「AQUOS R9 pro」のカメラ機能を「Xiaomi 14T Ultra」と比較 よかったのは望遠、悪かったのも望遠

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2025年01月26日 10:31  ITmedia Mobile

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デジタルカメラのような外観の「AQUOS R9 pro」

 2024年の末頃、カメラ機能でユーザーを驚かせたスマホといえばベースモデルとなる「AQUOS R9」から半年遅れで発表された「AQUOS R9 pro」です。


【その他の画像】


 今まで1型センサーのカメラ1つで勝負してきたAQUOSのハイエンド機種ですが、R9 Proからはライカ監修のVARIO-SUMMICRONカメラシステムを搭載。VARIOとはラテン語で「変える」を意味し、ライカやカール・ツアイスなどの独カメラメーカーのズームレンズに利用された名前であり、ハイエンドAQUOSがシングルカメラ一本足打法からアップデートしたことを示しています。


 今回はそんなAQUOS R9 proの実機をお借りすることができましたので、カメラ機能を中心に、2024年のベストカメラスマホと称されているXiaomi 14 Ultraとも比較しながらレビューしていきます。


【訂正:2025年1月27日10時00分 初出時、AQUOS R9 proの比較対象を「Xiaomi 14T Pro」としていた箇所がありましたが、正しくは「Xiaomi 14 Ultra」です。おわびして訂正いたします。】


●3つのカメラを搭載した全く新しい「VARIO-SUMMICRONカメラシステム」


 AQUOS R9 proのアウトカメラは以下の3つのカメラを搭載しています。


・標準カメラ:5030万画素 1/0.98型 23mm/F1.8 全画素PDAF/OIS対応


・広角カメラ:5030万画素 1/2.5型 13mm/F2.2 PDAF対応


・望遠カメラ:5030万画素 1/1.56型 65mm/F2.6 全画素PDAF/OIS対応


 加えて正確な色味を測定する14chスペクトルセンサーを搭載しており全てを取りまとめて「VARIO-SUMMICRONカメラシステム:1:1.8-2.6/13-65mm ASPH.」という名前を冠しています。


 SUMMICRONとはライカにおいてF2.0の明るさを持つレンズにつけられる名前であり、多くのレンズで開放からシャープな映りをすることで有名です。名前から考えると芸術的なふんわりとした描写というよりは、くっきり写ることが期待できます。


 従来のハイエンドAQUOSは1つのメインカメラを搭載し、広角から望遠までAI補正とデジタルズームで対応する形でしたが、AQUOS R9 proからは他社ハイエンドスマホと同様に複数のカメラを組み合わせて使うスタイルへ変更されました。これにより、望遠の画質向上や標準のレンズでの無理のない設計が実現できたとのこと。詳細は開発者インタビューをご覧になっていただければ理解がより深まるかと思います。


 手に取ってみると、まず驚かされるのがその目を引くデザイン。AQUOSおなじみの三宅一生氏によるMiyake Designですが、ひと目でカメラだ! と思わせる円形のカメラバンプが印象的です。各種文字も横向きに配置されており、横に持ってカメラとして使うことが想定されたデザインだというのを感じさせられます。


 シャッターボタンは本体の端に配置されており、窪みも相まって構えたときに自然にシャッターボタンに手がかかるようになっています。iPhone 16シリーズのカメラコントロールのように「あくまでAI機能の一貫として」ではなく、カメラらしさを追求した触り心地でとても好印象です。


●カメラライクな撮影体験が魅力


 シャッターボタンの搭載によって撮影体験そのものがアップグレードされています。


 シャッターボタンでカメラを起動→そのまま撮影の流れは迅速。外付けのグリップなしですぐに撮影に移行できるのはスナップシューターとして最適で、シャッターチャンスを逃しません。


 フィルターを利用できるようになった点もカメラライクに使えるようになったところです。別売りのマグネットアタッチメントを使えば62mmのカメラ向けフィルターが利用可能になります。


 筆者は「Leitz Phone 1」がマグネットでレンズキャップをつけられたときからマグネットでフィルターが付けばいいのに、と思っていましたが、まさかのそれが実現! これでNDフィルターを使った長時間露光や、PLフィルターを使った反射低減といった本格的な撮影も可能になりました。


●1/1.56型の大きなセンサー搭載の望遠カメラを使いこなす


 AQUOS R9 proはシングルカメラからトリプルカメラになったのが最大の特徴です。特に望遠カメラのイメージセンサーは1/1.56型と、ライバルであるXiaomi 14 Ultraの1/2.51型よりも大きなものを採用しており、画質に期待ができます。


 実際に撮ってみるとまぁよく写る。センサーが小さいとノイジーとなり破綻しがちな望遠においてもしっかりと階調が残っています。ノイズをあえて残す設計と中の人が言っていましたが、極端に暗いところ以外はあまりノイズも感じません。


 望遠カメラが追加されたことによって暗いシーンでも積極的に望遠が生かせるようになりました。夜景撮影だけでなく、暗い店内でのテーブルフォトも思い切った構図が取れます。センサーが大きい分ボケのコントロールが難しく、料理の一番手前はピンボケになってしまいましたが、かなり寄れるのもいいところです。


 もちろん一番画質がいいのは1型よりも大きいセンサーを搭載した標準カメラです。初めて1型センサーを搭載したAQUOS R6から3年、今まで培われてきた技術力はだてではありません。


 強い光源にカメラを向けても陰影が破綻しておらず、むしろ壁に写った影の階調が豊かに残っているのはさすがの一言です。


●よかったのは望遠だが、悪かったのも望遠


 AQUOS R9 proの妙味は望遠にあるのですが、課題点があるのもまた望遠です。


 まず感じたのが手ブレのしやすさ。帰ってから撮れた写真を見返すと結構な確率で手ブレ写真となっていました。望遠×大きいセンサーで望遠に対してはシビアなのだと理解していますが、それにしても手ブレ写真が多いです。


 特に望遠の夜景撮影は拡大するとぶれている写真ばかりでした。例えば上の写真のシャッタースピードを見ると1/13秒になっています。競合他社のスマホも同様のシャッタースピードであることから見るに、光学式手ブレ補正の強度やAIによる手ブレ補正のポスプロに改善の余地があるのでしょう。


 シャッターボタンを押し込むときに片手だとロール方向に、両手だとシフト方向にブレが起きやすくなっているはずです。それを踏まえた補正を入れるソフトウェア処理が求められると感じます。


 シャッターボタン関連でいうと、カメラアプリのUIにも課題はあります。


 AQUOS R9 proはR8シリーズと同じUIのアプリとなっていますが、新たにシャッターボタンが追加されたため、シャッターボタンを使って撮影しようとすると、撮影モード選択の場所に手が当たり、誤作動することが多かったです。シャッターが切れないと思ったら画面に触れていた、といったシーンはかなりの頻度で発生しました。


 競合のXiaomi 14 Ultraはカメラアプリの画面に余白を持たせることで、この問題を解決しています。こういったUIのアップデートも必要になってきます。


 誤作動で撮影モードが切り替わっていると、次に戻す作業をすることになりますが、他の撮影モードのフォントも色も薄く、極めて見づらいです。冬でも直射日光下だとほとんど見えないのには難儀しました。


 UI関連でもう1点。AQUOS R9 proで撮影された写真は4ピクセルを1ピクセル扱いにするピクセルビニングによって12.6MPへリサイズされています。ピクセルビニング機能のあるスマホの多くはリサイズが必要なく使いやすい画角でもある2倍望遠への切り替えがしやすいように、別で2倍望遠の切り替えが用意されているものが多いのですが、AQUOSにはありません。iPhoneでもPixelでもGalaxyでもXperiaでもある機能なので当然あると思っていたのですが……ここもアップデートに期待しています。


●Xiaomi 14 Ultraと比較すると課題が浮き彫りに


 手持ちのXiaomi 14 Ultraと比較した結果、結論としてはXiaomi 14 Ultraの方が使いやすく総合点は高いと感じました。


 特に前述の手ブレのしやすさなど、AQUOS R9 proは望遠の詰めが甘くXiaomi 14 Ultraの方が誰でも使いやすいカメラになっていると感じます。


 手ブレだけでなく最短撮影距離にも大きな違いがあります。AQUOS R9 proはかなり近づいて撮れますが、Xiaomi 14 Ultraの方がもう一歩踏み込んで撮影できるため、同じ被写体に対してそれぞれのスマホで一番近寄れるところで撮影するとXiaomi 14 Ultraの方がインパクトのある写真が撮れます。


 とはいえ、センサーサイズが大きくなるとその分、最短撮影距離が長くなる傾向にあり、トレードオフの関係なので仕方のないことではあります。


 カメラの色作りに関しても個人的にはXiaomi 14 Ultraの方が好みでした。


 上の2枚は同じ場所でほぼ同じ設定で撮影した写真ですが、AQUOS R9 proはシャドーを持ち上げてハイライトを落とすスマホ的な写真になっているのに対して、Xiaomi 14 Ultraの方は暗いところは暗いまま残す自然な映りをしています。空の色も朝焼けの薄明光線のイエローから反対のブルーに至るまでXiaomi 14 Ultraの方がカラーの差とそれに至るグラデーションがより立体的で、より印象的に感じました。


 カメラ的に扱えるか、という意味ではXiaomi 14 Ultraのカメラグリップと絞りは強みでした。特にカメラグリップの有無は構えたときの安定性が違うため手ブレ有無にもつながるのだと思います。


 総じてXiaomi 14 Ultraの方が完成度は高いという印象でした。AQUOS R9 proのカメラハードウェアスペックは、特に望遠カメラに関しては良いので今後のソフトウェアアップデートに期待しています。


●AQUOS R9 proの作例集


 最後にAQUOS R9 proで撮影した作例をいくつか紹介します。


 ブレやすいことを生かして動体だけをブレさせる撮影をしてみました。人が多い場所でうまく使えるかもしれません。


 標準カメラに関してはさすがの1型センサーです。夜景撮影でも明るくくっきりと、それでいて階調豊かに映ります。


 1型センサーゆえに光学的な背景ボケを生かした撮影も可能です。


 ピントが合っているところはシャープで、少しボケている煙は柔らかな雰囲気、背景はとろける、というほどではないものの、河川敷と分かるぐらい程よくボケてくれました。


 望遠カメラの1/1.56型センサーは暗いところでも質感を残した撮影が可能。ヒットさえすればいい写真が撮れました。


●魅力的なデザインのカメラ、ソフトの改善次第では大きく化ける


 AQUOS R9 proの標準カメラの1型センサーの描写は前作譲りの出来で、安定してハイパフォーマンスな描写が得られました。今までの技術の蓄積ゆえできることなのだと思います。


 今作は1型センサーのメインカメラが標準的な画角になったことに伴い超広角が追加された上に、3倍望遠が追加されたことで表現の幅が拡大しました。特に望遠カメラは1/1.56型センサーと意欲的な設計ではありますが、シャッターボタンの追加、大型かつ高精細なセンサーの搭載により手ブレ・ピンボケしやすい傾向にありました。


 カメラUIに関してもまだ改善の余地があるため、今後のソフトウェアアップデートで徐々に改善されることに期待しています。


 AQUOS R9 proは最大3回のOSバージョンアップを、5年のセキュリティアップデートを保証しています。その中でカメラ機能が洗練されるとともに知見を蓄積し、来たる次回作でより魅力的な望遠カメラに仕上がることが楽しみです。


(製品協力:シャープ)



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