本人は「マウント」をとるつもりで披露したエピソードでも、内容によってはむしろ“小物感”を醸し出してしまっている場合があります。
川村かりんさん(仮名・35歳)は、夫婦喧嘩中に夫がしてくる「スクールカーストマウント」にうんざりしているそうです。
「聞くたびに心が痛くなるし、器が小さいなあとも感じますね。これだけ過去のことを持ち出すのは、今が劣等感でいっぱいだからかなとも考えちゃいます」
◆陰キャのアラサーが陽キャの彼と結婚
かりんさんは内気な性格で、人付き合いも苦手。夫の大介さん(仮名・37歳)と出会ったマッチングアプリも、友人に何度も勧められたことでようやく登録できたほどでした。
「夫と私は対照的な性格。私は『こんな陽キャとは合わない』と思っていましたが、意外にも夫は気に入ってくれて。『ノリだけで生きている自分にはない慎重さや思考の深さが好きだ』と言ってくれました」
大介さんの猛アプローチによって、2人は交際。付き合い始めてからわずか6カ月でプロポーズもされ、トントン拍子で結婚まで決まったのだとか。
「こんなに早く結婚しても大丈夫かなと不安にはなりましたが、当時の私は30歳を過ぎて結婚に焦っていたこともあり、プロポーズを受けました。正反対なタイプだからこそ、補えるところもたくさんあるだろうなと思っていました」
◆初めての夫婦喧嘩で「スクールカーストマウント」をとられて…
しかし、2人の価値観は想像していた以上に異なっていました。かりんさんは、休日は家でゆっくりしたいタイプ。しかし、大介さんは休日こそ遊べる時間だと考えており、友人を自宅へ頻繁に招くようになりました。
全然ゆっくり休めない……。ストレスを溜め込んだかりんさんは、大介さんに「もう少し友達を呼ぶ頻度を減らしてほしい」と頼みました。
低姿勢のお願いにもかかわらず、機嫌を損ねた大介さんは「なんで、休日の過ごし方を勝手に決められないといけないの?」と怒り、学生時代の話を持ち出してマウントをとってきたそうです。
「友人が少ないことや学生時代は陰キャだったことを、夫に話したことはありました。
だからか、『まあ、かりんには分からない世界かもね。俺みたいに友達が多くなかっただろうし、文化祭とかの行事で人前に出ることもなかったでしょ? 俺は常に人から求められてきた人生だったから、自分を大事にしてくれたヤツらを自分も大切にしたいんだよ』と言われました」
思いがけない言葉に閉口してしまうかりんさん。しかし、大介さんの攻撃は止まりません。「ほら、そうやって機嫌が悪くなると黙るところ、学生時代からウケよくなかったと思うよ(笑)。そういうの陰キャあるあるだね〜」と、追い討ちをかけるのです。
「その言葉にも傷つきましたが、私は言い返すことが苦手なので何も言えず……。これからはなるべく夫婦喧嘩はしないように気を付けて、家庭に波風を立てないようにしようと思いました」
◆クイズ番組視聴中に「生徒会長」の過去を引き合いに出す
ところがその後、大介さんは些細な口論でも学生時代の話を持ち出すようになっていきました。
かりんさんが心底うんざりしたのは、テレビのクイズ番組を一緒に見ていたときのこと。違う答えを口にしたことで、2人は軽い言い合いに。すると、大介さんは中学生時代の“栄光”を持ち出して、マウント。
「俺、中学の頃、生徒会長だったんだよ!? 友だちだけじゃなくて先生からも推薦されたんだよ。大人が推薦したくなるってことは、それだけ賢かったってことでしょ? だから俺の答えが絶対に合ってるって!」とムキになったのです。
「夫は『逆に中学の頃、かりんはどんな係だった? 誰かから推薦されたり、生徒会長になったりしたことなんてないでしょ?』と小馬鹿にもしてきました」
◆見下され続ける日々に、三行半をつきつける日も近い
結局、そのクイズはかりんさんの答えが正解だったそう。大介さんは「ごめんな、熱くなりすぎたわ」と謝罪してきたものの、かりんさんのモヤモヤは晴れませんでした。
「なんとか今も結婚生活を続けていますが、マウントを取られるたび、夫は内心ではずっと私のことを見下しているんだろうなと感じ、悲しくなります。
夫の態度はモラハラに当たるのではとも思うので、このまま変わらないようなら離婚も考えています」
夫と暮らすようになって、自己肯定感が下がってしまった――、そう感じているかりんさん。この先、自分の心を守れる道を選んでほしいものです。
<取材・文/古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。共著『バズにゃん』、Twitter:@yunc24291