旅行会社に勤めるAさんは、毎年恒例の繁忙期をなんとか乗り越え、ついに待望の有給休暇を取得しました。普段はお客様の旅行プランを考えることに情熱を注いでいるAさんですが、今回は家族のために全力で旅行の計画を立てます。
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そして休日初日の朝、家族と車で旅行に出かけます。出発前の荷物のチェックも忘れず、家族の笑顔を見て満足そうな表情を浮かべるAさん。ところが目的地に向かう途中、Aさんのスマホが鳴り響きます。相手は同僚のBさんで、「大変です!会社でストライキが始まりました!」と慌てた様子で話します。
どうやらAさんの勤める旅行会社が他社に買収される話が浮上しており、その条件に対して多くの社員が納得できず、急遽ストライキを始めたというのです。Aさんは休暇前の1週間、多くの接客案件を抱えていたことから、このストライキの話を全く知りませんでした。
Bさんは労働組合の指示を受け、Aさんにもストライキに参加してもらうために連絡したようです。しかしAさんは、先に有給休暇を取得していたことと、せっかくの家族旅行であることを理由にストライキ参加の指示を断ります。
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Aさんは、ストライキに参加しなかったことで、労働組合から責められたとしても仕方ないと思う一方、賃金についてふと疑問を感じました。その疑問とは、ストライキによって旅行のために取得した有給休暇の賃金が発生しなくなるのではないかというものです。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞きました。
ーストライキ中は賃金が発生しないのは本当ですか
原則としてストライキ中は賃金は支払われません。ストライキ参加中は労働に従事しておらず、その対価である賃金を請求する権利がないからです。欠勤や、遅刻・早退と同じ扱いであると考えるといいでしょう。
ーストライキ中の有給休暇の扱いはどうなりますか
Aさんの場合、ストライキに参加しているかどうかがポイントになります。平成3年の最高裁の判決では、ストライキに参加した従業員の有給休暇の不成立が認められています。このケースでは、偶然実施されたストライキに有給休暇中の従業員が参加していました。
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つまり、もしAさんが旅行を切り上げてストライキに参加したとすると、参加した間の有給休暇は成立しません。一方で、旅行を続けていれば、ストライキが実施されていても、参加していないAさんの有給休暇はそのまま成立します。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
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