写真はイメージ 日系航空会社CAから六本木のクラブママを経て作家となった蒼井凜花が、実際に体験した、または見聞きしたエピソードをご紹介。今回は、近年増加傾向にある「デートDV」についてお届けする。
◆優しかった彼が「デートDV男」に…
取材に応じてくれたのは、高橋弥生さん(25歳・ネイリスト)。彼女には知人の紹介を通じて知り合った同い年の恋人・健二さんがいた。付き合い当初こそ優しかった彼だが、徐々に「デートDV男」へと変わっていった。
「異変を感じたのは、付き合い始めて2ヶ月を過ぎたあたりからでした。彼から私に対する“禁止事項”が徐々に増えていったんです。まず、男性がいる呑み会や食事会への参加はNG。無断でスマホを見られて、男性のアドレスを勝手に削除されたこともありました。異性関係以外でも厳しく、ある日電車で痴漢に遭ったことを告げると『お前に隙があったんだ』とビンタされたことなんかもありまして……。彼の行動が日に日にエスカレートしていったのです」
弥生さんは次第に精神を病み始めたという。早急に別れることはできなかったのかと聞くと、彼女はうんざりした表情で続けた。
「一度、彼が運転する車の中で別れを切り出しました。私が働くネイルサロンから自宅に送ってくれる走行中でした。運転中なら感情的にならず話を聞いてくれると思ったのですが……。これが完全に逆効果になってしまったんです」
なんと彼は「別れるなら車から降ろさない!」と激怒し、弥生さんの自宅とは全く違う方面に車を走らせ、スピードを上げたのだ。「怖い!やめて!」と叫ぶ彼女に対し、「別れるならこのまま電柱にぶつかってお前と一緒に死ぬ」と言い、さらにスピードを上げたという。
結局、恐怖を感じた弥生さんが折れ、交際は継続することとなった。
◆その後も心身は疲弊するばかり
しかし、その後も健二さんの顔色をうかがいながらの生活に、彼女の心身は疲弊するばかり。知人に相談すると、「これは立派なデートDVだ」と教えてくれたそうだ。
これにより弥生さんは初めて「デートDV」なる言葉を知ることとなる。直接的な暴力はもちろん、精神的に苦しめ、自由を奪う行為も「デートDV」に含まれるという。
「最終的には、知人や両親など第三者に入ってもらって、何とか別れることができたんですが、現在も居住地や職場などを知られているため、引っ越しや転職も考えています……」
◆かつても経験…「束縛男」の歪んだ愛に苦しんだ日々
かくいう筆者も、元交際相手からデートDVを受けた一人である。元交際相手は男女問わず慕われ、リーダー的な男性だったが、こと恋愛になると「束縛男・デートDV男」に豹変した。
彼からの禁止事項の一例として、以下の3つが挙げられる。
・彼といる時以外のミニスカートの着用禁止。
・男性が参加する呑み会・食事会・サークルの参加は禁止。
・病気のお見舞いであっても、男性なら禁止。
当時は「愛されている証拠」と無理やり自分に言い聞かせていたが、今思うと、かなり窮屈な日々を送っていた。
極めつけは、「万が一、他の男に暴行されそうになったら、舌を噛み切って死んでくれ。そのほうが俺は救われる」と言われたことだ。
これにはさすがに腹を立て、別れを切り出したが「絶対に別れない」と応じてくれなかった。
結局、弥生さん同様、共通の知人に間に入ってもらうことで別れることができたが、歪んだ愛を押しつけられていたと気づくまで、相当な時間を要した。
今思うと、彼は「恋愛では精神的に未熟」だったと分析する。だからこそ、自分以外の異性との接触を禁じ、目の届く範囲内で「籠の鳥」状態にしたのだろう。
◆デートDV男から別れる方法は…
このように「デートDV」で悩む読者は多いと推察する。
男女問わず交際相手に違和感を覚えたら、やんわりと「NO」を伝えるのはもちろん、それでも窮屈な思いをするようなら、第三者に入ってもらい解決策を見いだすべきだ。
心身を病んでまで交際することはない。筆者自身が苦い体験をしたからこそ、別れる勇気を持ってほしいと切に願っている。
文/蒼井凜花
【蒼井凜花】
元CAの作家。日系CA、オスカープロモーション所属のモデル、六本木のクラブママを経て、2010年に作家デビュー。TVやラジオ、YouTubeでも活動中。