エアコン暖房「つけっぱなし」と「こまめに消す」どっちが節電になる?プロに聞いた節電方法

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2024年12月28日 09:00  女子SPA!

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 寒さも本格的となり、冬の到来を感じている人も多いのではないでしょうか。

 寒い日はできるだけ暖かく過ごしたいけれど「電気代が気になる!」ということで、170を超える国と地域で事業展開する空調総合メーカー「ダイキン工業株式会社」のコーポレートコミュニケーション室で広報を務める重政周之さんに話を聞きました。

 記事を読んだあとすぐに実行できる節電方法から電気代の計算式、エアコンの豆知識など盛りだくさんの内容でお伝えします。

◆つけっぱなしで節電に?「目安」は30分

――ひと昔前までは “電気はこまめに消す”ほうが節電につながるといわれていましたが、最近では“つけっぱなし”を推奨する声も増えました。エアコン暖房だと、どちらが節電になるか知りたいです。

重政さん:基本的には、つけっぱなしにしておいたほうが節電になりやすいです。ただ、24時間つけっぱなしのほうが節電になるかというとそうでもありません。少しの間だけ部屋をあけるといった場合は、つけたままのほうが節電につながることもあります。

――エアコンを消すかどうかの具体的な目安時間はありますか?

重政さん:その日の気温やお住まいの環境にもよりますが、30分ぐらいが目安です。エアコンは、寒い部屋を設定温度まであたためようと頑張るときに多くの電力を使います。そして室温が設定温度に到達した後は、消費電力の少ない安定運転で室温を維持する。こういったエアコンの特徴が深くかかわっています。

――エアコンを消すと部屋の温度が下がってしまうため、いちから暖めることになり、消費電力が大きくなり電気代が高くなってしまうのですね。

重政さん:はい。エアコンをつけたまま室温をキープしておいたほうが消費電力量を抑えられるという目安時間が30分程度。それ以上長く部屋を空ける場合には、エアコンは消しておくのがおすすめです。

◆お肌も喜ぶ!「湿度アップ」で節電する方法

――ほかにも、何かを購入せず、すぐにできる節電方法はありますか?

重政さん:部屋の湿度を上げると同じ温度でも暖かく感じられるので、加湿して体感温度を上げればエアコンの設定温度の上げすぎを抑えられ、節電につながります。身の回りにあるものを使う場合、洗濯物などを部屋干しするというのもひとつの手段です。。

――洗濯物も早く乾いて一石二鳥ですが、冬の室内はそれほど乾燥しているということですね。

重政さん:一年のうちでもっとも空気が乾燥するのが、12月から2月と言われています。空気には温度を上げると湿度が下がるという性質があるため、外気の相対湿度(空気の水蒸気含有量)は50%でも、暖房をしている室内では20〜30%と低くなることも少なくありません。湿度が下がると乾燥しやすくなるため、肌の潤いを逃がさないためにも、湿度を保つことは大切といえるでしょう。

――湿度は、高いほどよいのでしょうか?

重政さん:部屋の湿度は40〜60%ぐらいを目標に保っていただくといいかと思います。快適な湿度を保つには、加湿器や加湿空気清浄機の併用がおすすめです。もちろん、エアコン以外の電化製品も使うため電気代はそのぶんかかってしまいますが、エアコンの設定温度の上げすぎによる消費電力の増加は抑えられます。

◆空気の性質を利用した節電方法

――空気清浄や空気のかくはんも節電につながるのですか?

重政さん:加湿空気清浄機能は、室内の湿度を上げて体感温度を高めたり、空気をかくはんして室内の温度ムラを抑えて足元まで暖かく感じやすくしたりすることにも役立ちます。エアコンの設定温度の上げすぎを抑えられるので、結果、節電にもつながります。

――足元の寒さを気にしている人は多そうです。エアコンだけでどうにかできますか?

重政さん:エアコンは天井付近に設置された室内機内部の温度センサーで室温を確認しています。あたたかい空気は上昇し、冷たい空気は下に溜まりやすいため、暖房中の室内は温度ムラが発生しやすくなっています。

天井にあたたかい空気が溜まっていると、その空気を検知したエアコンは「もう十分あたたかい」と判断して運転を止めてしまいます。けれど床のほうは十分にあたたまっておらず、天井側と床側に温度ムラが生じている状態です。こうなると、多くの場合、足元の肌寒さを解消するためエアコンの設定温度を上げると思います。こういった状況をやわらげるには、エアコンの吹出口を下に向ける(いちばん下の設定にする)方法があります。

――吹出口を下に向けるだけで温度のムラを抑えられるというのは嬉しいです。

重政さん:これは、あたたかい空気は上に、冷たい空気は下に溜まりやすいという性質を利用した工夫です。あたたかい空気をはじめから天井側に吹き出さず、床の方に吹き出してから自然に上昇させることで、室内の温度ムラをある程度抑えられます。ちなみに、温度を1℃下げると消費電力は10%ほど下がるといわれています。

◆節電につながる豆知識

――エアコンの風量は“弱”にしたほうが節電になりますか?

重政さん:最初から風量が弱だと、熱交換器を通る空気の量が減り、室内に送り出す熱の量も減ってしまうため、室内があたたまるまでに時間がかかってしまいます。そのぶん圧縮機に負担がかかり、世計な電力がかかります。風量を“自動”にすると起動後はすばやく部屋を暖かくし、部屋があたたまると安定運転に切り替わるので、風量を弱にするよりも節電につながります。

――エアコンによっては暖房時、リモコンの20℃以下に“省エネ”などのマークが表示されることもありますが、21℃以上にすると電気代はグンと上がりますか?

重政さん:エアコン暖房を使用する際、室温が20℃になるような設定温度が推奨されていますが、エアコンは、20℃を境にして消費電力が急激に増加する訳ではありません。基本的に、室温と設定温度の差に応じてエアコンの消費電力は増減します。また、温度を1℃下げると10%ほどの節電になるともいわれています。こうしたことも踏まえつつ、お住まいの環境や体調なども考慮しながら、無理のない範囲で設定温度を意識してみてはいかがでしょうか。(※ダイキン工業の製品には20℃以下の“省エネ”表示はありません)

――なるほど。

重政さん:それから、室内の熱の多くは窓から逃げていくといわれています。エアコンは、屋外の空気中から集めた熱を室内に送り込んで暖房しています。室内の熱が逃げると、エアコンはそのぶんの熱を集めてこなくてはならなくなり、消費電力量が増加します。室内の熱をできるだけ逃がさないように、断熱性のあるカーテンや床までしっかりと覆ってくれるカーテンを選ぶといいですね。

◆使用期間中のお手入れで節電

――「ホコリはエアコンのスムーズな稼働を妨げる」とも聞きます。節電につながるエアコンのお手入れ方法についても知りたいです。

重政さん:基本的なお手入れとして、室内機のフィルターについたホコリを除去し、そして室外機の周りにある障害物を取り除いていただきたいと思います。フィルターのホコリも室外機周辺の障害物も、エアコンの運転効率を下げる原因になってしまうためです。エアコンの使用期間中のフィルターのお掃除は、2週間に1回が目安です。

――エアコン掃除は、自分でやっても問題ありませんか?

重政さん:フィルター掃除は、フィルターを取り外してホコリを取り除き、再びセットする簡単な作業です。ただ、熱交換器と呼ばれる金属の薄い板が並んでいる部分の汚れが気になるときや、室内機から嫌なニオイがするときなどは、室内機の洗浄をおすすめします。ただ、熱交換器などをご自身で掃除すると不具合につながってしまう場合もありますので、専門の業者にご依頼ください。

――ありがとうございます。ほかに、お手入れ関係で教えてもらえることはありますか?

重政さん:今年はもう既に暖房シーズンが始まっていますが、本格的にエアコン暖房を使いはじめる前に、エアコンを試運転して正常に暖房運転ができることを確認いただくと安心です。冬前のエアコン試運転のタイミングの目安は、気温が10℃ぐらいになる11月頃です。また、試運転の際、フィルター掃除や室外機周辺の整理整頓もしていただくことをおすすめします。

◆およその電気代を計算して節電につなげる

――節電の効果を実感できる方法も知りたいです。

重政さん:おおよそにはなりますが、電気代を計算できる方法があります。1時間あたりの電気代を求めたいときは、「消費電力(kW)×電力料金単価(円/kWh)× 1(時間)」という式で算出できます。

――消費電力を知る簡単な方法はありますか?

重政さん:消費電力はカタログなどに“〇W”と記載されているので、それを参考にしてください。上の図を例に暖房時の電気代の目安を算出する場合、消費電力の900Wを0.9kW(1,000W=1kW)に変換し、一般的な電力料金単価である31円/kWhと時間を掛けます。1時間あたりの電気料金の目安を知りたい場合は、「消費電力0.9(kW)×電力料金単価31(円/kWh)×1(時間)」という式になります。

――1日平均8時間エアコンを使うという人は、時間の部分に8時間の“8”を当てはめて、「消費電力0.9(kW)×電力料金単価31(円)×8(時間)」と計算する。そうすれば、1日にエアコンだけで約223円の電気代がかかっていることがわかるのですね。便利です。

重政さん:はい。8時間の間、エアコンにかかる負荷が変わらないと仮定するとそうなります。サーキュレーターや加湿空気清浄機などとの併用を検討する場合もこの式に当てはめると、エアコン単体で使ったときとの料金比較をイメージしやすいかと思います。また、エアコンの購入を検討されるときは、カタログに記載の“消費電力量期間合計(年間)”も参考にしてみてください。これに31円をかけると1年間でどれぐらいの電気料金になるのか、目安を知ることができます。

◆エアコンの健康寿命の目安は「10年」

――エアコンの寿命について知りたいです。

重政さん:ルームエアコンには “健康寿命”とも言える「設計上の標準使用期間」が設けられ、安全上支障なく使える期間の目安は一般的に10年とされています。この期間を超えると、不具合が起こりやすくなる場合もあります。快適にエアコンをお使いいただくためにも、10年を目安に買い替えをご検討ください。

――エアコンは便利なので今後も使い続けたいですが、地球環境への影響はどうですか?

重政さん:エアコン暖房は、“ヒートポンプ”と呼ばれる仕組みで屋外の空気中の熱を室内に送り込み、部屋をあたたかくしています。ヒートポンプは再生可能エネルギーである空気の熱を利用する技術で、最新のヒートポンプは1の電気エネルギーで7の熱エネルギーを生み出します。電気ヒーターと比べて電力効率が高く、ガスや石油などを使う燃焼系の機器と比べて家庭のCO2排出量を大幅に削減できることが特長です。身近なエアコンに使われているヒートポンプが、実は脱炭素社会の実現への貢献が期待されている技術であることを知っていただけたら嬉しいですね。

――エアコンは環境にやさしいのですね。

重政さん:はい。また余談にはなりますが、エアコンを作ったり運んだり、使ったりすることは、CO2の排出にもつながります。実は、1台のエアコンが寿命を終えるまでのCO2総排出量のうち、約90%はお客様に使っていただいているときに排出されるものです。もちろんダイキンはメーカーの責任として、エアコンを作るとき・運ぶときのCO2排出削減にも取り組んでいますが、同様に、皆様が節電を意識しながらエアコンを使ってくださっていることも、カーボンニュートラル実現への貢献につながるのではないかと思っています。

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 12月も後半となり、ますます寒くなることが予想されます。今回紹介の節電方法なども活用し、電気料金を抑えつつ、できるだけ快適に過ごしたいものですね。

<取材・文/山内良子>

【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意。

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