今月、就任式を迎えるアメリカのトランプ次期大統領が、会見で「領土拡大」への野心をむき出しにしました。隣国カナダや、グリーンランドなどをアメリカのものにしようと、軍事的・経済的な「脅し」ともとれる発言を繰り返しています。
■トランプ氏 グリーンランド獲得に軍事力も トランプ氏 領土拡大に野心
就任間近に開いた会見。相変わらずのトランプ節でした。
トランプ次期大統領
「メキシコ湾の名前をアメリカ湾に変えるつもりだ。広大な領域をカバーし、美しい響きだ。アメリカ湾、なんて素晴らしい名前だ」
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メキシコ湾を「アメリカ湾」にすると隣国を挑発。
カナダに対しても・・・
トランプ次期大統領
「カナダとアメリカが一緒になると、本当に素晴らしいことになる。あの人工的に引かれた国境線をなくしたら、どうなるか見てごらん」
アメリカの51番目の州になるべきと主張。さらに・・・
トランプ次期大統領
「国家の安全保障のためにグリーンランドが必要だ。これはずっと前から言われてきたことだ。私が立候補する遥か前からね」
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北極圏に位置する、デンマークの自治領グリーンランドをアメリカが領有すべきだと表明しました。
この発言と同じころ、トランプ氏の長男であるトランプ・ジュニア氏がXに投稿した映像には、氷に覆われた島が映っています。
操縦士
「あの滑走路サンタクロース用じゃないか?」
ジュニア氏は、プライベートジェットでグリーンランドに降り立ちました。
記者
「なぜグリーンランドに?」
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トランプ・ジュニア氏
「観光で来ただけだよ。良いところだね」
記者
「お父さんはなんて?」
トランプ・ジュニア氏
「『よろしく』って」
記者
「誰に?」
トランプ・ジュニア氏
「『グリーンランドのみんなによろしく』ってさ」
トランプ氏が、グリーンランドにここまで関心を示すのには理由があります。
米軍にとって最北端の基地がある重要な軍事拠点であり、さらに、レアアースの埋蔵量は世界有数の規模を誇ります。
トランプ次期大統領
「周辺に目を向けると、中国の船やロシアの船も至るところにいる。それは許さない」
トランプ氏は、デンマークが抵抗すれば、輸入製品に高い関税を課す可能性にも言及。
また、軍事力を行使することも排除しない姿勢を示しました。
■トランプ氏の脅しで? アメリカ・メタ ファクトチェック廃止
一方、自らにすり寄ってくる人に対しては態度が一変。
トランプ次期大統領
「MetaやFacebookは大きく前進した。印象的だった」
FacebookやInstagramを運営するメタ社のザッカーバーグCEOが、7日発表したのは、投稿の虚偽情報を第三者機関などと協力して確認するファクトチェックをアメリカで廃止するというものです。
ファクトチェックはトランプ氏が「不当な検閲行為」などと批判していました。
Meta ザッカーバーグCEO
「FacebookとInstagramに、自由な表現を取り戻すときが来た」
実はこの2人、2024年の大統領選までは険悪な関係でした。
トランプ氏はこれまで、2020年の大統領選でザッカーバーグ氏がFacebookを操り、陰謀を企てたと主張してきました。
さらに、2021年1月に起きたアメリカ議会襲撃事件を受け、FacebookとInstagramのアカウントを凍結されたこともあり、トランプ氏は2024年9月に発売した著書の中で、こう警告したのです。
トランプ氏の著書
「私は彼(ザッカーバーグ氏)を注視している。もし今回違法なことをすれば、彼は残りの人生を刑務所で過ごすことになる」
しかし、今回の大統領選でトランプ氏が勝利すると、その直後、ザッカーバーグ氏はトランプ氏と面会。
また、Meta社は1月20日に行われる大統領就任式に100万ドル=日本円で約1億6000万円を寄付していて、関係改善を模索しています。
今回のファクトチェック廃止についても・・・
Meta ザッカーバーグCEO
「トランプ(次期)大統領と協力して、規制を強めようとする各国政府に抵抗していく」
アメリカメディアは、専門家の意見としてこの動きを「強力な人々や機関が大統領に屈服している一例」と批判しています。
記者
「あなたがザッカーバーグ氏を脅した結果だと思うか?」
トランプ次期大統領
「恐らくね」
■ファクトチェック廃止以外にも「共和党系幹部起用」「取締役にトランプ氏に近い人物」Metaのすり寄り
藤森祥平キャスター:
Meta社のザッカーバーグCEOは
・FacebookやInstagram、Threadsのファクトチェックを廃止
→第三者の注釈を表示する機能を導入
・渉外トップに共和党系幹部を起用
・取締役にトランプ氏に近い人物を選出
などをしていくということです。
元々は、トランプ氏と険悪だった仲ですが、一気に距離を縮めてきました。
トラウデン直美さん:
ここまであからさまに擦り寄っていくのは、見ていて不穏な気持ちになります。それだけトランプさん寄りになるメリットというか、そうしないことに不利益を覚えている人が意外とたくさんいるのではないかと思います。
ファクトチェックの廃止に関して、これまでも何が正しいかSNS上での情報収集の信憑性には不安なところがありましたが、さらに不透明になっていきます。より自分自身でソースが何なのか、きちんと見ていくことが今後も大事になってくると思います。
藤森キャスター:
ファクトチェックの一部機能は残すということですが、どれぐらい機能的に効果を上げているかもわかりづらいと言われていますね。
教育経済学者 中室牧子さん:
今回、導入される「第三者の注釈を表示する機能」は、Xでは既に「コミュニティノート」として実装されている仕組みです。X社がいろんなデータを公開していることもあって、過去のデータを全部ダウンロードして分析をすることができ、過去のコミュニティノートのデータを使った学術論文も既に出ています。
日本のデータを使った学術論文で、非常に面白いものがあります。日本では、Xのコミュニティノートは2021年頃から急速に増加していて、中でもとりわけ多いのはワクチンに関する記載だったということです。ワクチンは、非常に専門性の高い知識が必要とされるので、専門家の知識を無料で誰かが任意で出してくれるのを待たなければいけないということですから、そういったものを果たしてファクトチェックと呼ぶのか?という議論が残ると思います。
小川彩佳キャスター:
その信憑性がどうなのかということにもなりますからね。
■どこまでが本気?トランプ氏の発言
小川キャスター:
トランプ次期大統領は他にも
・(デンマークに対して)グリーンランドの所有権を放棄しなければ非常に高い関税を課す
・(カナダに対して)アメリカ51番目の州となるべきだ
・(メキシコに対して)「メキシコ湾」から「アメリカ湾」に名前を変える
・(パナマに対して)パナマ運河を返還しないと軍事力の行使も排除せず
という発言をしています。
トランプ氏の発言の本気度は、どう見ていますか?
教育経済学者 中室牧子さん:
記者会見の議事録をザーッと読みましたが、一体何を本気でおっしゃっていて、何が各国に対するブラフなのかが極めて分かりづらかったと思います。
経済学の標準的な考え方からすると、アメリカ経済が今、インフレが再燃しないように非常に気を遣っている中で関税を課したり、移民を禁止したり、経済政策をするとインフレを再燃させてしまうのではないかと考えますが、そこは非常に矛盾があるという状況です。
小川キャスター:
トランプ氏の関税政策を実行すると、日本の実質GDPが最大₋1.4%程度、額にして約8兆円ほどの規模で減るという大和総研の試算がありますが、この試算もどれだけ信じられるのかということですよね。
教育経済学者 中室牧子さん:
先ほどインフレの懸念があると言いましたが、1月にアメリカ経済学会の年次大会が行われます。前FRB議長や一流の経済学者と、第2次トランプ政権の今後の経済への影響を議論したそうですが、そこまで大きな影響がないのではないかという見方もあります。
トランプ大統領が何をどこまで本気にしているのかわからず、見通しにくいというところではありますが、アメリカの動きに一喜一憂することなく、我が国は我が国できちんと議論を進めていくことが重要ではないかと思います。
小川キャスター:
石破総理としてもまだトランプ氏に会えていないという中で、2人でどういう関係性を築いていくのかも未知数な中ですが、20日(月)に就任式を迎えます。
■メタのファクトチェック廃止について「みんなの声」は
NEWS DIGアプリでは『メタのファクトチェック廃止』について「みんなの声」を募集しました。
Q.米国でSNSファクトチェック廃止 どう思う?
「賛成」…5.0%
「別機能が担保されるなら賛成」…21.3%
「反対」…21.6%
「より強化すべき」…47.3%
「その他・わからない」…4.8%
※1月8日午後11時13分時点
※統計学的手法に基づく世論調査ではありません
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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 著書「学力の経済学」など
教育をデータに基づいて分析