プレミアリーグ移籍市場で話題の日本人選手たち 専門家も「やはり三笘薫は注目を集めている」

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2025年03月01日 07:31  webスポルティーバ

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プレミアリーグ移籍事情 後編

 世界最大のサッカー移籍情報サイト『Transfermarkt.com』の英国担当ステファン・ビエンコフスキ氏に今冬のプレミアリーグ移籍事情を聞く後編。夏に3人の大物が契約満了を迎えるリバプールや、注目の日本人選手を語ってもらった。

前編「エキスパートが語る今冬の移籍傾向」>>

【注目される日本人選手たち】

――まず、日本人選手についてお聞きします。今季のプレミアリーグには5人の日本人選手が所属していますが、移籍という観点で興味深いのは誰でしょうか?

「やはりブライトンの三笘薫は注目を集めています。プレミアリーグでも最高のドリブラーのひとりと認識されていますし、ブライトンには不可欠な選手なので、サウジアラビアからの巨額のオファーを断ったことも理解できます。

 クリスタル・パレスの鎌田大地は、旧知のオリバー・グラスナー監督とロンドンで再会しましたが、まだ本領発揮には至っていませんね。それでも技術と知性、汎用性の高い彼はグラスナー監督にとって貴重な選手だと思います。

 サウサンプトンの菅原由勢は1年目のプレミアリーグでも、問題なくプレーできるところを示しています。最下位に沈み続ける現所属先がこのまま降格したとしても、彼は個人的に移籍して、プレミアリーグに"残留"できるような気がしています。まだ24歳ですし、クオリティはこのリーグのレベルにあると思います。

 リバプールの遠藤航にはちょっと同情を禁じえません。昨夏にユルゲン・クロップに請われて入団し、昨季は途中からレギュラーとなりましたが、今季からチームの指揮を執るアルネ・スロット新監督は同胞のライアン・フラーフェンベルフを重用しています。とはいえ、出場すればハイレベルなパフォーマンスを見せていますし、リバプールは最近、これまでにローテーションをあまり使わなかったからか、レギュラーに明らかに疲れが見え始めているので、これから遠藤の出番が増える可能性はあると思います」

――ビエンコフスキさんはスコットランド在住だそうですが、セルティックの日本人選手はどう見ていますか?

「もちろん、しっかりカバーしています。旗手怜央と前田大然については、ファンから賞賛の声しか聞こえてきません。特に今季はチャンピオンズリーグで活躍したので――プレーオフではバイエルンと好勝負を演じました――、市場価値も高まりそうです。セルティックをはじめ、スコットランドのチームは欧州カップ戦で活躍すると、一気に注目される傾向にあります。古橋亨梧は冬に推定1200万ユーロでスタッド・レンヌに引き抜かれましたが、旗手と前田が続いても驚かないですね」

――チャンピオンシップ(イングランド2部)にも日本人選手がいて、その数は8人です。注目されている選手や移籍が噂されている選手はいますか?

「首位を快走しているリーズの田中碧は、ダニエル・ファルケ監督の信頼を掴み、中盤の主軸としてチームを支えています。このまま優勝を遂げてもおかしくないですし、そうなったらチームと共にプレミアリーグに昇格するか、もともとのプレミアリーグ勢に獲得されることも考えられます。移籍に関しても、チャンピオンシップは予断を許しませんから」

【リバプールは超優良運営クラブ】

――先の冬の移籍市場で最大の焦点のひとつとなったのが、リバプールのトレント・アレクサンダー=アーノルドのレアル・マドリードへの移籍でした。結局、契約には至りませんでしたが、彼は今季終了時に現行契約が満了するので、マドリーは今夏、昨年のキリアン・エムバペに続いて、最高のタレントをフリーで迎えられるかもしれません。リバプールとしては、モハメド・サラーとフィルジル・ファン・ダイクも同じ状況にあるので、主力の3人を一気にフリーで手放すことになれば、悪夢ですね。

「そうかもしれないですね。ただ個人的には、アレクサンダー=アーノルドは攻撃面では最高のサイドバックだと思いますが、守備面には今も問題があると思います。そしてリバプールでは21歳のライトバック、コナー・ブラッドリーが台頭していますし、レアル・マドリードに誘われたら、ノーと言うのは難しい。こうした状況を考慮すると、あるいはこの3人のうち、もっとも移籍の可能性が高いのは26歳のアレクサンダー=アーノルドかもしれません。

 一方、32歳のサラーはこの年齢にして、今まさにキャリアハイと言えるほどの活躍を披露しています。プレミアリーグの得点とアシストの両ランキングで、後続に大きな差をつけてトップを走っているなんて、信じられないことです。ただし年齢を考えると、このパフォーマンスがいつまで続くかはわからない。加齢とともにケガもしやすくなりますし、急に調子が落ちることもないとは言えない。おそらくクラブとしては単年契約を結びたいはずで、そのあたりで交渉がこじれているのかもしれませんね。33歳のファン・ダイクにも同じことが言えると思います。

 リバプールは人件費がマンチェスター・シティ、チェルシー、マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、そしてアストン・ビラよりも低いにもかかわらず、現在のプレミアリーグで首位に立っています。つまり彼らはイングランド、いや欧州、あるいは世界でもっとも優れた運営がなされているクラブと言えます。それだけに、ベテランと複数年契約を結ぶようなことは、基本的にしないのです」

――アレクサンダー=アーノルドは生え抜きの選手なので、売却して移籍金が入ればそのままクラブの利益になります。昨今、プレミアリーグの利益と持続可能性のルール(PSR)を守るには、この方法がもっとも合理的だと考えるクラブが増えていて、チェルシーやマンチェスター・シティ、マンチェスター・ユナイテッドらは、サポーターの心情や彼らとの結びつきよりもこちらを優先し、生え抜きの選手を次々に手放しています。

「おっしゃる通りです。その意味で、リバプールはアレクサンダー=アーノルドを売却したほうが、財政面は間違いなく安定すると言えます。ただしフリーで出て行かれると話はまったく違うので、いずれにせよ新契約を結ぶべきでしょう」

【ブラジル、メキシコも移籍で盛り上がる】

――FIFAによると、今冬の移籍市場では史上最高額となる計23億5000万ドルが、世界のフットボールクラブに費やされたそうです。やはり、単体ではマンチェスター・シティの2億2400万ドルがトップで、リーグではプレミアリーグの62億1600万ドルが最高でした。

「もともとプレミアリーグ勢が財力と競争力で他を圧倒していたところに、シティが思わぬ不調に陥ったことで、全体の出費が急増したと言えるでしょう」

――ただ他国から獲得した選手の数だと、なんと、ブラジルがもっとも多かったそうです。2021年から始まったSAFと呼ばれる新たなクラブモデルが奏功しているのでしょうか?

「そうでしょうね。国内外の投資家に開かれたリーグとなり、スポンサー料やテレビ放映権料が年々、高まっているようです。それを人件費に費やし、より魅力的なリーグにしようとしているのではないでしょうか」

――この冬にセルヒオ・ラモス(モンテレイへ)とハメス・ロドリゲス(レオンへ)が移ったメキシコ・リーグも盛り上がっているようです。

「クラブワールドカップに出場できることが大きいと思いますが、欧州以外にもレベルの高いリーグが増えるのはいいことですね」

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