自動車関税“10倍”の衝撃 トランプ関税は脅しか、交渉カードか…日本が迫られる決断とは

15

2025年02月21日 20:10  まいどなニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

まいどなニュース

トランプ氏/americanspirit(c)123RF.COM

トランプ関税の嵐によって諸外国の間で動揺や混乱が広がる中、トランプ大統領は18日、米国に輸入される自動車への税率が25%前後になるとし、4月2日ごろに発動されるとの見方を示した。現時点で、トランプ大統領は特定国の名前を発表しておらず、全ての国が対象となる一律関税になる可能性がある。 

【写真】「北方領土ってこんなに大きいんだ」本州の大きさと重ねてみると…比較画像が話題に

しかし、一律25%の自動車関税ということになると、日本は大きな影響を受けることになる。外務省の情報によると、2022年に日本から米国へ輸出される品目は自動車、原動機、自動車部品、半導体製造装置、科学光学機器など多岐に渡るが、自動車だけで全体の24%とおよそ4分の1を占めている。また、2024年に日本から米国向けに輸出され自動車は133万台あまりに上り(トヨタが約53万台、マツダ約23万台、ホンダが約5400台など)、日本から輸出された乗用車全体の3分の1を占める。米国向けの自動車に対する現行の税率は2.5%であることから、発動されると関税率は10倍となる。

トランプ大統領が自動車関税を25%に引き上げようとする背景には、外国企業に対米投資を拡大させ、米国内での生産を促したい狙いがある。トランプ大統領は、米国が長年途上国向けの開発援助や人道支援、国際秩序の維持で主要な役割を担ってきたにも関わらず、それで経済発展を遂げた国々は安価な生産を大量生産し、それを米国へ輸出することで国内産業が衰退し、諸外国から経済的に搾取され続けてきたという不満を抱く。特に、国内の製造業の衰退に強い危機感を抱いており、外国の製造品に高い関税を掛けることで、外国企業の対米投資、米国内での生産強化を促進させ、製造業の復活と雇用拡大を狙っているのだ。

一方、自動車関税が10倍になる可能性から、日本の自動車メーカーなどからは当然にように強い懸念が聞かれる。日本が関税25%の適用除外となることが望ましいが、自動車メーカーなどからは、一律関税となれば非関税国からの輸出という選択肢は消えるので、米国内での生産強化しか選択肢は残らないという声が聞かれる。

今日、自動車関税をめぐる動向で、ボールは日本側にある。トランプ大統領は脅しとしての関税と発動する関税を巧みに操ることで、諸外国から最大限の譲歩や利益を引き出そうとする。既に25%の自動車関税について具体的に言及しているが、これは脅しとしてのトランプ関税の可能性もあり、今後日本が適用除外を米国を要請すれば、トランプ大統領はそれを受け入れる条件として、日本へ新たな要求を突き付けるシナリオが現実的だろう。米国から日本へ輸出される品目では、米や肉類などに高い関税が掛けられているが、こういった品目への税率を下げるよう日本へ圧力を加えてくる可能性があろう。正に、トランプ大統領が得意とするディールである。

仮に、上述ようなシナリオになれば、日本の自動車業界にとっては一安心となるが、反対に他の業界業種が影響を受けることになる。今後どうなっていくかの予測は難しいが、日本は全体としてその影響を受けることになろう。

◆和田大樹(わだ・だいじゅ)外交・安全保障研究者 株式会社 Strategic Intelligence 代表取締役 CEO、一般社団法人日本カウンターインテリジェンス協会理事、清和大学講師などを兼務。研究分野としては、国際政治学、安全保障論、国際テロリズム論、経済安全保障など。大学研究者である一方、実務家として海外に進出する企業向けに地政学・経済安全保障リスクのコンサルティング業務(情報提供、助言、セミナーなど)を行っている。

動画・画像が表示されない場合はこちら

このニュースに関するつぶやき

  • これは米国民がかなり痛い状況だな。先ずIRA法での控除が無くなり、外国車が25%値上がりすると暫くは高い車を買うことになる。米国生産が進めばあまり関係なくなるけどな。
    • イイネ!5
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(12件)

ニュース設定