福島・高湯温泉で3人死亡、関係者悲痛 硫化水素中毒の危険性とは

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2025年02月18日 19:23  毎日新聞

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源泉の点検に出掛けた3人が死亡した高湯温泉花月ハイランドホテル=福島市町庭坂で2025年2月18日午後0時13分、松本ゆう雅撮影

 真冬の白い雪に覆われた温泉街に戦慄(せんりつ)が走った。福島市町庭坂の高湯温泉で18日、源泉のメンテナンスに向かったホテルの3人が倒れているのが見つかり、死亡が確認された。火山ガスの硫化水素の濃度が高い場所で、3人が中毒に陥った可能性がある。県内は火山の恵みを生かした温泉地が数多く、日ごろからの安全対策に問い直しが迫られそうだ。


 福島署によると、死亡したのは「高湯温泉花月ハイランドホテル」の運営会社常務、星野博人さん(56)=福島市西中央3▽支配人、椛島豊久さん(63)=同市町庭坂▽従業員、佐藤幹也さん(67)=同市丸子。17日午後2時ごろ、山中にある源泉のメンテナンスに出掛けていた。同ホテルは報道各社に対し「業務の都合で、終日取材には応じられない」とコメントした。


 3人の死亡を受け、高湯温泉観光協会の遠藤淳一会長は「家族みたいに関わっていた。つらいね……」と悲痛な思いを語った。3人は現場の作業経験が豊富で、「どういう状況でこうなったのか、今は合点がいかない」と首をかしげた。


 高湯温泉は、活火山の吾妻山の中腹付近にあり、白く濁った硫黄泉で親しまれてきた。遠藤会長によると、一般的に源泉では、旅館に温泉を送るパイプに付着した湯の花をブラシで落としたり、装置を点検したりしている。源泉は硫化水素が発生するため、ガスマスクを着けて作業することもあるが、着けない場合もあるという。


 現場付近では、17日午後から湿った雪が降り続いていた。遠藤会長は「大雪で普段と環境が違ったのかもしれない。源泉の管理者は事故が起きないよう十分注意しなければならないが、事故が起きてしまった以上は専門家に相談して再発防止に努めたい」と話した。【松本ゆう雅】


相次ぐ火山ガスによる死亡事故


 火山ガスによる死亡事故は全国で相次いできた。県内では、1997年9月に安達太良山の沼ノ平火口で登山客4人が硫化水素による中毒で死亡した。2023年7月にも、やはり安達太良山の西側にある温泉の源泉近くで東京都内の男性(当時73歳)が倒れているのが見つかり、死亡が確認された。


 火山防災に詳しい磐梯山噴火記念館(北塩原村)の佐藤公(ひろし)館長によると、硫化水素は濃度が低いと卵が腐ったような臭いがするが、濃度が高くなると嗅覚がまひしてしまって臭いが分からなくなる。くぼ地に高濃度の硫化水素がたまり、登山客や温泉客が気付かずに入り込んで亡くなるケースもある。


 佐藤館長は、温泉の管理に携わる人たちについて「源泉に入る時には、必ず硫化水素対応のガスマスクを着け、濃度を測りながら調べて行くべきだ」と指摘したうえで、「温泉を利用する日本国民全員に向けて『火山ガスを勉強しましょう』と伝えなければならない」と注意を促した。【木村健二】



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  • 有毒ガス測る計器を装備するのをもう義務化するところまできていますね
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