フェブラリーSに出走予定のペイシャエス(撮影:山中博喜) 【文・構成:伊吹雅也(競馬評論家)=コラム『究極のAI予想!』】
netkeibaにある膨大な競走成績を人工知能によって機械学習するAiエスケープを開発したAIマスター・Mと、レースデータの分析を専門とする競馬評論家・伊吹雅也による今週末のメインレース展望。コンピュータの“脳”が導き出した注目馬の期待度を、人間の“脳”がさまざまな角度からチェックする。
(文・構成=伊吹雅也)
◆堅めの決着となった年も少なくないレースだが……
AIマスターM(以下、M) 先週は京都記念が行われ、単勝オッズ9.5倍(5番人気)のヨーホーレイクが優勝を果たしました。
伊吹 お見事と言うほかありませんね。まずまずのスタートを決めて流れに乗り、最内の5番手で1コーナーから2コーナーを通過。4コーナーで前の各馬を捕らえにかかり、ゴール前の直線入り口で逃げたバビット(4着)らのすぐ後ろにつけています。そのまま残り200m地点のあたりでバビットをかわし、単独先頭に。内ラチ沿いからリビアングラス(2着)が、外からマコトヴェリーキー(3着)が決勝線の手前で迫ったものの、最後までリードを保ち切りました。
ヨーホーレイクより後ろのポジションからレースを進めたソールオリエンス(5着)、チェルヴィニア(9着)が人気を裏切ってしまいましたし、序盤から中盤にかけての位置取りが明暗を分けた印象。鞍上の岩田望来騎手にとっても会心の勝利だったのではないでしょうか。
M ヨーホーレイクは自身3度目の重賞制覇。2020年のホープフルSで3着となった実績があり、2022年の日経新春杯で重賞初制覇を果たしましたが、その後に長期の休養を挟んだこともあって、今回がまだ通算12戦目です。
伊吹 母のクロウキャニオンは産駒の大半が上級条件まで出世している名繁殖牝馬。JRAのレースを使った仔はこれまでに16頭おり、そのうち13頭が2勝クラス以上のレースで馬券に絡んでいます。もっとも、JRA重賞を複数回勝ったのはこのヨーホーレイクが初めて。7歳とはいえまだまだ伸びしろがありそうですし、これからさらに母の名声を高めてくれるかもしれませんね。順調なら大阪杯を目指すとのことで、出走が叶えば非常に楽しみな存在。阪神芝2000m内へのコース替わりなど、克服しなければならない課題がいくつかあるとはいえ、チャンスは十分にあると見て良いでしょう。
M ちなみに、このヨーホーレイクは前回の当コラムでAiエスケープが注目馬に指名していました。
伊吹 前々回の当コラムでピックアップした東京新聞杯のボンドガールも2着を確保。良い流れに乗っていますし、この調子で本格的な春のGIシーズンを迎えることができれば心強いですね。昨春のヴィクトリアマイルでテンハッピーローズの指名に成功するなど、ハマった時の爆発力は折り紙つき。今後も期待しています。
M 今週の日曜東京メインレースは、上半期のダート王決定戦と位置付けられている今年最初のJRA・GI、フェブラリーS。昨年は単勝オッズ38.0倍(11番人気)のペプチドナイルが優勝を果たしました。ちなみに、その2024年は単勝オッズ13.0倍(5番人気)のガイアフォースが2着に、単勝オッズ48.2倍(13番人気)のセキフウが3着に食い込み、3連単153万500円の高額配当決着。波乱含みの一戦と見ておいた方が良いのでしょうか。
伊吹 過去10年のフェブラリーSにおける3連単の配当を振り返ってみると、平均値は22万6757円なのですが、中央値は2万8785円。大きく荒れた年もあるとはいえ、計10回のうち5回は2万円未満の低額配当決着です。
M 過去10年の単勝人気順別成績を見ても、1番人気馬の3着内率は8割に達しています。
伊吹 より実態に即した区切り方をすると、単勝2番人気から単勝5番人気の馬は2015年以降[4-6-4-26](3着内率35.0%)、単勝6番人気から単勝9番人気の馬は2015年以降[0-1-4-35](3着内率12.5%)、単勝10番人気以下の馬は2015年以降[1-1-1-65](3着内率4.4%)となっていました。人気薄の伏兵を狙っても良いと思うのですが、その場合も人気の中心となっている馬たちを安易に軽視してしまわないよう心掛けるべきでしょう。
M そんなフェブラリーSでAiエスケープが指名した特別登録時点の注目馬は、ペイシャエスです。
伊吹 面白いところを挙げてきましたね。除外の可能性もありますが、出走してきたら穴党の注目を集めそう。
M ペイシャエスは6歳馬。昨年のエルムSを勝っているうえ、3歳時にはジャパンダートダービーで2着に、JBCクラシックで3着に健闘しています。同じく3歳時に東京ダ1600mで行われたユニコーンSを制しており、コース適性の高さは証明済み。絶好の狙い時と見ていた方も多いのではないでしょうか。
伊吹 前走のチャンピオンズCも、8着どまりだったとはいえ勝ち馬との差は0.7秒でしたからね。ペイシャエスが出走できることを祈りつつ、他馬を評価する際にも使える当レースの傾向をひと通り見ていきますので、参考にしていただければ幸いです。
M 真っ先に注目しておくべきポイントはどのあたりだと考えていますか?
伊吹 まずは出走各馬の血統をチェックしておきたいところ。2020年以降の過去5年に限ると、エーピーインディ系種牡馬やサンデーサイレンス系種牡馬の産駒は期待を裏切りがちでした。
M なるほど。この両父系に属する種牡馬の産駒は強調できませんね。
伊吹 なお、父がエーピーインディ系種牡馬ならびにサンデーサイレンス系種牡馬、かつ前走の距離が1800m以下だった馬は2020年以降[0-0-1-25](3着内率3.8%)。2000m以上のレースをステップに臨む馬でない限り、上位に食い込む可能性は低いと見ておいた方が良さそうです。
M ペイシャエスは父がサンデーサイレンス系に属するエスポワールシチーで、前走の距離も1800m。残念ながら、この条件に引っ掛かっています。
伊吹 あとはこれまでの実績や脚質も見逃せないファクターのひとつ。同じく2020年以降の3着以内馬15頭中14頭は、“JRAの、重賞のレース”において“着順が1着、かつ4コーナー通過順が4番手以下”となった経験のある馬でした。
M JRAの重賞を勝っていない馬はもちろん、4コーナー3番手以内の先行策でしか重賞を勝ったことがない馬も、疑ってかかった方が良さそうですね。
伊吹 おっしゃる通り。今年はこの条件をクリアしていない馬が多いので、例年以上に重視した方が良いかもしれません。
M ペイシャエスは2022年のユニコーンS、2024年のエルムSを、それぞれ4コーナー4番手のポジションから勝っている馬。このレースに向いた脚質の実績馬と言えます。
伊吹 さらに、同じく2022年以降の3着以内馬15頭中10頭は、馬番が6番から11番でした。
M 内外極端な枠に入った馬は過信禁物、と。
伊吹 ただし、馬番が1番から5番ならびに12番から16番、かつ“東京ダの、重賞のレース”において“着順が1着、かつ4コーナー通過順が2番手以下”となった経験のある馬は、2020年以降[2-2-0-5](3着内44.4%)。東京の重賞を勝っているような馬であれば、枠順は不問と見て良いでしょう。
M 先程も触れた通り、ペイシャエスは2022年のユニコーンSを勝っている当コース巧者。枠順を気にする必要がない側の一頭です。
伊吹 もともと私も、除外対象でなければシルシを回すつもりでした。波に乗っているAiエスケープも有力と見ているわけですし、出走できたら目が離せませんね。残念ながらペイシャエスが除外となってしまった場合も、ペイシャエスに似た戦績の馬を中心とした買い目で臨みたいと思います。