今月、韓国の販売業者が国内で製造された関節薬を日本製品として宣伝・販売する行為がSNS上で話題となりました。日本のドラッグストアにわざわざ出向き、商品を勝手に商品棚に置くことで、日本でも実際に売られているとまでアピールする始末でした。
偽造してまで日本製を謳うのは、薬に信頼感を持たせて売上につなげる狙いがあるためと考えられます。かつては家電製品が主流だったメイド・イン・ジャパン信仰が、近頃の韓国では薬やヘルスグッズに浸透しているともいえます。
日本製の薬やヘルスグッズが韓国で人気な理由を、日本での生活歴があり韓国在住の女性・パクさん(25)に伺いました。
◆韓国で人気な日本のとある商品
ーーパクさんは日本製の薬を購入したことはありますか?
パクさん:もちろんあります。数年前から、生理痛がひどいときに鎮痛薬のイブを重宝しています。韓国製の薬よりもよく効く気がして、痛み止めは日本のものを使っています。
ーーほかにも、日本製の薬やヘルスグッズを買ったことはありますか?
パクさん:日本のニキビ用のせっけんは、肌がつやつやになったのでお気に入りです。日本人の友人からおすすめされて、使ってみたらハマりました。あとは、胃に効くキャベジンですね。
ーーキャベジン、韓国人の間で人気らしいですね!
パクさん:知り合いから日本の薬のおすすめを聞かれたら、必ずキャベジンと答えます。韓国では「カベジン」と呼ばれ、お腹が痛くなったときや消化不良のときに飲みます。
キャベジンはもともと韓国で有名で、ネットで調べると使用者のブログがたくさん出てくるため情報にも困りません。親世代もよく知っているので、日本旅行に行くと必ず親から「キャベジンよろしくね」とお土産を頼まれます(笑)
◆韓国には胃薬を常備する習慣がなかった
ーーキャベジンは韓国ドラマにも登場したことがあるそうですね。韓国にも胃薬はたくさんあると思いますが、なぜわざわざキャベジンを選ぶのでしょうか。
パクさん:私のイメージでは、胃薬を家に置いておく風習が韓国にはないんです。だから、胃薬を韓国で買おうと思ったことはないですね。
ーー日本だと、胃薬は常備薬として置いておく家庭が多い気がするので、意外です。
パクさん:そうなんですね!一応、韓国でもキャベジンを買えるのですが、いかんせん輸入品扱いで高いので、旅行時に買いだめして何年も使っています。
ほかの韓国人も、わざわざ国内では買わず、旅行に行く友人にお願いするという感じです。キャベジンは量が多いので助かっています。
◆韓国社会における「日本製」の信頼感
ーーほかにも、韓国で流行っている日本の薬はありますか?
パクさん:足に貼る休足時間や、ロイヒつぼ膏などの湿布系が流行っています。ネットを調べると、日本旅行で買うべきアイテムとしてよく紹介されていますね。休足時間は使ってみましたが、私には合わなくて家にたくさん余っています(笑)
ーー韓国では、医薬品に限らず「日本製」に対してどのようなイメージがあると思いますか?
パクさん:安全性が高く、成分が体に優しいイメージです。安全品質基準が厳しいイメージがあるので、外国人としても安心して使えます。あと、値段が安いのも嬉しいですね。
◆日本製品の不買運動が起きたことも
ーーSNSには2015、2016年頃から韓国でキャベジンが人気との投稿が見られます。しかし、2019年頃に韓国で行われた日本製品の不買運動がありました。その頃、日本製品を好む消費者はどのように行動していたのでしょうか。
パクさん:私自身は不買運動に興味がなくて、今までどおり日本のものを買っていました。その頃私は日本留学を控えていたため、日本に行く機会も多く、ある意味仕方なかったのかもしれません。もちろん、複雑な気持ちはありました。
私の周りにも、日本のものを使う人は誰一人としていなかったですね。
ーーあの現象は政治的に仕方なかった側面が大きいと感じます。
パクさん:そうだと思います。私の周りの日本アニメオタクですら、あの時期はグッズを買うのを控えていました。
ーー最後に、韓国で薬が偽造されることへの意見をいただけますか?
パクさん:SNS広告だけを信じて買う人も出てくると思うので、よくないことだと思います。とくに、薬は体に直接影響するので、自分で正しい情報にたどり着けないと危険です。
若い人はインターネットに慣れているので騙される人は少なそうですが、お年寄りにはそれが難しいです。詐欺被害が大きくならないよう、国が対策を打たなければならないでしょう。
【松浦聡美】
韓国のじめっとしたアングラ情報を嗅ぎ回ることに生きがいを感じるライター。新卒入社した会社を4年で辞め、コロナ禍で唯一国境が開かれていた韓国へ留学し、韓国の魅力に気づく。珍スポットやオタク文化、韓国のリアルを探るのが趣味。X:@bleu_perfume