藤川球児新監督の阪神は2025年をどう戦うべきか? 赤星憲広が「補強したのと同じくらいの価値がある」と期待する選手

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2025年01月16日 07:30  webスポルティーバ

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赤星憲広が語る藤川球児(後編)

前編:「赤星憲広が語る藤川球児の覚醒前夜」はこちら>>

 2024年シーズン、阪神は3.5ゲーム差の2位に終わり、惜しくも球団初の連覇はならなかった。2年ぶりの優勝に向け、藤川球児新監督を迎えた阪神はどのような戦いをすべきか。阪神OBである赤星憲広氏に聞いた。

【屈指の厚みを誇る投手陣】

── 昨シーズン、阪神投手陣のチーム防御率2.50は、巨人の2.49に次いでリーグ2位。また与四球323はリーグ最少でした。

赤星 阪神投手陣の強みは、やはり頭数が揃っている"先発陣"です。才木浩人(13勝)、大竹耕太郎(11翔)、ジェレミー・ビーズリー(8勝)、村上頌樹(7勝)、伊藤将司(4勝)......。たとえば、調子の上がらない投手がいたとしてもその代わりがいる。

 昨シーズン、手術から復帰した?橋遥人が4勝を挙げるなど復活を遂げましたが、このオフ、左手首に入ったプレート除去手術の影響で、開幕には遅れると聞いています。また2年連続最多勝の実績がある青柳晃洋が、ポスティングシステムによるメジャー移籍を目指しています。そんな状況でも、先発陣が足りないということはない。そこが大きな強みです。先発に関しては、質量とも盤石だと思います。

── 2023年にMVPに輝いた村上頌樹投手は、9イニングの平均与四球が23年の0.94個から、24年は1.93個になりました。その影響もあったのか、10勝6敗から7勝11敗と負け越しました。

赤星 昨シーズンの村上は、相手打線に相当研究されました。だから、コントロールがいいがゆえに、昨年以上に際どいところを狙って投げていました。制球が乱れたというよりも、打者を誘った分、逆に四球が増えてしまった。西勇輝もそうですが、コントロールがいい投手にありがちな結果と言えます。相変わらずコントロールは抜群ですから、今シーズンはそのいい部分をいい方向に持っていってくれるでしょう。

── 赤星さんが楽しみにしている投手は誰ですか?

赤星 昨年のドラフトで1位指名された伊原陵人(NTT西日本)、2位の今朝丸裕喜(報徳学園)、3位の木下里都(KMGホールディングス)の上位指名された3人は楽しみですね。また、昨年ウエスタンリーグで7勝(4敗)を挙げた高卒3年目の茨木秀俊にも期待しています。

── 逆に不安要素を挙げるとすると、どこになるでしょうか。

赤星 岩崎優は別として、リリーフ陣がどこまで機能するかが不安です。昨年、岩貞祐太や島本浩也が軒並み数字を落としました。リリーフ陣は複数年活躍すると、どうしても勤続疲労が出てくるものです。1、2年は頑張ってくれるのですが、その後、故障や調子が上がらないケースが見られます。昨年で言えば、リーグ最多の70試合に登板して最優秀中継ぎ賞のタイトルを獲得した桐敷拓馬や、56試合に登板した石井大智あたりが今シーズンどこまで機能するか。昨年は接戦が多かったため、セットアッパーにかかる負担が大きかったですから。

【森下翔太、前川右京は今年が勝負】

── 一方、攻撃陣はいかがですか?

赤星 2003年に日本一になったシーズンは、四球をもぎとり、盗塁や犠打でつくった少ないチャンスをものにする勝ち方でした。ただ昨年は、四球数こそリーグトップでしたが、盗塁数はリーグ5位、犠打数もリーグ4位と前年に比べて減りました。一昨年のように、コツコツとつなぐスタイルの野球ができれば、自ずと得点力は上がると思います。

── 特に盗塁は5連続1位でしたが、昨年は一気に5位(41個)まで下がりました。

赤星 表面的な数字だけ見れば下がっていますね。矢野(燿大)監督の時は、走れる時は行ってもいいという"グリーンライト"でしたが、岡田監督の時はサインでした。昨年はサインを出すのが減ったのかもしれないですね。ただ中野拓夢が「もう一度、盗塁王を狙います」という前向きなコメントを出しているように、藤川監督に代わってどうなるのか注目ですね。

── 選手個々で見るとどうですか。

赤星 一昨年と比較して成績を上げたのは森下翔太、踏ん張ったのが近本光司。一方で、大山悠輔や佐藤輝明は数字を下げました。ほかにも、中野や木浪聖也といった日本一に貢献した選手たちも軒並み下がりました。23年と同じくらいの成績を残していたら、優勝できていたかもしれないですね。もちろん、彼らも「このままでは終われない」と思っているでしょうし、奮起に期待です。

── 若手についてはいかがですか。

赤星 台頭したのは前川右京です。プロは好成績を3シーズン続けて、ようやく一人前と言われる世界です。そういう意味で、前川はもちろんですが、森下も今年が重要なシーズンになるのは間違いありません。

【補強と同じ価値がある大山の残留】

── 6年連続最多だったチーム失策数が、2024年はリーグ5位になりました(85失策)。

赤星 そこについても本拠地の甲子園が土のグラウンドですから、一概に数字だけでははかれないところがあります。ただ、減ったことは喜ばしいことですし、全体的に守備力は上がっています。昨年23失策した佐藤も向上心を見せてくれるでしょう。

── このオフ、大きな補強はなかったですが、FA宣言していた大山選手が残留となりました。

赤星 残ってくれたことは、チームにとってかなり大きいです。チームの軸となる4番打者ですので、バッティングばかりクローズアップされますが、守備力であったり、野球に対する姿勢であったり、統率力であったり、チームに与える影響がものすごく大きな選手です。大山の残留は、補強したのと同じくらいの価値があると思います。

── 最後に、警戒するチームはどこになりますか。

赤星 昨年優勝した巨人を倒さなくてはならないのは言うまでもありませんが、日本一になったのはDeNAです。また9月に失速して、最終的には4位でしたが、シーズン中盤まで首位を走っていた広島も手強いです。昨年15勝7敗3分と大きく勝ち越した中日は、井上一樹新監督になり、どんな野球をしてくるのか注目です。ヤクルトだってここ2年はBクラスに甘んじていますが、実力はある。いずれにせよ、全球団に勝ち越すつもりの気構えで臨まなくてはなりません。


赤星憲広(あかほし・のりひろ)/1976年4月10日、愛知県出身。大府高校から亜細亜大、JR東日本に進み、2000年のドラフトで阪神から4位指名を受け入団。1年目の01年に盗塁王と新人王を獲得、以後05年まで5年連続盗塁王を獲得し、プロ通算381盗塁は球団最多記録。07年には通算1000本安打達成。09年9月、試合中のダイビングキャッチで脊髄を損傷し、同年12月に現役引退。現在は野球解説者、スポーツコメンテーターとして活動している

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  • 4点取れば勝てる。近本・中野の出塁が鍵になるかも。
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