軍服を着て、座り込んでいるのは、まだあどけない表情の子ども。彼らは「少年兵」にさせられました。「世界で最も少年兵が多い国」ともいわれるミャンマー。子どもたちへの深刻な人権侵害が起きています。
【写真で見る】軍事政権の傘下組織の一員にさせられ、民主派側の捕虜になった14歳の少年
14歳が武器を持たされ…「世界で最も少年兵が多い」ミャンマー軍事クーデターから、丸4年。今も全土で少数民族や民主化を求める武装勢力が激しい抵抗を続けているミャンマー。
JNNは1月、北東部シャン州での戦闘中に撮影された、ある映像を入手しました。
ーー武器を扱うことができる?
「はい、使えます」
映像に写る軍服姿に裸足で歩く、あどけない表情の少年は、わずか14歳です。軍事政権の傘下組織の一員にさせられ、武器を持たされて戦い、民主派側の捕虜になったといいます。
長らく軍事政権による支配が続いたミャンマーでは、多くの子どもたちが少年兵にさせられました。
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国際人権団体は2002年、ミャンマーを「世界で最も少年兵が多い国」と指摘しました。
2011年の民政移管後、少年兵らは段階的に解放されてきたものの、4年前の軍事クーデターで状況は再び深刻化しています。
16歳でミャンマー軍に入隊させられ、クーデターの翌年に脱走した元少年兵の男性に話を聞きました。
ミャンマー軍の元少年兵 ハイン・ソー・ウーさん(22)
「クーデター後は、入隊希望者が減ったこともあり、未成年でも関係なく徴兵していました」
男性は高校生のころ、駅で無賃乗車を理由に当局から拘束され、「逮捕されるか軍に入るかを選べ」と脅されました。
そして入った軍の訓練施設には、100人以上の子どもたちがいて最も幼い子は14歳だったと証言します。
ミャンマー軍の元少年兵 ハイン・ソー・ウーさん(22)
「徴兵されたせいで私は教育を受けることもできず、自由をすべて失いました」
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男性は訓練施設から1度逃げ出しましたが、すぐに捕まり、殴る蹴るの暴行を受けたといいます。その際、次に逃げたら殺すと脅されたそうです。
クーデター以降、内戦の長期化と抵抗勢力の攻勢により、ミャンマー軍は3万人以上の兵士を失ったとされています。兵力を補うため2024年から徴兵制を導入。18歳以上の男女を対象としました。
しかし、国を出る若者が後を絶たず、本来、対象ではないはずの子どもたちが次々に徴兵されているとみられます。
ミャンマー軍の元兵士
「子どもの生年月日を偽り、身分証明書などを偽造して登録している。たばこの吸い方を教えたり、酒を飲ませたりして、より大人らしく見えるようにもしている。子どもが軍に入れば、将来も見えず人生終わったも同然です」
軍事政権下で繰り返されている子どもたちの人権侵害。元少年兵の男性は、軍への怒りをあらわにしました。
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ミャンマー軍の元少年兵 ハイン・ソー・ウーさん(22)
「国民が理不尽に銃で撃たれ、拷問され、住まいを追われ、私は苦しくて苦しくて、悲しい気持ちになりました。軍のことが許せません」
小川彩佳キャスター:
子どもたちが戦争・紛争に消費されるだけでなく、その後も心身ともにトラウマになるなど、長く深刻な影響を受け続けるということになりますね。
日本として何かできることはないのでしょうか。
TBSスペシャルコメンテーター 星 浩さん:
ミャンマーの現状を映す非常にいい取材だと思います。
もともと日本は民主化を期待して経済支援をしていました。しかしクーデターがおきて、駐在していたミャンマー語を話す丸山市郎大使が和平ができないかと模索してきたんです。結局できず、進展なしだったのですが、丸山大使が2024年9月に退任して、後任の大使がいないままになっています。
局面が変わってきましたが、少年兵の問題のように人権抑圧は続いています。日本としては国際社会に訴えかけ、「この人権抑圧は許さないんだ」という動きを起こすタイミングになってきていると思います。