営業先に「日程調整ツール」を送ったらクレームに…… これって失礼?

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2025年02月27日 08:21  ITmedia ビジネスオンライン

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日程調整ツールのリンクを送ったらクレームを受けてしまった(イメージ)

 「便利なものを使ったのに、まさかクレームになるとは……」


【画像】日程調整ツールは便利なことは確かだが……


 とある営業パーソンが嘆いていた。この営業パーソンはIT業界で7年以上のキャリアを持つベテラン。お客さまから問い合わせを受け、打ち合わせのアポイントが欲しいと思った。そしてお客さまからも評価されている「日程調整ツール」のリンクを送った。


 ところが数分後、電話がかかってきた。


 「なんですか、このリンクは? 私の予定を勝手に入れろというんですか?」


 と激怒する声。その営業は慌てて謝罪し、電話でアポイントを取り付けた。


 それにしても、なぜみんなが使っている便利なツールなのに、なぜ怒られたのか? そこで今回は、日程調整ツールを使った際に、なぜお客さまが不快に感じるのか? その理由と解決策について解説する。営業はもちろんのこと、外部の人とスケジュール調整する機会の多い人は、ぜひ最後まで読んでもらいたい。


●そもそも日程調整ツールとは何か?


 日程調整ツールとは、複数人の予定を効率的に調整するための支援ツールだ。日本でも多くのツールが使われている。


 メールや電話でやりとりしながら日程調整すると、「この日はご都合いかがでしょうか?」「その日は予定があるので、別の日はいかがでしょう?」というやりとりが何度も続く。確かに非効率だ。日程調整ツールを使えば、営業の空き時間をお客さまに提示し、都合のいい時間を選んでもらうだけで簡単に予定が決まる。


 私自身も、多くの人から日程調整をする際に入力を促される。複数のゲストスピーカーが集まる講演の日程調整や、経営者仲間との懇親会のスケジュール調整が大半か。確かに使ってみると便利だ(私自身は使っていない)。


 ちなみに、米国における日程調整ツールの導入率は非常に高いようだ。調査によると2019年時点でビジネスパーソンの約67%が、パンデミック後の2021年には74%近くが利用しているとのこと。


 特に小規模ビジネスにおいては95%が日程調整ツールを利用しているとのデータもある。日本では、まだそれほど普及していないが、米国ではほぼ標準的な業務ツールとして普及していることがよく分かる。


●日程調整ツールのメリット:営業側にとって


 日程調整ツールがここまで普及したのには理由がある。営業側にとって次のようなメリットがあるからだ。


効率化できる


 日程調整のためのメールの往復が減り、本来の営業活動に集中できる。例えば10件のアポイント調整で、1件あたり5通のメールをやりとりしていたら大変だ。その代わり、日程調整ツールを使えば50通近いメールを削減できる。


ダブルブッキングを防止できる


 日程調整ツールは自分のカレンダーと連携している。そのため、既に予定が入っている時間帯には予約を入れられない仕組みになっている。これは本当に便利な機能だ。手動で予定を管理している人は、ダブルブッキングという凡ミスを防げる。


24時間対応できる


 営業担当者が不在でも、顧客は自分の都合のいい時間にアポイントを入れられる。深夜に問い合わせがあっても、翌朝にはアポイントが確定している、なんてこともあるのだ。


●日程調整ツールのメリット(顧客にとっての)


 お客さまからすれば「営業のツールなんて関係ない」と思うかもしれない。しかし、実は日程調整ツールはお客さまにもいくつかのメリットをもたらすといわれる。2つ紹介しよう。


手間が省ける


 営業のみならず、お客さま側も、いちいちメールで「この日は?」「では次の候補は?」と往復するやりとりがなくなる。これも大きなメリットだ。


 提示された予約ページから都合のいい日時を選ぶだけで終わる。ある調査では、日程調整ツールのURLを受け取っても「失礼ではない」と回答した人の理由として「効率的に日程調整ができるから」が挙げられている。受ける側も効率性を評価していることが分かる。


待ち時間がなくすぐに確定する


 メールでのやりとりだと、相手からの返信を待つ時間が発生する。「日程は追って連絡します」といわれて数日たっても営業からの連絡がなく、熱意が冷めてしまうこともある。日程調整ツールなら即座に予約が完了する。いつ打ち合わせができるのかがすぐに確定するため、お客さま側も他の予定が立てやすくなる。


●イライラするお客さまが約7%も存在する


 営業はもちろんのこと、お客さまにとってもメリットのある日程調整ツール。しかし、この便利ツールを使うことに不快感を覚える人もいるのだ。


 日程調整ツールとして広く使われている「調整さん」「TimeReX」を提供するミクステンドの調査によると、日程調整ツールのURLを受け取った際に「失礼だと感じた」という回答が約7.4%あったという。7%と聞くと少ないように思えるかもしれない。しかし10社に提案して1社近くが不快に思うとすれば、無視できない数字ともいえる。


 なぜ、便利なはずの日程調整ツールがお客さまの怒りを買うことがあるのか。主な理由は次の3つだ。


●日程調整ツールを使うとイライラされる原因3つ


 日程調整ツールを使うとイライラされる原因は、以下の3つだと考えられる。


会うことが前提の姿勢だから


 最も多い理由が「承諾前なのに会うことを前提とした姿勢だから」だ。調査では不快に感じた人の56.5%がこの理由を挙げていた。


 例えば、初めての営業からいきなり「以下のリンクから都合のいい日時を選んでください」とメールが届くと、「そもそも会う気があるかどうかも確認せずに進めるなんて失礼だ」と感じるお客さまがいる。


 正直なところ、私もそう感じたことがある。なぜ、いきなり日程調整ツールを使わせようとするのか、と。


上から目線を感じるから


 次に多いのが、営業の「上から目線」だ。営業には慣れているが、自分には慣れていない。そんな慣れない日程調整ツールをなぜ、営業の都合で使わなければいけないのか。断りもなく、


 「使って当たり前」


 という営業の姿勢に「上から目線」を覚えるのだろう。


 そもそも、候補日を出して選ぶだけで済むのに、突然URLを渡される。そしてクリックすると、見たこともないツールが表示される。自分が病院の予約をしたいというのならともかく、自分はお客さまだ。なぜお客さまの私が日程を、営業の空いている日に合わせて選ばなければならないのか。そう受け止めるお客さまも、ゼロではないのだ。


●相手に配慮したやりとりをしよう


 日程調整ツールを使う際に、どのような配慮があればお客さまの反感を買わずに済むのだろうか? 私が考えるポイントは以下の3つだ。


事前に会う意思があるか確認する


 いきなり日程調整ツールのURLは送るべきでない。まず「お話させていただく機会をいただけないでしょうか」と打診し、相手が会う意思を示した段階で調整ツールを案内する。


 「ご検討いただきありがとうございます。もしお時間をいただけるようでしたら、下記リンクより、ご都合のよい日時をお選びいただければ幸いです」


 このように、丁寧なメールを一本送ったほうがいいだろう。


丁寧な言葉遣いと説明を添える


 日程調整ツールのURLを送る際は、その意図や使い方を簡潔に説明しよう。特に大事なのは「意図」だ。そうすることで、押し付けがましい印象を和らげる。


 「より効率的にお時間を調整させていただくため、日程調整ツールを使用しております。リンクをクリックいただくと、私の空き時間が表示されますので、ご都合のよい時間をお選びください」


代替手段も提示する


 日程調整ツールが合わない場合の対応方法も伝えておくと、さらにいいだろう。


 「もし候補の中に適切な時間がない場合や、ツールの使用にご不便を感じられる場合は、遠慮なくご連絡ください。メール等で、別途調整させていただきます」


●特に気を付けるべき相手とは?


 全てのお客さまに一律に日程調整ツールを使うのではなく、相手によって使い分けることも大切だ。


 特に注意すべき相手は次の通り。


初めての接触相手


 特に初めて会う相手や、まだ関係構築ができていない段階では、丁寧な対応を心掛けたほうがいい。


年配の方


 若い世代と比べて、デジタルツールに不慣れな傾向がある。場合によっては電話での調整のほうがスムーズに進むこともある。


役職の高い方


 会社の意思決定者や上層部の方は、「敬意」を重視する傾向がある。こういった方には日程調整ツールを使う前に、より丁寧な前置きを心掛けるとよい。


 私が日程調整ツールを使わないのは、私のお客さまのほとんどが「年配の経営者」だからだ。相手が何も言わなくても、気分を悪くしている可能性もある。だから少し不便でも、メールで候補日を送るようにしている。そのほうが安全だからだ。


●まとめ


 日程調整ツールは確かに便利だ。しかし使い方一つで相手に不快感を与えかねない。重要なのは「ツールを使う」という事実よりも、「相手への配慮」をどれだけ示せるかだろう。お客さまとの関係構築という本来の目的を見失わないように意識することが大切だ。


 どうすれば相手に失礼にならず、かつ効率的に日程調整できるか? たかが日程調整、されど日程調整だ。たまに立ち止まって、バランス感覚を見直そう。


著者プロフィール・横山信弘(よこやまのぶひろ)


企業の現場に入り、営業目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の考案者として知られる。15年間で3000回以上のセミナーや書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。現在YouTubeチャンネル「予材管理大学」が人気を博し、経営者、営業マネジャーが視聴する。『絶対達成バイブル』など「絶対達成」シリーズの著者であり、多くはアジアを中心に翻訳版が発売されている。



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  • 昔から政府、特に労働関係の役場で「日本統一アポイント帳」がいるのでは?って思ってた。 勿論ログインで完全に個別のセキュリティ。その中で共有相手を指定する格好。
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