「ステーキを食べさせたら奇跡が起きた」終末期の愛犬に「特別なご飯」をあげると元気になる?【獣医師が語る“本当の意味”】

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2024年12月31日 14:30  まいどなニュース

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終末期のペットが「食べる」ことの意味とは ※画像はイメージです(anastas_/stock.adobe.com)

体力が落ちて何も食べられなくなった老犬など、終末期の愛犬に何を食べさせるかがXで話題となりました。愛犬の介護や看護を体験した人は「食べられるものを食べさせるように」と医師から言われると説明し、看護中に何を食べさせたかを投稿していました。

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投稿ではアイスクリームやシュークリームなど、やわらかく体力がつきそうな甘いもの、ハムやチキンなど食欲を誘いそうな肉類など、さまざまな食品が挙げられています。なかには「ステーキを食べさせたら元気になった」という驚きの体験談もありました。

そこで、普段は食べさせない食品を終末期に食べさせることは実際に有効なのか「はる動物病院」院長の渡邉武史先生に話を聞いてみます。

──終末期の愛犬に食べられるものをなんでも食べさせることで、延命につながることは多いのでしょうか。

確かに終末期の動物の飼い主様を前に、そのように話をする場合はあります。しかしそれは、延命のためという意味とは少し異なる場合が多いかもしれません。

まず私たち獣医師の仕事は、動物に適切な医療をおこなうという事と同時に、その飼育者(飼い主様)と動物との絆を尊重し、動物と飼育者を幸福へ導くという責務があります。

終末期の動物には、そこに至るまでに飼い主様との歴史があります。病気になり、共に病気と戦って治療をおこなってきた結果の場合もあれば、それまでは平穏な毎日を過ごしていた中で急な状態の変化により、そのような状態に陥ってしまった場合もあると思います。

そして終末期とは、死に至ることを回避できない状況なのだと考えられます。そのような状況では医学的に適切な食餌ではないかもしれませんが 「食べる」という幸せな行動によって動物だけでなく飼い主も精神的な安定を得る事が出来るのです。これによって、飼い主が動物の最期を看取るための心の準備ができることを期待する獣医師が多いと推察します。

──SNS上には、好きなものを食べて元気になったという体験談が複数ありますが、こちらは幸運な事例でしょうか。

幸運に体調が回復した事例というよりも、一時的に動物が元気になったように見えた例かもしれません。やはり終末期といわれるような状態の動物ということであれば、基礎疾患の進行や悪化が進んでいる可能性が高く、回復する事はなかなか厳しいと考えます。

多くのペットにとっての幸せというものは、飼い主と一緒にいることであり、飼い主が出してくれた特別な食事であればきっと大喜びします。喜んでいるペットの姿を見て飼い主は喜び、それをペットは察してペットも喜ぶわけです。獣医学的には適切ではない食べ物かもしれませんが、一時的には動物が元気になったように見えるのだと思います。

──好きなものを食べさせるのは、緊急時の対応ということでしょうか?

上述したように、終末期の動物であるので一時的な緊急時の対応というよりも、先の事を見据え、食べる姿が見せられる時に見せてあげるという意味合いが強いと考えられます。

   ◇   ◇

人間でも、何も食べられない状態では緩和ケアとしてかき氷のカップアイスなどが使用されます。口やのどの渇きを癒せるものなどを獣医師からの指示のもとで与えることは、飼い主と愛犬の心を和らげる心理的なサポートにもなるのではないでしょうか。

◆渡邉武史(わたなべ・たけし)「はる動物病院」院長。北里大学卒、ISVPS獣医歯科・口腔外科認定医。犬や猫は「痛みを隠す動物」と考えられていることから飼い主との会話を重視、医師、動物、飼い主の二人三脚の獣医療を理想としている。地域密着型の動物病院で、小動物の歯科診療も行う。趣味は、テニスと温泉。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)

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