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東京都は、1月8日から都内でスギ花粉の飛散が始まったと発表しました。これは、調査を開始した1985年以来、一番早い飛散開始となります。
また、気象庁は1月21日に2月から4月までの3か月予報を発表。3月以降は全国的に気温が高めの傾向になる見通しで、春は高温傾向になる可能性が高くなっています。一般的にスギの雄花は気温が上がると花が開きやすくなり、さらに上昇気流によって花粉は空高く舞い上がり、広範囲に広がるため気温が高くなることで花粉の飛散量は増える傾向にあります。
花粉症対策に詳しい耳鼻科医の慶友銀座クリニック院長・大場俊彦先生は、花粉飛散量の多い年は花粉症を新たに発症したり、症状が重症化するケースが多くなると話します。
花粉症はくしゃみ、鼻水、目のかゆみなどのアレルギー症状を伴い、薬の副作用によるだるさなどで仕事や家事が手につかなくなったりと、生活の質を著しく下げます。
そこで今回は、大場先生が自身でも実践している花粉症対策についてご紹介します。
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花粉の影響を軽減! 外出時にすべき対策とは?
スギ花粉の影響をなるべく少なくするには、生活の中で対策を行うことが大切です。まず飛散状況の情報を毎日入手し、飛散量の多い日はなるべく外出を控えましょう。
外出時にはマスクや花粉対策用のメガネなどを使い、鼻や眼の粘膜に花粉がつかないようにしましょう。衣服や髪にも花粉がつくので、ダウンなどツルツル素材のコートや帽子を着用し、帰宅時は外でよく払ってから入室してください。
家の換気はなるべく最小限にして、花粉を家の中に入れないようにしましょう。掃除は念入りに行い、花粉を家の中から追い出しましょう。
花粉症に強いカラダを作るにはヨーグルトが効果的!?
近年の研究で、ヨーグルトなどの「プロバイオティクス」にアレルギー症状を改善する可能性があることがわかってきました。「プロバイオティクス」とは、腸内フローラのバランスを改善することによって宿主の健康に好影響を与える、生きた微生物と定義されています。
腸には体内の免疫細胞の約7〜8割が存在していると言われています。良好な腸内環境を保つことが免疫バランスの整いに繋がるため、結果花粉症に強いカラダを作れます。
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鼻アレルギー診療ガイド(2024年版)においても、「アレルギー性鼻炎症状を改善する有効なプロバイオティクスが存在する」としています。
油を摂取することでアレルギー症状が改善した報告も
アマニ油、エゴマ油、魚油などに多く含まれるオメガ3脂肪酸は、動脈硬化など心血管疾患の予防につながることで知られています。近年の研究では、アレルギー症状を改善するという報告が続々と発表されています。
鼻アレルギーのマウスがアマニ油を摂取すると、症状が改善し、アマニ油の代謝物が鼻アレルギー症状を起こす炎症物質を抑制すると報告されています。※1
花粉症は目のかゆみなどのアレルギー症状を併発しますが、アレルギー性結膜炎に対してアマニ油を摂取することにより、症状が改善したという研究報告も発表されています。※2
ツラい症状の軽減に「オイルヨーグルト」
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花粉の飛散量が増加する今シーズンは、ヨーグルトで腸内環境を整え、免疫のバランスをとり、オメガ3脂肪酸により炎症性物質を抑制することで、より一層花粉症への対策を強化する「オイルヨーグルト」を提案します。
これらはバラバラに摂るのではなく、時間がないときはヨーグルトにオイルをたらすだけでいいですし、毎日のレシピに取り入れてください。オイルヨーグルトは、調理においてソースやディップとして大活躍します。アレンジも豊富で、毎日食べても飽きずに続けられます。
2022年、日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会誌(※3)では、オメガ3脂肪酸であるα−リノレン酸由来の腸内細菌代謝物がアレルギー症状を起こす炎症性物質を抑制する働きがあることを報告しています。
また、アレルギー疾患の患者さんは、過剰な免疫応答を抑制する制御性T細胞の分化を促す物質を産生する腸内細菌の割合が少ないことがわかってきました。
腸内環境を整えるためにも、ヨーグルトを毎日の生活に取り入れ、アレルギー抑制の効果のあるオイルをプラスする「オイルヨーグルト」を習慣化していくことがアレルギー症状の軽減と健康増進に役立ちます。
慶友銀座クリニック院長・大場俊彦先生
慶應義塾大学院医学研究科博士課程修了。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医、日本レーザー医学会認定専門医、日本気管食道科学認定会専門医など。「いびき治療」や「補聴器外来」も行っている。
※1 澤根健人「食事性オメガ3脂肪酸によるアレルギー性鼻炎抑制メカニズム」大阪大学、2021
※2 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会誌 2(4):141−145,2022
※3 FASEB J.33,3392−3403(2019)
画像提供:株式会社innove