自民党本部=東京都千代田区 政府が今国会での提出を目指す年金制度改革関連法案について、自民党内で今夏の参院選後に提出を先送りする案が浮上している。改革の目玉である基礎年金(国民年金)の底上げ策導入に伴い、新たな国民負担が生じ、党内で「有権者に説明できない」といった異論が根強いためだ。少数与党で厳しい国会運営を強いられる中、参院選前に野党や世論の批判を避ける狙いもある。
全ての人が受け取る基礎年金は、少子高齢化でも制度を持続させる「マクロ経済スライド」という仕組みで目減りが続き、将来世代の年金水準が大きく低下する見通し。このため厚生労働省は、厚生年金の積立金や国費を活用して給付水準を底上げする制度を法案に盛り込む方針だ。
ただ、追加の国庫負担が最大で年2兆円規模に上るなど国民負担が避けられず、本格実施の判断は与党との調整で2029年以降に。さらに制度の複雑さにも批判があり、河野太郎元デジタル相は「(積立金活用は)厚生年金保険料の流用ではないか」と疑問を呈している。
党内のこうした動向を踏まえ、ある自民幹部は「(今国会に)法案を提出しない方が良いという意見もある」と明かす。別の幹部は「党内で政府案を議論してみないと分からない」としており、先行きが見通せない状況だ。政府内には批判が多い改革項目を除いて法案提出を目指す動きもあり、政府・与党は法案提出期限とされる3月中旬までぎりぎりの調整を続ける。
さらに、少数与党の国会では法案の成立が見通せない中、「与野党で年金改革を協議すべきだ」(河野氏)との声も出ている。