軽キャノンはジム枠なのか?『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』ガンダムの“楽しさ”を濃縮した設定の妙

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2025年02月25日 08:00  リアルサウンド

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HG 機動戦士Gundam GQuuuuuuX 軽キャノン 1/144スケール (BANDAI SPIRITS)

 先日、『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』関連の新作プラモデルの予約が開始され、瞬く間に全アイテムの予約枠が埋まってしまった。その際に発表された新作キットの中でも一際目を引いたのが、「軽キャノン」のプラモデルである。


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 『GQuuuuuuX Beginning』の冒頭では、連邦軍のモビルスーツが開発されていたサイド7をシャアのモビルスーツ部隊が襲撃し、ガンダムとペガサスを強奪した。これによって、連邦側の新モビルスーツの開発・量産計画には大きな狂いが生じる。そんなトラブルを受けて開発されたのが、「軽キャノン」である。


 軽キャノンの見た目は、なかなか独特だ。胴体の形状はほとんど『GQuuuuuuX』版ガンキャノンだが、手脚の形状は『GQuuuuuuX』版ガンダムとほぼ同じになっており、「ちょっとスレンダーになったガンキャノン」といった趣である。さらに両肩に装備されていたビーム・キャノン砲は右肩のみに減らされており、左肩にはビームサーベルを搭載。どこかで見たようなモビルスーツだけど、よく見ると今までのどの機体にも似ていないという絶妙なラインに収まっている


 『GQuuuuuuX』のパンフレットによれば、軽キャノンの正式な機体名称は「RGM-79 軽キャノン」。英語表記は「LIGHT-TYPE GUNCANNON」である。「コア・ブロック・システム採用機として継続開発された」「ガンダムの開発データを用いた白兵戦能力と、ガンキャノンの砲撃戦能力を組み合わせた構成」「生産性の向上を目指してか、ルナ・チタニウム合金製」とも書かれている。


 なかなか興味深い設定だ。俗称や英語表記からすると、あくまでこの機体は「軽量型のガンキャノン」であり、赤い塗装や胴体部分の形状が『GQuuuuuuX』版ガンキャノンに近いことを考えれば、その位置付けも頷ける。ただ、型番は「RGM-79」であり、こちらは初代『機動戦士ガンダム』に登場したジム(GM)の型番と同じ。つまり「シャアのせいでガンキャノンベースの機体になっちゃいましたが、今作でのジム枠はこのモビルスーツですよ」と、ネーミングと型番だけで主張しているわけである。


 さらに設定の話を書けば、ジムはあくまでガンダムをベースに量産された機体ということになっている。だが一方でコア・ブロック・システムは簡略化されており、この辺りに関しては軽キャノンの方が作りがリッチだ。また、ジムは生産コストの観点からチタン系合金を装甲材として使用したが、軽キャノンは試験機であるガンダムと同じルナ・チタニウム合金を使っていると書かれている。こういった設定を鑑みるに、構造的にも素材的にも軽キャノンはジムほど大量に数を揃えることができるモビルスーツではないように思う。


 一般に「連邦軍は物量でジオン軍に勝った」と解説されがちだが、『GQuuuuuuX』の連邦軍がジオン軍に敗北したのは、ジムに比べると生産性に難がある軽キャノンを主力モビルスーツにせざるを得なかったことで、物量差を活かした戦い方ができなかったからではないか……という推測も成り立つ。軽キャノンが主力になったのはシャアがガンダムとペガサスを強奪したからなわけで、そうなるとガンダム強奪によって連邦軍のモビルスーツ開発計画を大きく狂わせた『GQuuuuuuX』のシャアは、本当に一人で戦局をひっくり返してしまったことになる。すごいな、シャア。


 軽キャノンのコア・ブロック・システムやルナチタニウム合金に関する設定については、「筋のいいパロディ」という雰囲気がある。『GQuuuuuuX』の前半部分に関しては、そもそもが「もしも『機動戦士ガンダム』第1話でシャア自身がサイド7に突入していたら」というマニアのヨタ話を大きく膨らませたような内容だ。そして軽キャノンについては、そこから派生した設定遊びのような趣がある。「コア・ブロック・システムを使えばガンキャノンの胴体とガンダムの下半身をくっつけられるんだから、そこから簡単に量産機が作れるじゃん!」という無理のない流れは、まさにマニアックな視点からしか見つけることができないものだろう。これをスッと出してくるあたり、『GQuuuuuuX』スタッフ陣の並々ならぬパロディ筋の強さを感じる。


 そもそも、作中の設定を掘り出しては重箱の隅を突いてあれこれ言うのは、ガンダムシリーズの大きな楽しみのひとつだ。その場しのぎの量産機にして連邦敗北の原因かもしれない軽キャノンは、そんな設定遊びの妙を感じられるモビルスーツと言っていい。しかもソロモン戦に出撃した特別塗装の機体には、セイラさんが乗ってたらしいじゃないですか……。こういうエピソードをつまみにガタガタ言うのはやはり楽しいわけで、してみると軽キャノンにはガンダムの楽しさの一側面が濃縮されて詰まっているように思う。


 『Beginning』で大活躍したとは言い難い機体ながら、シャア専用ザクやキケロガよりもずっと早くプラモデル化が発表されたあたり、『GQuuuuuuX』本編での軽キャノンには想像していたよりも見せ場があるのかもしれない。考えてみれば、クランバトルではザクしか使ってはいけないというルールはない。連邦側の払い下げ機体が戦ってもいいだろうし、一年戦争停戦後の連邦軍のテリトリーではいまだに現役という可能性もある。なんせ相手は『GQuuuuuuX』なので、何をしてくるか読めないのだ。ひとまずはこれまでに発表されている設定をしゃぶり倒しつつ、本編放送を待ちたいところである。


(文=しげる)



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