フォンデアライエン欧州連合(EU)欧州委員長=11日、パリ(EPA時事) 【ワシントン時事】トランプ米大統領の就任から1カ月。欧州連合(EU)との貿易摩擦再燃への懸念が強まっている。トランプ氏は、米国が多額の貿易赤字を抱えるEUを繰り返し非難。EU側は米国による鉄鋼・アルミニウム関税への報復を検討する一方、米貿易赤字削減への協力姿勢も示しており、対立回避も模索している。
「欧州は結束し、市場の不安定化から欧州の鉄鋼・アルミ産業を守る決意だ」―。トランプ氏が鉄鋼とアルミへの25%の追加関税を打ち出した直後の12日、EUは貿易相会合を緊急開催。議長を務めたポーランドのパシク開発・技術相は、強気の姿勢を示した。フォンデアライエン欧州委員長も「断固とした相応の対抗措置を取る」と、報復関税を示唆する声明を発表した。
ただ、EU側は対立を避けたいのが本音。パシク氏は「米欧の積極的な協力を維持したい」とも表明。「報復は望む選択肢ではない」(アイルランドのハリス副首相)との声も上がる。
第1次トランプ政権下では、米国による鉄鋼・アルミ追加関税に対し、EUが米国産ウイスキーなどへの報復関税で応戦。バイデン前政権が一定量まで追加関税を適用しない「関税割り当て」を採用し、一時休戦となったものの、この期限が3月末に迫っている。
米シンクタンク「大西洋評議会」のバーバラ・マシューズ氏は、欧州経済が成長鈍化やエネルギーコスト上昇に苦しむ中、関税で米欧の供給網が混乱すれば、「経済へのさらなる圧力になる」と懸念する。
米国のモノの対EU貿易赤字は昨年、約2356億ドル(約36兆円)。トランプ氏は「EUは米国の自動車も農産物も受け入れない」と名指しで非難している。
18日には、自動車に25%程度の関税を課すと表明。医薬品や半導体など「分野別関税」に意欲を示した。関税や非関税障壁が高い国・地域に相応の関税を課す「相互関税」の検討も関係省庁に指示。「国・地域別関税」も導入する考えで、欧州との火種は増え続けている。