カカオ高騰の救世主!?スーパーフードの「キャロブ」が代替チョコレートになるかも

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2025年03月03日 18:00  クックパッドニュース

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【あの食トレンドを深掘り!Vol.61】日々生まれている食のトレンド。なぜブームになったのか、その理由を考えたことはありますか? 作家・生活史研究家の阿古真理さんに、その裏側を独自の視点で語っていただきました。

カカオ豆の高騰で、代替チョコが話題に

カカオ豆の品不足で割高になったにも関わらず、今年も各百貨店のバレンタイン向けチョコレート売り場は大混雑だった。新宿、銀座の数店を回ったところ、以前から高かったブランド粒チョコの価格はさらに上がり、1粒400〜600円台のモノが目立った。また、例年よりクッキーやケーキなどの焼き菓子も目立つ。帝国データバンクによると、全国の大手百貨店やホテル、ショッピングモールなどで売るバレンタイン向け150ブランドの1粒あたりの平均価格は今年、税込み418円で、1年前から23円、5.8パーセントも値上がりしていた。そして国内外合わせて全体の6割、90ブランドで価格が去年より上昇している。高いわけだ。

チョコの価格高騰の原因は、カカオ豆の主要産地である西アフリカを襲った天候不順。そしてすでに、世界各国でカカオ豆以外から作る代替チョコの開発は始まっている。今回の記事では、そうした代替チョコに焦点を当ててみたい。

業務用チョコレートや植物油脂といった食品の中間素材メーカー大手の不二製油は、パーム油を原料とした業務用チョコを製造している。また、ビール粕やおから、ソラマメなどを使う企業もある。そんな中、主に海外で注目を浴びているのが、マメ科植物のキャロブだ。

『TBSラジオ』が2024年12月9日に配信した「ゴボウがチョコの救世主に?カカオ代替素材の探求が進む」によれば、キャロブは高さ12メートルほどの木に生るサヤエンドウに似たマメ科植物で、日本語で「いなご豆」。『料理通信』2024年6月17日配信記事「代用品を超えた?マメ科植物キャロブで作るチョコでカカオ危機を乗り越える!」によれば、この豆の代用品としての質はとても高く、ネスレなどの世界的企業やショコラティエからもお墨付きを得ている。イタリアのスタートアップ企業「フォーエバーランド」が販売するキャロブを使ったチョコ「フリーカオ」は、「ミルクチョコレートのような優しい味だが、砂糖が少ない自然な甘味のせいか、チョコレートよりも食後感がとても軽い印象」だそうだ。

『料理通信』によると、キャロブは昔から南イタリアで大量に生産され、代替チョコとしても長い歴史を持つ。しかしこれまでは、種をローカストビーンガム(食品添加物の増粘剤やゲル化剤)として使うことが主流で、果実の9割は廃棄されてきた。

キャロブの果実には自然な甘味があるため、砂糖を25〜50パーセントも減らせ、食物繊維やビタミン、ミネラル、ポリフェノールなどが豊富なスーパーフードでもある。そして、栽培植物としては干ばつに強く、灌漑も不要という魅力を持つ。カカオ豆に比べると、生産過程で排出されCO 2は8割、水は9割も削減できるそうだ。いいことずくめではないか。

メリットだらけのキャロブ。しかし…

しかし問題もある。『TBSラジオ』の記事によると、イタリア以外ではオーストラリア、スペイン、アメリカ、メキシコなどで生産する。温暖な地域で栽培ができる植物だが、日本ではほとんど栽培されていない。キャロブは栽培しても実をつけるまで12年、と相当長いこともネックになっている。昔からの言い回しでは、「桃栗3年、柿8年、柚子は大馬鹿18年」とされるが、柚子ほどでないにせよ、12年も待つのはコストがかかり過ぎる、と躊躇する生産者が多いと思われる。

『サステイナブル・ブランド・ジャパン』2022年8月9日配信記事「英スタートアップ、カカオを使わないチョコレートを開発 児童労働やCO2排出量の課題解決に挑む」によると、イギリスのスタートアップ企業「WNWN(ウィンウィン・フードラボ)」は、SDGs の観点から、チョコをカカオフリーにする材料を探し、キャロブに行き着いていた。

チョコをSDGsの視点で生産するメーカーは、増え続けている。私が見たバレンタイン用売り場のチョコでも、2〜3割程度は生産地を特定したチョコレートを売るブランドで、日本各地でビーン・トゥ・バーのチョコを扱う店・製造するブランドが、ここ10年でずいぶん増えた。明治のフェアトレード製品「明治ザ・カカオ」は、コンビニでも売られている。

チョコレートはそもそも、大航海時代にヨーロッパが世界中を巡って多くの国を滅ぼし、植民地化する過程でカカオを見つけ、搾取する構造の中で生まれ育った食品である。現在もなお、産地の搾取は続き、環境負荷も大きい。『サステイナブル・ブランド・ジャパン』の記事によると、カカオ豆の主産地であるガーナとコートジボワールは、数十年にわたって世界で最も森林破壊が進む国である。

キャロブはもしかすると、キヌア、アサイーなどに続くスーパーフードとしてさらに注目が高まり、キャロブ製チョコとカカオ製チョコが共存する時代が来るかもしれない。社会貢献だけでは動かない消費者も、おいしくてヘルシーとなれば手を伸ばすだろう。チョコが好きで「ないと困る」人は、日本だけでなく世界中にたくさんいるはずだ。この危機をチャンスに変えて、いろいろな人が助かり喜ぶフェアなチョコが増えていくとよいなと願っている。

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このニュースに関するつぶやき

  • そう言えばイタリア料理と言えばトマトだが、イタリア人はトマトを観賞用にして200年も食べずに放置してたくらいだから、キャロブってのも眠れる逸材かも。
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