残忍かつ凶悪な手口で世間を震撼させている「闇バイト」の数々。実行犯は若者ばかりと思いきや、自覚の有無にかかわらず中高年も手を染めている。裏には、若者とは違う彼らならではのニーズがあった。
◆闇バイトと知りつつ安請け合いし囮捜査の餌食に
風俗店勤務を経て飲食業を営んでいた田中敏夫さん(55歳)は5年前のある日、風俗店時代に交友があった暴力団員から振り込め詐欺の受け子を依頼された。
「最初からヤバい仕事だとわかっていました。でも店のケツ持ちをしてくれてたのもあって、受け取るだけなら……と。後であんな大ごとになるとは思わなかったけどね」
当初は報酬を辞退したが、暴力団員からは「成功報酬で」と持ちかけられ承諾。そして、向かった家で家主から渡された封筒を見ると、そこには大きく「600万円」と書かれていた。
しかし、実はこれは警察による囮捜査だった。
「カネであることを知りながら受け取ると罪になる。警察は、受け子を起訴する判例を作りたかったらしい。だからわざとらしく封筒に金額を書いてたってわけ(笑)」
田中さんは現行犯逮捕され、拘置所で4か月を過ごしたのち、執行猶予5年、懲役3年の判決を受けた。それが遠因となって飲食店を畳み、現在は生活保護を受けている。
ヤクザとの縁が切れたことだけは不幸中の幸いだった。闇バイトの安請け合いは人生を狂わせるのだ。
取材・文/週刊SPA!編集部
―[中高年[闇バイト]の実態]―