「唯一無二の人でした……」
そう話すのは、楳図かずおさんの著作物の管理を行う『一般財団法人UMEZZ』代表理事の上野勇介さん。
財団法人に込めた“願い”
'24年10月28日、胃がんにより都内のホスピスで息を引き取った漫画家の楳図さん。88歳だった。
「楳図さんは、恐怖漫画というジャンルを確立した漫画界のレジェンドです。その影響を受けた漫画家は少なくありません。恐怖漫画『おろち』『漂流教室』のほか、ギャグ漫画『まことちゃん』などが有名ですが、'60年代には『ロマンスの薬あげます!』というラブコメディーを描いていたこともあるんです。多彩な表現に取り組んだ天才でした」(マンガ編集者)
近年では、美術展を開催するなど、従来とは違った表現を試みていた。
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「今年の夏にがんであることが判明してから、楳図さんは病床で今後のことをすべて、ご自身で決めていきました」(前出・上野さん、以下同)
'24年8月に設立された財団法人には、楳図さんの“ある願い”があったという。
「漫画家として広く知られている存在だと思うのですが、楳図さんは自身のことを芸術家だと思われていたので、そうした芸術的評価を揺るぎないものにしたいと考えていたんです」
「美術館」も構想
海外では、楳図さんの作品が翻訳出版されるなど“世界のウメズ”となっている。だが、自身の作品を、さらに多くの人に知ってほしいと考えていた。
「楳図さんは“自身の作品を守るだけではつまらない。発展させるために財団をつくるから、後は任せた。死んだ後は、その様子を見て楽しむから”と話していました。わかりやすく例えるなら、楳図さんの作品をハリウッドで映像化させるなどですね。今も近くで見られている気がしますから、頑張らないといけません(笑)。また財団の目的には《美術館の運営》も入っているのですが、本人としては“楳図美術館”をつくってほしいという思いも強く持たれていました」
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美術館の候補地として真っ先に頭をよぎるのは、東京・吉祥寺にある、赤と白のボーダー柄の一軒家『まことちゃんハウス』の存在。いずれは、そこが美術館になるのか?
「『まことちゃんハウス』は、住宅兼財団の事務所として利用していくことが決まっていて、現時点では博物館や美術館にすることは考えていません。今は、私が毎日通って、そこで仕事をしています。それが楳図さんの希望でもあったので」
病気で入院する直前まで、創作活動を行っていた楳図さん。その未発表の新作が、まだ残されているという。
「'24年9月に石川県金沢市で開催した美術展では、『JAVA 洞窟の女王』という連作絵画の1枚だけを先行して展示しました。今後は残りの作品も見てもらう機会をつくりたいと思っています」
お別れの会の開催を検討しているが、具体的なことは何も決まっていないそう。
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「'25年は、楳図さんの画業70周年という節目でもあるので、お祝いも兼ねて、みんなで盛り上がれる素敵な会にしたいと考えています」
財団には、お別れの会の開催を求める声が多数、届いているという。