日本でも進むマンガの“分業制”は「働き方改革」に繋がるのか? 国産webtoonの更なる可能性

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2025年03月01日 08:30  ORICON NEWS

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LINEマンガ『ドクタークエスト 転落医師、転生して最強医師になる』(C)nifuni
 昨今、日本でも浸透してきたwebtoon作品。韓国で制作された作品が多い中、国産のwebtoon作品が勢いをつけている。そんななか、リメイク版『左ききのエレン』(集英社/原作・かっぴー)で話題になった、nifuni先生初のwebtoon作品『ドクタークエスト 転落医師、転生して最強医師になる』がLINEマンガで連載をスタート。作画のnifuni先生に、webtoon作品へ挑戦する思いや、マンガ家から見た国産webtoonのこれからの可能性についてなど、話を聞いた。

【漫画】まさかの医師×転生? 『左ききのエレン』マンガ家が描く衝撃の第1話

■1人で続ける連載マンガは大きな負担も…、webtoonは働き方改革になる?

 nifuni先生は、2017年に少年ジャンプ+『左ききのエレン』でマンガ家デビュー。2024年12月からLINEマンガで『ドクタークエスト 転落医師、転生して最強医師になる』の連載が開始し、初日に総合ランキング第1位を獲得するなど、話題を呼んでいる。

――これが初めてのwebtoon。フルカラーである点や、コマ割りを含めて横読みのマンガとは魅せ方も変わる部分もあると思いますが、どのような苦労があったのでしょうか。

【nifuni先生】 本作は今まで行ってきた横読みのマンガ作りとは大きく異なり、チームで制作しています。私はコマ割り担当からバトンを受け継いでキャラクターだけを描き、次の工程にお渡しするという感じですね。この“前後”があるというのが、横読みマンガとは違う感覚で、最初はやはりちょっと慣れなかったです。面白いやり方だなと思う反面、自分だけがわかるような形で渡すわけにはいかないというか…。

――1人じゃないからこその苦労がある。

【nifuni先生】 次の工程を考えた上で渡す準備をしなければならない、というのは初体験でした。どこまで配慮して、どこからお任せしていいのか?は探り探り。連載を進めていく中で、だんだん阿吽の呼吸みたいなものができていくのでしょうが、最初は不安でした。

――ご自身が意図されたことではないイメージで伝わる可能性も考えられますか?

【nifuni先生】 こだわりの演出がある場合は、赤字を入れて説明したりしますが、やはり「このキャラはこういう感じではない」など、リテイクを出すことも最初はありました。ここまで大勢の工程になると、後ろの方では全然違う風に伝わってしまう可能性もあるので、そのあたりは気をつけました。でも聞くところによると、他の工程の方も楽しんでやってくださっていると聞いているので、それを信じてお任せしちゃっています。

――こういった細かく工程が刻まれたクリエイトについてどう思いますか。

【nifuni先生】 1つの工程にだけ集中できる制作スタイルは、特に長く続けていくには、いいかもしれないですよね。やっぱり1人で1つの作品を、しかも連載作品としてやっていくとなると、ものすごく気力も体力もいるので。

──負担が大きいですよね。

【nifuni先生】 はい。本作のように、チームでやっていくことで得意分野を生かしながら、体力的にもちょっとゆとりを持てる。それが、マンガ家としての新しい働き方になるのは、すごくいいかもしれないと感じました。

■「描くのはマンガ家じゃなくてもいい?」、国産webtoonのこれからの可能性とは?

――1つの作品を大勢が分担すると制作のスピードも上がり、作品数が増えるのではないかと。そうすると、ヒット作が生まれやすい状態になるようにも思います。

【nifuni先生】 私はまだわからない部分も多いですが。webtoonの未来を想像したときに、「量産した中からヒットを生む」ことが良しとされる世界になることも考えられますよね。でも、そうすると描くのはマンガ家じゃなくてもいいのではないか…みたいなことにもなりそうな気はしています。

――なるほど。確かに。

【nifuni先生】 今、AIの技術も進んでいるじゃないですか。例えば、スピード重視でAIなどを活用して効率的に量産するスタイルと、リッチなものを作るためにも人材もコストも惜しまず、じっくりと作り上げるスタイルの2極化する世界になっていくかもしれません。でも、マンガ家は“生”で関わり、AIやシステムはうまく活用することで、すべてにおいて“オールスター”のチームができる可能性もありますよね。

――ちょうどアニメ制作会社のような…。

【nifuni先生】 そうです。アニメ制作会社が素晴らしいスタッフや制作陣、声優さんを呼んで、素敵なコンテンツを仕上げていく。それに近いようなことがマンガでもできるのではないか。そういう世界があってもいいのかなと勝手に想像したりはするんですけど、答えは今のところわからないです。それぞれ向き不向きがあると思うので、webtoonのシステムのように補い合う形になっていったら、さまざまな選択肢が増えるようには思います。

――そういう意味でもwebtoonは注目ですが、今後国産webtoonはもっと増えていくと思いますか?

【nifuni先生】 正直、読者さんは韓国の作品だ、日本の作品だ…など、そこまで意識していないのではないかと思っています。個人的にはフラットに考えて、単純に面白い、新しい…と楽しんでいるように感じています。なので、私もあまり気構えず、「こんな面白い表現方法があるんだ」という発見をしていけてたらいいな、と思っています。

取材・文/衣輪晋一

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