けない人が多いのです。
また50代で独身の男性がいるのですが、『俺は20代女性との結婚をあきらめていない』と職場で公言したり、30歳の女性社員に対して『若さしか取り柄がないんだから早く結婚した方がいいよ』と言ったりしているんです。こんな状況なので、職場恋愛はないなと思いました」
◆婚活で、カップリング成立した男性からブチ切れられた
そうして彼氏がいたことがないまま24歳になります。そのころ、友達の中にも結婚する人やマッチングアプリに登録する人がちらほら現れはじめます。美咲さんは漠然と、30歳までには結婚したいと思っていました。このままでは結婚どころか彼氏がいないまま30歳になるかもしれないと思って、婚活を開始します。
美咲さんの初めての婚活は、数分ごとにいろんな男性と会話をするスタイルの婚活パーティーでした。マッチングを希望する男性の番号を書く時間になった時、目の前に座っている年上の男性が「僕はあなたの番号を書きます」と言ってきました。数分しか話せず誰が誰だかよくわからないまま終わり、その彼にも特別に良い印象をもっていたわけではないものの、せっかく参加したし元をとりたい気持ちもあった美咲さん。相手の番号を書き、マッチングが成立しました。
マッチングした相手に「この後予定ありますか?」と尋ねると、スーツを買う予定があるといいます。お仕事用ですかと尋ねたら「仕事以外に何があるんだ!」と激怒して、なんとそのまま帰ってしまったそうです。
「私ももっと適切な言葉をかければよかったと思うけど、怒るほどの内容だったのかなと思います」
◆マッチングアプリで、かっこいい男性とデートできたけれど
この経験からマッチングアプリの方が効率的だと思い、withというアプリに登録します。初めてデートした相手は、写真がカッコよかった大学生でした。
相手の名前をフルネームで検索して、Facebookアカウントを見つけます。そこに「就職したくない人集まれ! 会社に搾取される人生はやめよう!」という投稿があり、関わるのをやめたそうです。
「大学生はダメだなと思って、社会人にしようと決めました。あとは顔で選んで失敗したので、カッコよくなくてモテなそうだけれど、私にグイグイ来る人の方が大事にしてくれるかもと思って、次は28歳で太っていた社会人の男性を選びました」
筆者は聞いていて、極端な戦略だなとは思いました。美咲さんはこの後も、Aなタイプ人と会ってうまくいかない場合、次はnot Aな人を探す、という極端な選択をすることが続きます。美咲さんにかぎらず恋愛経験が乏しく余裕がないと、こんなことをやってしまう方は多いのです。
◆変わった男性たちとの出会いばかりが続く
2人目にマッチングしたぽっちゃり体型の男性は、チャットで「鶏の美味しいお店があるから行きましょう」と誘ってくれました。リアルで会うと少し歩いただけで息切れしており、食事中もずっとゼエゼエしていたため、会話に集中できなかったそうです。それに美味しいお店と言って誘ってきたわりに、出てくる料理では自分が真っ先に美味しい部分を食べていて呆れてしまいました。
もう会うのはやめようと思った美咲さんですが、食事デートの別れ際に相手から「次はいつ会えますか?」と迫られます。「仕事が忙しいから」と約束せずに解散しようとしたところ「仕事はいつ落ち着きますか? 今月が無理なら来月は? 再来月は?」とさらに迫られ、怖くなったそうです。
◆「マッチングアプリしてるよね?」会社の男性に話しかけられて
ある日、会社で同僚の男性から「マッチングアプリに登録してるよね? この写真ですぐわかったよ。アドバイスしてあげようか」と話しかけられます。
彼は新規登録した女性を全てチェックするほど、マッチングアプリにのめり込んでいるようでした。
その同僚のプロフィールは、別に魅力的なものとは感じなかったそうです。彼は頼んでもいないのに、「美人には相手にされないから、あか抜けない写真の子を狙って『いいね』を送っている』という持論を語りだしました。
すっかり出会い探しが嫌になってしまった美咲さん。withは退会し、婚活をお休みすることにしたそうです。
◆「異性と会う」だけでも消耗し、余裕がなくなりやすい
マッチングアプリには、問題の同僚をブロックしたり、シークレットモードを使って自分のプロフィールを表示させる異性を制限したりして、相手探しを続ける方法もあります。アプリを退会まですることはなかったかもしれません。
他にも「大学生はダメだ、社会人にしよう」「顔で選んで失敗したから、次はカッコよくなくてモテなそうな人を」など、婚活での美咲さんの行動には極端なところがあります。顔で選んだ相手が「失敗」だったとしても、顔がイマイチな人なら内面が優れているわけではないのです。顔も内面も良い人もいれば、外見も内面も凡庸な人もいます。
男友達がいない女性が婚活をして、「こういう男性は合わないからやめよう」と極端な判断を繰り返してしまうケースはよくあります。男友達が数人でもいれば「意識だけ高い大学生っているよね」「空気読めない男もいるよね」ぐらいで流せたかもしれません。
男性がいない環境で過ごして交際経験もない方ならば、だいたいが「異性と会う」というだけで消耗し、余裕がなくなりやすいのです。仕方がない部分はあると思いますが、一度立ち止まって、極端な白黒思考になっていないか自分を客観視してほしいと思います。
※個人が特定されないよう一部脚色してあります。
<取材・文/菊乃>
【菊乃】
恋愛・婚活コンサルタント、コラムニスト。29歳まで手抜きと個性を取り違えていたダメ女。低レベルからの女磨き、婚活を綴ったブログが「分かりやすい」と人気になり独立。ご相談にくる方の約4割は一度も交際経験がない女性。著書「あなたの『そこ』がもったいない。」他4冊。Twitter:@koakumamt