【ワシントン時事】トランプ米大統領が、合成麻薬の米国流入への対抗策として打ち出したカナダ、メキシコからの輸入品に対する25%関税を巡り、発動回避に向けた両国と米政権の協議が終盤を迎えている。メキシコは今週、米国が求める麻薬カルテルの受刑者ら29人の引き渡しを実施。訪米したデラフエンテ外相らがルビオ米国務長官らと会談し、メキシコの取り組みに理解を求めた。
一方のカナダは、合成麻薬の摘発実績や国境警備の強化などの成果を強調する。トランプ氏は、予定通り4日に発動する構えを崩しておらず、ぎりぎりの交渉が続いている。
メキシコは、米国の麻薬対策の要求に対し、最大限譲歩する姿勢を示す。2月27日に実施した受刑者らの米国への引き渡しは「ここ数年で最大」(米メディア)という。
そのうちの1人、麻薬カルテルトップのラファエル・カロ・キンテロ受刑者は、1985年に米麻薬取締局(DEA)捜査官らの殺害に関与したとして服役。米国は「最も凶悪な麻薬カルテルのボス」(ホワイトハウス)として、引き渡しを求めていた。
米国務省は同28日、閣僚会談を受け、メキシコによる国境対策の強化や合成麻薬の取り締まり、受刑者らの引き渡しに「感謝の意」を表明。両国がさらに協力することで合意した。
メキシコは、中国からの輸入品に米国と同様の高関税を課す案も提示。中国が米国の制裁関税逃れに、メキシコを利用しているとの懸念に対応するためで、米側は「非常に興味深い提案だ」(ベッセント財務長官)と歓迎した。
米メディアによると、カナダのマクギンティ公共安全相は今週、4日間にわたってノーム米国土安全保障長官らと国境警備を巡って協議。終了後には「警備への投資や改善などに取り組んだ。その結果を米側に伝えた」と説明した。
カナダのトルドー首相は、関税発動の回避を訴えつつ報復も示唆。カナダメディアによると、同国内では米国への反発も強まっており、「貿易戦争」の懸念はくすぶっている。