肉の代わりにゆで卵? 200万個売れた「キユーピーのたまご」、ヒットの殻を破ったワケ

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2025年02月28日 11:21  ITmedia ビジネスオンライン

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「キユーピーのたまご タレで食べる」が人気

 「キユーピーのたまご タレで食べる」シリーズが好調だ。2024年春の発売から1年で200万個を販売し、計画比の4倍という売れ行きを記録した。3月6日にはシリーズ第2弾となる「麻辣ダレで食べる 担々風たまご」も発売する。ヒットの背景には、何があるのか。


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 同シリーズは、刻み野菜が入った特製タレと、ゆで卵2個をスタンドパウチ(自立できる袋状の容器)に入れた商品だ。開封してそのまま食べられる手軽さが特徴で、ご飯のおかずやおつまみとして支持されている。


 唐辛子とにんにくを効かせた韓国風の「うま辛たまご」、ごま油とにんにくが香る「ねぎ塩たまご」の2種類を展開している。


 3月から新たに発売する「麻辣ダレで食べる 担々風たまご」は、唐辛子と花椒(ホアジャオ。中国原産の調味料)を効かせた本格的な麻辣ダレに、たけのこや大豆ミートなどの具材を加えた。


 ご飯や酒との相性を意識しながら、麺メニューのトッピングとしても楽しめるようにした。いずれもオープン価格(350円前後で販売)で、ローソンとファミリーマート、スーパーなどで販売している。


●「味付けゆで卵」の市場規模


 シリーズ発売前の2022〜23年は、鳥インフルエンザの影響で卵の価格が高騰し、国内の卵消費は停滞していた。マヨネーズの主原料である卵を長年扱ってきたキユーピーは、この市場環境下でも成長が見込める方法を模索した。


 「卵市場全体のトレンドは下降傾向だったが、20〜30代の男性を中心にゆで卵を食事に取り入れる割合が高まっていることに着目した」と、同社マーケティング本部の小野寺昭さんは振り返る。


 キユーピーの調べによると、味付けゆで卵市場は2013年対比で約3倍の約30億円規模に成長している。背景にあるのは、時間をかけて調理するより「買って食べる」という「タイパ重視」の消費行動だ。


 ゆで卵は、湯を沸かして卵をゆで、冷やしてから殻をむいて食べるというシンプルな料理だが、意外に時間と手間がかかる。「市販のゆで卵を試すと手軽さを実感し、リピートにつながっていると考えた」(小野寺さん)


 また、SNSでは「麻薬卵(香辛料を効かせた味付け卵)」がトレンドになるなど、若年層を中心にゆで卵の食シーンに変化が見えた。同社の「たまご白書2024」によると、20〜30代では朝食だけでなく夕食にもゆで卵を消費する傾向が強く、特に20代男性は、ゆで卵をご飯のおかずとして食べる割合が他の年代より2割以上高かった。


 そこで、キユーピーは時短と若年層の新しい食べ方、2つのニーズを同時に満たしつつ、卵市場の拡大に貢献する商品として「タレで食べる」シリーズの開発に着手した。


●卵と野菜の研究チームを統合


 開発では、野菜とゆで卵の最適な保存方法が異なることが課題となった。「野菜は酢などで保存し、ゆで卵は加熱でコントロールする必要があったが、酢が強すぎると卵まで酸っぱくなり、加熱が強すぎると野菜がしおれるので、卵の食感が変わってしまう。このバランス調整に苦心した」と小野寺さんは振り返る。


 最適な保存方法を模索するため開発体制を見直し、それまで別々だった野菜と卵の研究チームをひとつに統合した。両チームを組み合わせるプロジェクトは、キユーピーにとって初の試みだったが、知見を合わせて試作を重ねた結果、新たな技術の開発に成功。最適な保存方法の実現につながった。


 味つけは約20種類の候補から選定。バリエーションを増やすだけでなく、ゆで卵の食べ方を広げる視点で開発した。「ねぎ塩味は、焼き鳥屋や焼肉屋のタレを参考に、肉の代わりに卵を食べる想定で味付けした」と小野寺さんは語る。


 第1弾の発売後も改良は続いた。SNSで多くの消費者がご飯に乗せて食べている様子が見られたため、「より半熟のほうがお米との相性が良い」という声に応え、2024年9月には黄身の半熟感を高めた商品へとリニューアルした。


●売り上げの6割はコンビニ


 発売直後から反響は大きく、売り上げは計画の4倍を記録したという。SNS上では、豆腐に乗せた冷やし麻婆豆腐風、ねぎ塩たまごをサラダチキンと組み合わせるなど、オリジナルのアレンジレシピも拡散した。


 購入層も多様化しており、当初想定していた20〜30代に加え、50代男性の単身者層にも支持が広がっている。特にコンビニでの購買比率が高く、全体売り上げの約6割を占める。「販売データを分析するとリピート率が高く、コアなファン層が形成されている」(小野寺さん)


 また、コンビニダイエットの一環として取り入れる人もいた。糖質オフ麺と豆乳を組み合わせ、「旨辛たまご」のタレで味付けした「なんちゃって豚骨ラーメン」のような「ジャンクな味わいでありながらヘルシー」といった楽しみ方も生まれている。


 一方で、卵の市場価格は上昇トレンドにある。今後の対応について、現時点で明確な見通しは立っていないが、当面は購入しやすい価格を維持していくという。


●ゆで卵の食シーン拡大を目指す


 2026年に向けて、新商品の開発が進んでいる。これまで朝食で食べることが多かったゆで卵が、夕食にも取り入れられるようになり、パンと合わせる食べ方から、ご飯や麺と組み合わせるスタイルへと広がっている。この変化に合わせて、新たな食べ方を提案し、市場の拡大を目指している。


 「朝食用」「ラーメンと食べる用」「夜のおつまみ用」といった食シーン別の区分や、味わいの特徴による区分で商品を整理した売り場づくりを構想している。「味のバリエーションを増やすだけでなく、食シーンの拡大に注力していく」と小野寺さんは語る。


 「キユーピーのたまご タレで食べる」シリーズは、味付けゆで卵市場の拡大と、若年層における食習慣の変化を捉えたことでヒットした。新たなニーズの発見と食べ方を創造することで、停滞市場を活性化させた好例といえる。


(カワブチカズキ)



このニュースに関するつぶやき

  • 袋にゆで卵と、マヨネーズたっぷり入れとけば良いんじゃね?卵サンドの具に自分の好きな潰し具合で使うか、ピザデブなら「飲み込めるから飲み物、だからゼロカロリー」ってそのまま飲み込む
    • イイネ!2
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