働き盛りでも要注意!視覚障害に至る「黄斑疾患」とは?

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2025年01月31日 12:10  QLife(キューライフ)

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視覚障害の原因疾患の20%に該当

 ヒトは視覚を介在することで情報の80%以上を得ているといわれており、超高齢社会を迎えたわが国において、視力を維持し続けることは健康寿命の延伸に欠かせません。


坂本泰二先生(バイエル薬品提供)

 製薬企業のバイエル薬品は2025年1月20日に「人生100年時代を暮らすために視力を維持し続ける大切さ」をテーマに講演会を開催。鹿児島大学大学院の坂本泰二先生(感覚器病学講座眼科学分野教授)が、視覚障害の原因となりやすい眼疾患「黄斑疾患」の概要などについて紹介しました。

 眼では、網膜が光を映像化して脳に運びます。その網膜の中心にあるのが黄斑部で、細かいものを識別したり、色を見分けたりする働きがあります。代表的な黄斑疾患には、網膜下出血により黄斑に光が当たらなくなって視力が低下する加齢黄斑変性や、網膜全体が障害されて視力が低下する糖尿病網膜症などがあります。

 日本眼科学会が中心に行っている視覚障害新規認定調査によると、わが国の視覚障害の原因疾患は2015年では糖尿病網膜症が12.8%、加齢黄斑変性含む黄斑変性症は8.0%と、これら2つで20%を占めています。視覚障害の原因疾患に占める割合は緑内障が28.6%と突出していますが1)、坂本先生は「緑内障はほとんどが高齢者で発症するのに対し、糖尿病網膜症および黄斑変性症は働き盛りの世代にも多く認められ、回復不能になってしまう患者さんも多い」と指摘し、糖尿病網膜症や黄斑変性症の発症を契機とした労働機会の損失など、社会へ与える影響はより甚大だと考えられます。

  国内の加齢黄斑変性の有病率は、2012年では1.6%とされ2)、女性より男性の有病率が高いことが知られています。症状として、視界の中心部が見えなくなるなどの異常が発現します。

  糖尿病網膜症は糖尿病の合併症で、糖尿病を無治療のまま過ごすと、極めて高い確率で発症することが知られています。糖尿病網膜症では、比較的軽度の段階から黄斑が障害される糖尿病黄斑浮腫が認められて徐々に視力が低下し、やがて失明に至ります。視力低下の症状として、全体が「かすんで見える」「歪んで見える」といった異常を来します。

医学の進歩で治療可能な時代だが、患者負担低減が重要

 視覚障害を来すと、健常者と比べて「予期しない転倒」「転倒による股関節骨折」「うつ症状」「入院日数の延長」「医療費の増加」「死亡リスクの上昇」などの問題が起こりやすくなります。また、家族のケアを必要とする機会が多くなり、患者さんの生活の質(QOL)や生産性の低下だけでなく、ケアによる介護者の機会損失など、世の中に多大なコストが生じます。

  そこで、黄斑疾患治療では、「改善した視力の長期の維持」「患者負担の軽減による治療継続」などの達成が重要視されています。最近では、1回の治療で従来よりも効果持続が期待できる治療薬が開発され、患者さんの負担が軽減できるようになりました。

  坂本先生は、講演で「社会のデジタル化が進み、生活がますます視覚情報に依存するようになり、視覚不良者にとっては困難な社会になっている。医学が進歩し、眼疾患の多くが医学的に治療可能だが、治療の負担が大きいことが課題。多くの患者さんが恩恵を被るには治療負担を減らす試みは大切である」と指摘しました。

 視力の維持は、私たちが快適に暮らすために欠かせないものです。早めの受診を心がけ、適切な治療を行いたいものですね。(QLife編集部)

1)Jpn J Ophthalmol 2019; 63: 26-33. [https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30255397/] 2)橋本左和子ほか: あたらしい眼科 2019; 36: 135-139

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